夢の中で、いつも会う人がいる。ふわふわとして不確かで、だけどとても幸せな、そんな夢。そして僕は決まって彼にこう言うのだ。
「僕ね、アイアイが好きだよ」
何も考えないで素直にそう言えるんだ。すると彼も幸せそうに微笑んで、こう言う。
「ボクもだよ、レイジ」
そうして誰よりも幸せな恋人になった僕らは、夢の中の空間をいつまでも一緒に居るの。
「………はあ」
だけどそれはあくまでも夢で、覚めてしまえば全ておしまい。幸せな甘い甘い時間は終わる。現実では堂々と恋人にはなれないし、簡単に思いを告げることなどできないし、そもそもアイアイは僕を好きじゃない。
現実は残酷だ。でも仕方ない。
「何じろじろ見てんの、レイジ」
「いやー、何でもー」
アイアイが好き、だなんてそんなの恥ずかしくて申し訳なくて言えるはずがない。でも好き。こんな10個も下の子に惹かれてるなんて悔しいよ。だけど仕方ないよね。
アイアイの髪は透き通るような綺麗な色で、肌は作り物みたいに白い。瞳はまるで引力を持っているみたいに不思議と引き込まれる。年齢の割に自分よりも高い背丈とか、すらっと伸びた細い手足、なのに意外とある力とも、全部。
彼を構成する全てが、きらきらと輝いて見える。ホント綺麗。それはきっと片思いの欲目を抜きにしてもそうだ。
だからますます言えない。同じアイドルでも僕とは全然タイプが違うし、僕じゃアイアイに釣り合わない。そう思ってしまう。
だから夢の中で告白できるだけでいい。それでいいんだ。
そう、思ってたのに。
「レイジ」
「アイアイ」
おぼつかない景色の中、僕たちはぎゅっと抱き合ってお互いの名前を呼んだ。ここはいつもの、幸せな空間。
「アイアイ、僕ね」
いつものように、好きと言おうとしたのに。気付いたら腕の中に彼はいなかった。
「アイアイ…?」
周りは靄がかかったみたいにぼんやりとしている。やだ、いつもは言わせてくれたのに、どうして、そんな。
「アイアイ、どこ?」
悲しくて、怖くて、不安で、必死に彼を探すけど見つからない。もうここでも会えないの?
「レイジ」
そんなとき、いつもの彼の声がした。
「アイアイ?」
「レイジ、……レイジ」
何度も僕を呼ぶ声。大好きなあの声。するといつの間にかアイアイの姿は目の前にあって、僕は思わず抱きついた。
「…レイジ…?」
「アイアイ、好きだよ。大好き」
ああやっと言えた。よかった。嬉しい。だけどおかしいな。いつもの返事がない。
「レイジ…」
「好きって、言って?」
「…っ…」
アイアイは照れたような驚いたような顔をして、それから僕を抱きしめかえしてくれた。そして、
「…ボクも。好きだよ、レイジ」
そう言ってくれた。それは何故だか、今までのどんな言葉よりも甘く響いた気がした。
「ん…アイアイ…」
「レイジ…」
目が覚めると、なんだかあったかくて。ああ、幸せな夢を見ていたなあなんて考えてたら、アイアイの声がして。あれ?まだ夢?なんて思ったけど、違う。これは現実だ。はっきり分かる。
「………」
「え…、あ、アイアイ…?」
でも、現実ならどうして、僕とアイアイが抱き合ってるの?
「あっ、ああああの、アイアイ!?ごっごめ…」
慌てて腕を離すとアイアイの腕も離れて、向き合う形になる。アイアイは何というか、照れたようなよくわからない微妙な表情をしている。非常に気まずい。
えっと、僕は事務所の一室に居て、イスに座ってて、台本読んでたらいつの間にか居眠りしちゃってたみたいで、それで夢を……って、え?
「もしかして…言っちゃったの…?」
「………」
さっき僕が好きって言ったのは、夢の中じゃなくて、現実のアイアイ?
目の前の、紛れもなく本物のアイアイは僕の言葉を肯定するかのように沈黙している。
さあっと一瞬血の気が引いて、すぐに顔に熱が集まるのが分かった。
「───っアイアイ!あの、ちが、僕っ夢を…」
「どんな夢を見てたら、ボクに告白することになるわけ?」
「うぇっ、それは…その…」
「もう取り消せないからね」
「………え?」
アイアイの言った言葉の意味がよく分からないまま呆然としていると、またアイアイから抱きしめられた。あったかい。夢じゃない。
「えっ、あ、あの…」
「言ったでしょ、ボクも好きだって」
「そ、それは…」
「レイジが言えって言ったからじゃない」
本心だよ。ボクはレイジが好き。
──僕は今、告白されているの?あれほどまでに夢見た告白を、アイアイに?
「うそ…」
「嘘じゃない」
「え、だって、ホントに?」
「好きじゃなきゃこんなことしない」
「でもっ…!僕じゃアイアイに」
「釣り合わないなんて馬鹿げたこと言わないでね?」
「…っ!」
だって信じられない。アイアイが人を好きになることも想像できないのに、その相手が男で、そのうえ自分だなんて。
「大好きだよ」
「あっ、アイアイ…!」
「レイジは?」
「え…」
「……好きって言ってくれないの?」
僕を抱き締めたまま、アイアイが普段は決して出さないような甘えた声でそんなことを言うから、もうこれが夢でもいいやなんて思ってしまう。
だけど、頬に添えられた手からいつもより少し高い温度が伝わってきたから、ああ夢じゃないんだと感じて、胸の奥から幸福感が込み上がってきた。
ああどうしよう嬉しい。好き。大好き。
「っ……ぼ、僕も!アイアイが好き!」
夢の中の幸せ
君は現実のものにしてくれた
───
よくわからない文になってしまいました(´・ω・`)
でも藍嶺とても好きです。15才178p×25才173pとか…かわいすぎて…!
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