五条さんが雨の日にお迎えに来てくれる話(大人五×後輩術師)

 出張の任務が終わって高専の最寄り駅に降り立つ。二泊三日の小旅行、もとい任務はそれなりにハードなものだった。まあその割には早めに片付けることが出来たので観光をして帰って来た訳なのだが。
 片手にスーツケース、その上にお土産の袋という荷物を持ちながら、ゴロゴロという音と共に駅構内を歩く。
 予定よりお土産の量が多くなってしまったのは、超絶甘党の最強様が色々と注文をつけてくれたからに他ならない。
 おかげさまでスーツケースの空きスペースまでぎっちりお菓子が詰まっている。私が買う量より頼みやがって。早く引き取らせて中身を軽くしたい。

 そんなことを思いつつ駅の出口まで向かうと、外は雨が降っていた。
 嘘でしょ。傘持ってないんだけど。
 高専までの道はバスが通っている訳じゃないから、必然的にタクシー一択となる。それに高専の入り口に着いたってその先には長い長い階段が待っているのだ。傘を持っていないとせっかくのお土産が台無しになってしまうことが容易に予想できる。
 色々考えつつとりあえずビニール傘を買おうと少し濡れることを覚悟でコンビニへ向かおうとした時、私の左肩が叩かれた。
 なんだろうと振り返ってみると、頬にはぷにっと柔らかい感触。
「ひっかかった〜!お前ってほんと単純だよね」
「ご、五条さん!何してるんですか!」
「何って、お迎え?」
 一本の傘を揺らして見せる五条さんは、普段のアイマスクに黒い上下ではなくサングラスにTシャツ、ジーンズというラフな格好だ。
 憎たらしいほどに素材がいいから、シンプルな服で十分イケメンオーラが漏れ出ている。現に駅に出入りする女性たちの視線が五条さんに向いている。
「今日はお休みなんですか?」
「お前が帰って来るのが待ちきれなくて半休取っちゃった早く帰ろ?」
「私高専行かなきゃいけないんですけど」
「報告書は明日でいいって伊地知が言ってたよ」
 そう言われてスマホを見てみれば、伊地知さんから『報告書は明日で大丈夫なので、今日はゆっくり休んでくださいね』というメッセージ。
 これ絶対五条さんが脅したんだろうなぁと思いつつも、正直高専に寄るには疲れていたのでありがたい。伊地知さんには明日お土産持って行こう。ウン。
「……じゃあ帰りましょうか。今日も飛ぶんですか?」
「ううん、今日は車」
「車?五条さん車運転できたんですか?」
「あれ言ってなかったっけ。ほら僕って色々見え過ぎちゃうでしょ?普段出かける時も車の方が楽なんだよね」
 ああ、たしかに。五条さんの目だと人が多いところは疲れちゃうだろうな。電車とかバスとかあんまり似合わないっていうのもあるけど。
「じゃあそういうことで、駐車場までレッツゴー!」
 そう言うなり五条さんは私の手にあった荷物を持つと、一本の傘片手に歩き出す。
「五条さん、私の分の傘はありますか?」
「ん?そんなのないよ?だから相合い傘して駐車場まで行こうね
 僕一回やってみたかったんだよね〜なんてにこりと笑うその顔はとても嬉しそうだ。
 この歳になって相合い傘をするなんて恥ずかしいけど、五条さんが楽しそうならまあいいか、なんて思う自分がいる。結局私は五条さんに甘いのだ。

 駐車場に着くと五条さんは助手席のドアを開けてくれた。紳士のような対応に少しどきりとしたのは秘密だ。また色々揶揄われてしまいそうだから。
 トランクに私の荷物を積んだ五条さんが運転席に座る。その横顔だけでも絵になるなんて、さすがとしか言いようがない。ずっと見つめているわけにもいかないので顔をフロントガラスの方へと戻した。
「ねえ、ちょっとこっち向いて」
「どうしたんッ……!」
 振り向いた瞬間、唇を奪われる。
 久しぶりの口付けは徐々に深くなっていき、私たちの境界をなくしていく。
 やっと五条さんが離れていったかと思えば、私の息は絶え絶えになっていた。
「い、いきなり何するんですか……!車内ですよ
「お前が足りなくて我慢できなくなっちゃった。ごめんね?」
「そ、そんな可愛い顔してもダメですからね
「この顔が好きな癖に。ていうかさっきも僕に見惚れてたでしょ」
 にやりと笑った五条さんに反論出来ない。だって好きなんだもの。照れ隠しにふい、とそっぽを向く。
「しょうがないじゃないですか……」
「……あー僕の彼女が可愛い。可愛いすぎてつらい」
「五条さん、言い過ぎです」
「いーや、そんなことないね。ちょっと飛ばして帰ろうか。僕の理性が保ちそうにない」
 そう言った五条さんが荒めに車を発進させる。この後のことが怖くなった。この言い方は割とガチなやつだ。でもちょっぴり期待する私もいて。
 五条さんの家に着くのを待ち遠しく思いながら、外の景色を眺めていた。



[目次へ]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -