お父さんから、一人暮らしをゆるされた。
中学生で一人暮らしなんて、普通は到底ゆるされるものではない。
けれど、お父さんが海外の会社の会長にもなってしまったこと、私が日本の学校に通いたいと主張したこと、そして、お父さんが再婚したこと。そんな理由が積み重なった結果、こういうことになった。
私としては、ラッキーなような、不安なような。ドキドキなような、悲しいような。
そんなちょっと複雑な気持ちに名前をつけられないまま、気が付いたら、私の荷物は新しい家具と一緒に、三角洲へと、移されていた。

そして、一人暮らしを始めるにあたり、出された条件の一つ。
ある人たちに会うこと。
その人たちは、私の一人暮らしを手助けしてくれるから、その人たちにきちんと従うように、と言われている。マンションの管理人さんとかかな?
よく分からないけれど、怖いひとじゃないといいな。
お父さんの背中をちょこちょこと追いながら着いた新居を見上げる。今日が、その人たちとの顔合わせの日だ。

「天王はるかくんと、海王みちるくんだ。ほら、名前、挨拶しなさい」

お父さんの背中から顔を出して、「お世話になる人たち」を見た時、私は驚きで固まってしまった。
だって、こんな子どもだとは思わなかったんだもん…!
子どもって言っても、私よりずっと年上そうだけど。でも、ずっと年配の、大人の人たちなんだと思っていたから…。

「苗字名前です。宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いしますわ」

緊張しながら発した声に、柔らかい、落ち着いた声で返されて、ほっと心が和らいだ。
顔を上げれば、微笑みを浮かべる二人に、優雅な人たちだな、と、ほう、と息が漏れた。

「この二人も、お前と同じように無限学園に通うんだ。一つ先輩だから、失礼の無いようにな」
「一つ!?」

もっと上だと思ってた!
思わず裏返った声に、くすりと、天王さんが笑みを零した。

「そんなに老けて見えるかな?」
「いえ、とても落ち着いていて、大人っぽいので…」

失礼なことをしてしまっただろうかと焦っていると、「とても可愛らしい娘さんですね」と天王さんがお父さんに言う。「落ち着きの無い娘で申し訳ない」と返すお父さんに、心の中で、情けない娘でごめんね、と謝る。

「いえ、仲良くなれそうで、安心しました」

そう笑ってくれる二人に、私もです、と思いながら、誰にも分かられないくらいにほんの少し、頷いておいた。
はじめのはじめ

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