七海先輩とパフェ(呪専七×後輩)
七海先輩と任務をこなした後の車内。その空気はどんよりとしたものだった。なぜかといえば、任務の内容があまりにも悲惨なものだったからである。
呪術師なんだからこんなことは当たり前なのかもしれない。でも、私は高専に入学したての1年生。ここまでの任務は今回が初めてだった。七海先輩はたぶんもう慣れている。だってもう普通の態度に戻っているから。
対して私はそう簡単には割り切れなくて、ずっと沈んだまま。でもそろそろ先輩に呆れられてしまわないか、迷惑だと思われてしまわないかと不安になる。
「すません、ここで止めていただけますか」
「いいんですか」
「はい、お願いします」
七海先輩が補助監督さんにお願いして車を停めてもらった。こんなどんよりした私と一緒に居たくないってことだろう。さらに気持ちが落ちていきそうになる。
「先輩、おつかれさまでした……」
「何を言っているんですか。貴方も降りるんですよ」
「え、ちょ」
「ではありがとうございました」
「はい、お気をつけて」
そんなやり取りを補助監督さんと交わし、先輩は私の手を引いて車を降りた。
「ここのパフェは絶品なんです。どうですか」
「美味しいです。ですけど、なんでここに連れて来てくれたんですか?」
七海先輩が連れて来てくれたのは静かなカフェだった。私の希望も聞かずに自分のコーヒーと私のミルクティー、それにパフェを注文した先輩はずっと黙っていた。
そしてパフェが来た今、初めて先輩は口を開いてくれたのだ。
「貴方が……落ち込んでいたようでしたので」
「…………空気悪かったですよね、すみません」
「誰でも最初はあんなものです。私は気にしていませんし、貴方もそういった思いは吐き出してしまった方が楽ですよ。今も、これからも」
「そう、ですね」
先輩は励ましてくれようとしたんだ。きっと。
でもまだ気持ちは晴れなくて、先輩の顔を見ていられずに俯いた。
「しかし、そんなことは無理でしょう。特に、貴方には。貴方はいつも頑張りすぎる嫌いがありますから」
「そ、れは……」
「だから今くらい、気を緩めても良いのでは?ついでに言うと、ここは窓の方が経営されているカフェなので、事情も察してくれるかと思いますよ」
先輩が駄目押しの情報を口にした時、私の目からは涙が溢れ出していた。どうして、なんで、意味も為さない言葉たちが口をついて出る。
しゃくり上げている私は、自分でも何を話しているかわからない。そんな私だったけど、七海先輩はゆったりと相槌を打ちながらずっと話を聞いてくれる。
全て終わってから食べたパフェは少ししょっぱくて、でも今まで食べた中で一番優しい味がした。
[目次へ]
[しおりを挟む]