吐き気がする。先程とは比べ物にならないほどに。胃の中のものを全て吐いてエタノールでも飲んでしまいたい、なんて考えは半ば本気だ。喉の奥の不快感。張り付いたまま取れない。

どろり。

額を、頬を、生暖かくて酷い臭いのするものが伝う感覚。おぞましいそれを思わず腕で拭き取ろうとして、鎖の音に阻まれた。手首に嵌められた枷。抵抗するうちに金に傷付けられた手首はずきずきと痛んだ。唇を噛んで、身体に目をやる。酷く乱された制服。上着は半端に脱がされて両腕で留まり、新たな拘束具となって自由を奪ってくる。ブラウスのボタンは外されたものと千切れたものと。抜き取られた紺のネクタイがボタンの一つの傍でくたりと足元に落ちているのが見えた。けたけた。下卑た笑い声。はっと、何処か呆然としていた意識を戻したときにはもう遅い。汚い指が青灰の前髪を掴み取ってぐいと引っ張ってきた。肌の剥がれそうなその痛みをもう一度唇を噛んで声を抑え、目の前の人間を睨み付ける。けたけた。下卑た笑い声。

綺麗な顔がそれだけ汚れてもまだそんな顔をするかい。

一瞬毛髪へ加えられる力が緩み、また強い力が髪を掴んで身体を引き倒した。石の床に受け身も取れもせずに叩き付けられて一瞬呼吸が飛ぶ。下になった左肩が痛む。は、と息を吐いて。また汚ならしい人間達を睨み付けた。彼らは笑った。さて、まだ遊ぼうか。


20120611 消毒剤の底辺



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