大坂城 中庭
つい先日まで暖かかった日々が過ぎ、ここ大阪は、雪が積もるという本格的な冬へと突入していた。その寒空の下で、楽しそうに雪だるまを作っている青年がいた。彼の名は徳川家康。後に豊臣を倒し、天下二分の戦いの中心となる人物だ。
これはまだ彼が豊臣軍にいた頃の話である
「おい、何をしている」突然後ろから声をかけられ振り返ると、同じく豊臣軍に所属している同年の石田三成が立っていた。相変わらずわしに向ける目つきが怖い
「おお、三成!お前も来たのか!どうだ、わしと共に雪だるまを「誰が作るか!」
「んじゃ雪合戦を「人数が明らかに足りんだろ!どちらか当たれば終わりだ!」
「では人数が足りればやるのだな?」
「うっ、それは…」
内心めちゃくちゃやりたい三成。家康に対して素直じゃない所が可愛ぐはっ
「黙れナレーター…斬滅するぞ」
「何だか楽しそうだね。僕たちも混ぜてくれないか?」
声がした方を見ると、そこにはこの城の主であり、天下統一を成した男─豊臣秀吉と天才軍師と名高い智将─竹中半兵衛が薄ら笑いを浮かべながら来た。…何処が楽しそうに見えたのだろう
「で、雪合戦だって?たまにの息抜きにいいんじゃないかい?やろうよ三成くん」
「しかし、半兵衛はお体が…」
「僕ならだいじょ…ゲホッゲホッ」
何処をどう見て大丈夫と言おうとしたのだろうかと、そこへ
「大丈夫か半兵衛殿!やはり歳では…ゲフンゲフン」
そう家康がいった瞬間、周りの空気が変わった
「さぁ、さっさと始めて終わらせるよ!三成くん、秀吉」
「だが半兵衛、貴様は」
ここでやっと喋った秀吉。しかし…
「少し黙ってて秀吉…これは戦なんだよ、そうなんだよ」
「………」
家康の言葉が相当頭に来たらしい。フラフラしながらも立ち上がる半兵衛。オーラが三成以上にヤバい
それを予想していたのか何事もない様に家康が口を開いた
「では人数分けをするが、どうする?」
「僕は秀吉と一緒だよ。30cmでも離れたら死んじゃうからね」
「どんな病気なんですか半兵衛様…。私も秀吉様との方がいい。貴様となど御免だ」
「ならば我も三成の方よなぁ。我も20cmでも離れると発作を起こす故」
いきなり会話に入ってきた人物─大谷吉継はフヨフヨした神輿に乗りながら三成の方へ来た
「刑部…それが本当だったらもう死んでるぞ」
「ヒヒヒ、冗談よ冗談」
「では4対2になるのだな」
「4対2?貴様、ついに計算も出来なくなるほど馬鹿になったか」
「違うぞ三成、わしにはアレがいる」
やけにニヤニヤしている家康。と、そこで三成が気づく
「アレ?まさか…貴様!」
「もう遅い!こい、忠勝!!」
まるで悪役の台詞のように声高々と空に向けて叫ぶと、何処からともなく巨大物体…もとい本多忠勝が現れた。機会音がめちゃくちゃうるさい
「いぃぃえぇぇぇやぁぁぁすぅぅぅ!!耳が痛くなったじゃねぇかぁ!」
「あはは、すまんすまん。んでわしは忠勝と共にやる!」
「成る程、忠勝くんで戦力を補うのか…フフフ、残念だよ家康くん!こっちには…秀吉がいる!」
「え?ちょ、半兵衛?ナニイッチャッテンノ?我無理だから。普通に無理だから」
「何言ってんのさ秀吉!目には目を、忠勝くんには秀吉をだろ?」
「今考えたでしょそれ!」
「そうなのですか半兵衛様!素晴らしいです!」
もはや神以上に信仰しているとしか思えない目つきで見ている
「やれ、三成が変なことを覚えてしまった…」
「もう親の立場だね刑部」
「つーか我の話を聞けぇ!」
「うるさいな、早く行けよゴリラ。てめえの枕の中にバナナ突っ込んでやるぞ。どうせ小説ではここぐらいしか出番無いくせに」
「半兵衛殿、その辺にしておいてはくれぬか。使える物がもっと使えなくなる故」
「…ぐす、わかったよぉ!我がいけばいいんでしょ」
「話がまとまったようだな。では、いけ忠勝!三河の武士の力を見せてやれ」
そう家康が叫んだ瞬間、試合開始のゴングがなった…気がした
先手をとったのは本多だった。本多は先程家康が作っていた雪だるまを正しく殺人球の如く秀吉にぶつけた
「ぐへぁ」
嫌な悲鳴が響く。他の3人はというと「秀吉頑張って!」「いぃぃぃえぇぇぇやぁぁぁぁすぅぅぅぅ!!秀吉様に何て事をぉ!」「ほれ、耐えよ耐えよ」と秀吉の後ろに隠れながら応援していた
もう中庭には忠勝が雪を投げる時の「ウィーン」という音と秀吉の「ぐへぁ」という悲鳴と三成の「いぃぃぃえぇぇぇやぁぁぁぁすぅぅぅぅ!!」という声しか聞こえなくなっていた
─4時間後─
「Ya-ha!豊臣ぃ!天下は俺がと…なにしてんだお前ら」
「いぃぃぃえぇぇぇやぁぁぁぁすぅぅぅぅ!」
「みぃぃぃつぅぅぅなぁぁぁりぃぃぃ!」
「…小十郎」
「はっ」
「…帰るか」
――――
「PLANET」の十六夜さまより頂いちゃいました…!キリリクで頼んだ「家康配下時代の豊臣軍で雪合戦」です(^^
黒い半兵衛や不憫な秀吉に大爆笑でww十六夜さま、本当にありがとうございました!
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