学校のチャイムが鳴るよりももっと早い時間。ぽつりぽつりと登校してきた生徒達は、知り合いを見つけて話しかけたり、用事でもあるのか速足で校門を通っていく人もいる。その中で、今日は少し…ううん、大分いつもと様子が違った。
ちらりと目を上げて校門の向こうに建つ建物を見る。目に入るのは、毎日通っている校舎ではなくて、見慣れない十番高校の校舎。周りにいるのは、自分のものとは全然違う制服を着た十番高校の生徒…しかも女の子ばかり。

「レイちゃん、やっぱり居づらいよー」
「何言ってるの!そんなことを気にしていたらスリーライツに会えないわよ!」

スリーライツは好きだけど、ここまでして会わなくてもいい気がするよ。そりゃあ、ここまで来たんだから会いたい気持ちもあるけど。
なんでも、あの大人気アイドルグループ、スリーライツの三人がこの十番高校に転入するらしい。一体どこでそんな情報を仕入れたんだろう。
居心地悪く目を泳がせていたら、レイちゃんが私の肩をトンと叩いて合図をして、とある方向へと歩き始める。その先には、レイちゃんのお友達のうさぎちゃん達の姿が見えて、ああ、と納得しながら私もレイちゃんの後に続いた。
うさぎちゃんと、亜美ちゃん、まことちゃんに美奈子ちゃん。皆は中学一年生からの友達で、私も何度か一緒に遊ばせてもらっている。学校の違うレイちゃんがどうやって出会ったのかは、「色々あってね」という一言で済まされてしまっているから、よく分からない。よく分からないけど、レイちゃんと皆との間には、学校の皆とはまた全然違った絆があるように思えた。何か絶対的な、運命的な絆。例えば、みちるちゃんとはるかくんみたいな。それを見ていると、独りぼっちになったようで時々少し寂しくなっちゃうことは絶対に誰にも言えない。

うさぎちゃん達の方へ向かっていたら、集団の前で黒い車が止まったのが目の端に映った。その瞬間、きゃあっと周りが色めきだった。つられて気持ちがそわそわする。

「ほら、名前」

足を止めていた私の腕をレイちゃんに引っ張られた。あ、皆だ。私に気付いた四人が驚いた顔をする。

「名前ちゃんも来てたの!」
「うん、一緒に…」

苦笑いをしたところで、一段と大きくなった声に前を見ると、スリーライツの三人が車から降りてきたところだった。…って、あれ?

「レイちゃんは?」
「美奈子ちゃん達もいない」

ぽかんと口を開けたうさぎちゃんと目があう。ほんの瞬きの間に、この場には、うさぎちゃんと私しか残っていなかった。

「あのー…ファンクラブ会員ナンバー2906の、火野レイちゃんです!」
「あっ、あたし、1606番の木野まことです」
「278番!愛野美奈子でーす!」
「水野亜美です。会員ナンバーは、25です…」
「ええーっ!?」

いや、ええー、って。こっちが「ええー」だよ。何やっているの、あの四人。ぽかんと開いた口を塞いで、慌ててレイちゃんを止めようと近付く。そうしたら今度は、何故か星野君と知り合いらしいうさぎちゃんが彼に呼び止められた。
なんというか、すごい五人だなあ。

驚いていた私は、目を丸くしている私を見て、「あれは…」と呟いた人がいたことになんて、気付く筈も無かった。
新たな出会い

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