壁を背にして、拳銃を両手で握りしめる軍服を纏ったの青年が硝煙と血の匂いが充満する部屋の様子を伺っている。
金に輝く長い髪を二つに分けて編み込んだ、青年がするには珍しい髪型。
左右異色の、やはり珍しい青と紫の瞳には焦りも孕んだ真剣な光が宿っている。
青年が探る気配を部屋には蠢く幾つかの人の体温。全て彼の敵だ。
青年は、エルシニル=ディアスという名を持った若い軍人は、静かに、長く、息を吐き出した。
拳銃を持つ手を上げて、額に軽くぶつける。その弾倉は空だ。
ありがとう、と声を出さずに呟き、青年は手をひと振り。
投げ出された拳銃は地面にぶつかる前に、いや、宙に放り出された瞬間に消滅した。
幾筋もの白い煙に分解されて、彼が思い浮かべて作り出した拳銃は消滅してしまった。
それを見届けもせず、青年はすぐに右腕を伸ばし、花の蕾が開く様にふわりと掌を広げる。
彼の頭には一本の長剣が描かれている。すらりと真っ直ぐに伸びた銀の刃、真紅の宝玉が中心で輝く簡素に模様が彫られた木製の柄。
何かのゲームに出てきそうな形状をした剣を。強く頭に思い描く青年の手。
そこに、煙に似た細い白が風を伴って集まり、するすると素早く絡み合っていく。
僅かに発生するその風に、前髪も、二本の三編みも、揺れ動く。
しゅるり、と、一分も経たずに白は剣にと変換された。
彼の頭に描かれたそのものが、そこに存在していた。
重さを手に入れたその幻の剣の柄を青年の手が強く握る。一度目を閉じ、どくどくと跳ねる心臓の音を聞く。焦るな、と休むことを知らない臓器に言い、ぱっと彼は異色の目を開ける。
今度は声を持って呟いた。


行くぜ、相棒。


20120805 勇者想像物語



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