「ぎゃあ!」
「大丈夫ですか!?」

カフェで買ったコーヒーを持ち歩いていたら、それが跳ねて、身体にかかってしまった。ああ、服も汚れちゃった…。
急いで拭かなきゃ、と、私が鞄に手を伸ばす前に、隣にいた安室さんがハンカチを差し出してくれた。流石、お早い。有能。
有難くハンカチを受け取って、濡れた場所を拭……く前に、私は、そのハンカチに触れた瞬間、衝撃が走った。ふ、ふわふわだ…!しかもなんかいい匂いしない!?するね!
安室さんのハンカチをぎゅっと握って、自分の濡れた場所はそのままに、私は安室さんに詰め寄った。

「安室さんって、柔軟剤なに使ってるんですか!?」
「ええ…」

私の勢いに押された安室さんが、一歩引く。と、そこで何かに気付いたようにハッとして、「そんなのことよりなまえさん、早く拭かないと風邪をひいてしまいますよ!」と私からハンカチを奪って、濡れた場所を拭いてしまう。あーあ。

「安室さんのふわふわハンカチが汚れちゃう…」
「そんなことを言っている場合じゃないでしょう」

怒られた。
そして、服はごしごし拭かないで、ぽんぽんと叩くようにしてくれる辺りが、流石だ。ごしごし擦ると、落ちなくなっちゃうもんね。

「早くしないと、落ちなくなってしまいますね。ここからだと、僕の家が近いですが、どうですか?」
「え!?そんな、悪いですよ!」
「でも、こんなにこの服、なまえさんに似合っているのに」

そう言われると、急に服に愛着が湧いてしまう。そして、気付く。安室さんの家に行ったら、さっきのふわふわタオルハンカチの秘密も知れるんじゃない!?

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

***

幸い汚れてしまったのは上に羽織っていたものだけだったので、それだけを安室さんの家で洗わせていただく。さりげなく洗濯機周辺に目をやったけれど、そこには何もなかった。これは、どう考えても、おかしい。

「安室さん、洗剤一式、隠したでしょう?」
「バレちゃいました?」
「なんでですか、私、柔軟剤教えてくださいって言ったのに」
「企業秘密なんです」

秘密、と言わんばかりに口元に人差し指をあてるのは、様になっているけれど、うん、すごく可愛いけど、でも、それで誤魔化されてはいけない。

「安室さんのケチ」
「ふふ、すみません。でも、一つだけ、いい方法がありますよ」
「いい方法?」
「はい。柔軟剤も、洗剤も、僕がなまえさんに淹れるカフェオレの配合も、全部分かってしまう、魔法のような方法です」
「えっ!?なんですか!?」

身を乗り出して安室さんに聞くと、ふふ、と安室さんは楽し気に笑う。こういう時の安室さんの笑顔が、好きだ。

「僕と結婚したらいいんですよ」
「そっかー、安室さんと結婚したらいいのかー!……って、えっ!?」
「ね?結婚しましょう、なまえさん」
「うん?」

いや、おかしいよね?この流れ、絶対、おかしいよね?
そう思いながら、どうしても私は、安室さんに握られた手を解けずにいる。




ツイッターで、さこさんとの合同企画で書いたものです。素敵な企画をご一緒出来て、とってーも幸せでした!
お題:安室さんからハンカチを渡されて、あまりのいい匂いに「安室さんって柔軟剤なに使ってるんですか!?」って聞いて「ええ…」って引かれちゃうヒロインの場面を入れる

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