「安室さん、可愛い」
「有難うございます…?」
「うんっ」
首を傾げつつお礼を言う僕に、にこにこと嬉しそうに笑うなまえさんこそ、可愛いと思う。これが、いつもの僕達のやり取りだ。
「けど、いつも言っている様に、僕としては可愛いではなく、格好良いと言って欲しいのですが…」
「もーっ、そんなこと言う安室さんが可愛いっ」
そう言って無防備にぎゅっと抱き付いてきてくれるのは非常に嬉しいが、その言葉はあまり嬉しくない。
なまえさんは、いつだって僕を「可愛い」と形容する。コーヒーを淹れている姿も、僕が笑った時も、果ては歩いている姿まで。一応、僕は君の彼氏の筈なんだけどな。こうまで格好良いと言ってもらえないのは、流石に悔しい。
「僕は、格好良くは無いですか…?」
「格好良いけど、それより何より可愛いよ!」
「………」
一応言うには言ってくれたが、僕が求めているのはこれじゃない。
コナン君ですら、推理をしてみせると「コナン君かっこいー!」なんて言われているのに。僕が以前推理を披露したら、「顎に手をあてて考えている姿が可愛い」だの、「話し方が可愛い」だのと言われた。
仕方がない。こうなったら、力押しでいかせてもらおう。
抱き付いているなまえさんの腰を撫でる様に手を回すと、びくりと彼女の身体が跳ねた。そのまま離れようとする身体を押さえ付けて、空いている方の手で彼女の顎をくいっと持ち上げる。
「これでも、だめですか?」
「っ!」
頬を真っ赤に染め、眉をハの字に下げながら、瞳を潤ませるなまえさんの姿に、つい劣情が首をもたげる。にやりと口角が上がるのは、抑えられそうにない。するりと彼女の腰を一撫ですれば、「ひゃっ、」なんて可愛い声が漏れる。
「これでもまだ、可愛い、ですか?」
「う…」
さあ、言って。
その小さな唇から溢れ出る言葉を待っている。僕が待ちわびたその言葉を聞いたら直ぐに、その唇にキスを送る準備は万端だ。
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