うたプリ | ナノ



※描写は少ないですが性行為をしています。ご注意を。













息ができない程に激しくキスをして欲しい。血を流す程に強く噛み付いて欲しい。何も考えられない程に、抱いて欲しい。


イッチーが腰を突き動かす度に感じる快楽は、そんな自殺的な願望とは裏腹に、熱くて蕩けるくらいに甘美だ。キスを求めて唇に縋れば、イッチーは望み通りの激しいそれをくれる。本能的に求めてしまう酸素を与える隙間も無いくらいに、激しいキスを。セックスの快楽に溺れながら死ねるならば本望。なのにイッチーはいつも、とどめを差してはくれない。どうしてと以前戯れに一度聞いたことがあるが、あなたの為に殺人犯などに成り下がれませんよと返され、あっさり納得してしまった。じゃあ合意上の殺人が合法になれば殺してくれるのかい?冗談半分にそう問うと、彼は黙ってしまったけれど。

汚れてもなお白いシーツを握り締めながら、女のように抱かれ乱れる。軋むベッドの音が何故だかいやに耳について煩わしい。もう幾度と無く繰り返してきた行為は、それでも飽くことはなく、むしろ回数を重ねる度に強く求めてしまうのだ。まるで麻薬か何かのように。


一人で居る夜が怖い。孤独を埋める何かが欲しい。そんな少女のようなことを考え始めたのはいつからだっただろうか。

それでも今までは女性を抱くことで満たされてきた。女の子というのは良いものだ。実に可愛らしい。快楽に素直で、とても扱いやすい。


毎晩のように違う女の子たちを愛でていた。そんな俺を、彼…一ノ瀬トキヤは見兼ねたらしい。

──愛するばかりではいつまで経っても満たされない。それじゃきりが無いでしょう。あなたは一度愛されるべきだ。
そんなことを言って、彼はその晩俺を抱いた。



「ん…はあっ……あ…」
「はっ………レ、ン……」


生理的な涙が滲む。そのせいで歪んだ視界の先のイッチーは、何だか切ない表情をしているように見えた気がした。…そんなはずは無いけれど。力任せに腕を押さえつけて、乱暴に手酷く抱く。そんな愛の無い性行為の中に、切ないだとかいう感情などはあるはずがないのだ。


(…そう、少なくともイッチーはそんな感情を持ってやしない。そんな恋愛めいた感情を、俺に、抱いてるはずがない)


だったら自分はというと、これは分からないのだ。彼とこうして会うことができない日には、信じられないほどの虚無感が襲ってくることがある。どうやっても満たされない。女の子を抱こうとしても、無理だった。心に穴が空いて、すきま風が吹き付けているようだった。

自分が彼に抱くこの感情が恋愛感情でなくとも、万が一そうであったとしても、とにかくもう俺は彼なしじゃ生きていけない。弱い俺は彼に依存して生きている。この心地よい関係から抜け出して自立する努力をする強さを、俺は持っていない。


「……トキヤ…」
「…何ですか」
「うっ…ん、キス、して…」
「……」


そうしてまた彼は噛み付くように乱暴なキスをしてくれる。ああこの何とも不可解でおかしなカンケイが、どうしようもなく心地よくて仕方がないのだ。










─────








抱くなら、手酷く抱いてほしい。

初めてレンを抱く前に言われたことだ。それを聞いて少々戸惑ってしまった。…自分は、彼を思い切り甘やかしたいと思っていたから。

誰よりも優しく、誰よりも貴方が大切だと、分からせたかった。彼が女性を抱く代わりに、私が彼を愛すると。

だけど彼はそれを望んでいなかったようだ。彼が今まで特定の女性と繋がらなかったのは、愛されたくても愛されなかったわけではなくて、ただ彼自身が愛されたくなかったのだと知った。それは恐らく彼の過去と家庭の事情が関係しているのだろう。

しかし、自分には彼は誰かに愛されたくて仕方がないように見える。これはきっと間違いじゃない。結局のところ彼は、本当は愛されたいけれど、それは怖いから愛されたくないと思っているだけなのだ。


「あっ…はあ…っ…ん…」


レンがキスを求めて唇を寄せる。だけど彼は優しくキスをされることは望んでいない。だから乱暴に、そして愛を込めて口付ける。ぞくぞくと背筋を走る快感。ああ…


(たまらない…)


彼が他でもない、私を求めている。そのことが酷く気持ち良い。彼をこんなにも愛することを許されたのは私だけだ。だから私は彼が望む通りに、乱暴なキスで、痛め付けるようなセックスで、私だけの愛を彼に与える。



──そうすれば彼は、もう私がいなければ生きていけない。

レンは私とのこの行為に依存している。そしてその事を後ろめたく思っているだろう。だけどこうして愛される快感を覚えてしまった貴方は、私から抜け出せない。抜け出させなどしない。


「ん…はあっ……あ…」
「はっ………レ、ン……」


(いつか貴方に、愛してると伝えるのを許されるまで)


私は貴方を決して離さない。

だって、貴方無しで生きられないのは──私の方なのだから。













────
初トキレン!トキレン大好きです^^
そして相互依存も大好物です。
とりあえず非常に分かりにくいブツになってしまいました。





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