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「半兵衛!」
「………」
「はーんーべーってば!」


季節は春。桜が咲き誇る中、俺たちは無事二年に進級し、晴れて同じクラスにもなれた。
──そんな始業式から一週間がたった現在放課後。今朝まではいつも通りだった半兵衛が、何故だか今すごく機嫌が悪い、みたいだ。というわけで廊下で絶賛鬼ごっこ中である。


「待ってって半兵衛!俺何かした?」
「………」


するとぴたり。早足だった半兵衛の動きが止まった、かと思えば勢いよくこちらに振り返り、じとりとこちらを睨めつけてくる。一瞬怯んだが、何も言えず返事を待った。


「…自分で考えれば?」
「え…っ」


日頃からよく口喧嘩はするが、今回のことは自分で考えても原因が分からない。本当に思い当たることがないのだ。半兵衛が怒るような事と言ったら…例えば勝手に人の物を使ったりだとか、約束破ったりだとかそういう事だけれど、今日はそういった事は何もしていないし、特別気に障ることも言っていないと思う。珍しく口論にもならなかったし…


(……って、あれ?)


喧嘩どころか、口論すらしてない…?言っておくが、自分と目の前にいる竹中半兵衛との相性は相当悪い。それで何故付き合っているかは置いておいて、なかなか気は合わないし、意見の食い違いからムキになり口論にまで発展することは、今となっては日常茶飯事だ。…というか、


(毎日してる…?)


そう。ほとんど毎日と言っていい程いつも言い争っている。なのにそれが今日は無かった。それは何故か?…そうだ、今日は半兵衛とあまり話さなかったような気がする。では、それはどうしてか…


「……長曾我部くんのところにでも行ったら良いじゃない…」


ぽつり、消え入ってしまいそうな声で半兵衛が呟いた。先程の強気な態度とは一変、拗ねたような顔をして俯いている。


(そっか…!)


長曾我部くん、とは慶次や半兵衛のクラスメイトである長曾我部元親のことだ。慶次は数日前に初めて話したのだが、これが妙に気が合うのである。何やら元親の方も付き合っている人がいるようで、慶次と半兵衛同様、あまり仲睦まじいと呼べる状態ではないらしい。そこで慶次と意気投合し、ここ数日、恋愛相談も兼ねてつい話し込んでしまっていたのだ。


(もしかして…半兵衛それで、)


「……妬いてたのか?」
「!」


恐る恐る推測を口にすると、成る程。ビンゴのようだ。半兵衛は途端に顔を上げ何か言おうとするが口ごもる。頬は気のせいか赤い。


「あ…えっと…」


正直に言うと俺は今びっくりしている。もう何年も半兵衛と一緒にいるけれど、こんな表情を見たのは初めてだ。顔はやっぱり気のせいではなく赤くて、明らかに動揺が表に出ている。歯切れも悪い。…何だか…


「……ははっ! 半兵衛可愛い!」
「なっ…何それ!失礼だよ!」




悩める放課後
喧嘩も仲直りも日常茶飯事



――――
書き上がってたのにアップしてなかった第二弾。
こちらも短いですが、嫉妬半べ良いですよね!そしてやっぱり学パロ。





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