「では、行ってきますね」
「行ってらっしゃーい」
バーボンが情報を仕入れに建物に入ったのを確認して、バーボンの車で寛いでいた私はガバッと身を起こした。鬼の居ぬ間になんとやら。この間に車中を調べて、バーボンの秘密を見つけてやるのだ。
ふふふ、ずっとこの時を待っていたのだよ…!高ぶるテンションを抑えきれずにそわそわしながら、車内を見回す。
先ずは王道にダッシュボード、と見せかけて、運転席のシートを…
「何をしているんですか?」
「ふぎゃ!」
後方から聞こえた声に、恐る恐る振り返る。彼にお尻を向けた状態の私は、なんとも情けない格好をしていることだろう。
「なんで…今確かに建物に入って…」
「ええ、直ぐに出て来ました。それで、あなたは何を?」
「だっだっ、だって」
バーボンの秘密を知って一泡吹かせてやりたかったし、あと、情報を得るコツを知れたら私一人で仕事出来るようになるし…!
「バーボンのこと、知りたかったんだもん」
「可愛く言っても無駄ですよ」
チッ、だめか。必殺の上目遣いは通用しなかった。
「まったく、いけない人だ。…そうだ、僕のことを知りたいなら、これからじっくり教えてあげましょうか」
「(あれ、なんか悪寒が)いや、ほら、仕事…」
「もう終わっていますよ。情報はあなたに会う前に仕入れています」
「なら何で私を呼んだの!?」
にこりと笑うバーボンを見て、漸く悟る。ああ、嵌められた…!こいつ全部計算ずくだ!
「さて、行きましょうか。夜はまだまだ長いですよ」
拒否権も逃げ場も、最初から私には用意なんてされていないのだと、甘い笑顔は言っている。
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