何年も人の立ち入っていないのだろう、薄らと埃の積もった廃墟の一室の石床に身体が投げ出される。背中を突き飛ばされたのだ。軽く痛む身体を起こし、顔を上げればにやついた汚ならしい視線が頭上から降り注いでくる。赤い腕章を付けた人間たちの視線。青い軍服を身に纏った自分がマフィアである彼等にどう思われているかなど、考えるまでもない。後ろ手にされた両手首の冷たい金属の感触が酷く不快だ。本来なら目の前の人間に掛けるべき自身の手錠で拘束されるなど屈辱以外の何者でもない。ぎり、と唇を噛んだ。

けたけたと下卑た笑み。

にたにたした笑みを乗せた穢らわしい舌が、此方を見ながら下衆な言葉を落とすのを聞いた。一瞬信じられないようなその言葉を頭で処理してから、酔狂なことだ、と、随分冷静に呟く自分がいる。顔は確かに女性的かも知れないが、それだけでそんなことを考えれるものか。やはりけたけたと笑いながら一本の腕が此方へ。続いて、二本、三本、四本、五本?どれもがどれも汚ならしい五本の指がついている。冷たい床に押さえ付けられて、軍服を剥ぐその指に全身を這い回られた。下卑た笑い、けたけた。吐き気がする。


20120611 腐敗する建造物



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -