真ちゃん、事件です。

「………っっ!?」

ぱちりと目を開けて、ぼやけて見えない視界に違和感を感じた。次に抱き締めている相手の小ささに意識がはっきりし始め、自分のでかさに汗が吹き出し、そっと触れた黒髪に目眩がした。
まさかと思いつつも緑間の眼鏡をかけ、はっきり見える視界で相手を確認してみると、そこには普段じゃあり得ないくらいに綺麗な寝相で寝ている俺がいた。

「………し、真ちゃ、ん、になってる…?」

がばりと起き上がり、姿見で自分の姿を確認する。というかいつもよりめちゃくちゃ高い視点でもう分かった。鏡には紛れもない緑間真太郎が映っていて、呆然とするしかなかった。

「高尾、騒がしいのだよ…」

俺が勢いよく起き上がったことで目が覚めたのか、俺in真ちゃんと目が合う。ぽかんとした自分を見るのは不思議な感覚だった。

「高尾…?いや、俺…?………夢か?」
「夢じゃない!現実だよ真ちゃん!」

ちゃんと起きて!と緑間を揺さぶると、心底嫌そうな顔をされた。

「高尾、やめろ…俺の姿でいつも通り騒ぐな」

そう緑間の口調で言う俺の目付きは最早俺ではなかった。いやまあ、中身は俺じゃないんだけれども。
いくら姿が自分でも、表情や仕草からこれが真ちゃんなんだと分かる。しっかし、俺ってこんな目付き悪く出来たんだ…怖いというよりはガラ悪いなこれ…。

「真ちゃん、俺の姿なんだからもっとにこにこしてくんない?仏頂面の自分とか嫌なんだけど」
「冗談じゃないのだよ。お前こそもっと表情を引き締めろ。自分の顔が弛んでいるのを見るのは気持ち悪いのだよ」
「えっ、それってどうやればいいの」

ああしろ、じゃあそっちこそこうしろ、と、しばらく自分のイメージと今現在の姿とのギャップをどうにかしようと言い合いが続いた。
しかし言い合いに疲れ一時休戦となった時、あまりに不毛な言い争いをしていることに気付いて顔を見合わせどちらともなく息を吐く。

「やめよっか、こんな不毛な言い合い…」
「そうだな、今考えることはそれではないな…」

ふいに俺になった真ちゃんを見つめる。この身長差では旋毛しか見えない。それが珍しくて、旋毛を押してみた。

「い゛…っ!!何をするのだよ高尾!」
「うわ…新鮮な反応…真ちゃん可愛いね」
「やめろ、外見はお前だぞ」
「反応が可愛い…ん?」

ハタ、と動きを止め考える。なんかなんか、すーげえいいこと考えたかも…?

「…真ちゃん」
「おいやめろお前今ろくでもないこと考えてるだろ」
「俺、今なら攻め側回れるよね?ね、真ちゃん」
「やめろ回れない。回れないからやめろ」

サッと真ちゃんの顔が青ざめる。俺はニヤリと笑うと、俺の体をベッドに組み伏した。真ちゃんの力と俺たちの体格差があれば、俺になった真ちゃんなんて簡単に押し倒せた。初めての感覚にえもいわれぬ優越感を感じる。

「クソっ、やめるのだよ高尾!ふざけるな!」
「いーじゃん、こんなこともうないでしょ〜?俺も一回くらい真ちゃんいたぶってみたいし」
「体はお前だぞ!」
「口調と反応で真ちゃんって分かるから大丈夫」

じたばたと暴れる真ちゃん(見た目は俺)を押さえ付けて唇を奪う。なんか、レイプでもしてる気分だ。

「ん…っ、ふ、う」
「もー、そんな抵抗しなくていいじゃん。受ける側も、結構気持ち良いし。てか、俺が真ちゃんの力に敵うわけねーし、真ちゃんもう詰んでるってー」
「…ほう、俺がお前に敵わないと?」
「えー?今の状態じゃどうしようもな…」
「見くびるなよ!」

ゴッッ

「!!?〜〜〜〜〜っっ、あ〜〜〜〜っ!!!!」

真ちゃんに、頭突きされた。すごい音がした。額からこんな音が出るのかって音だった。

「な、な、何すんの真ちゃんのバカ!」
「バカはお前だろう、俺を襲うなど100年…ん?」
「………あれ?」

緑間真太郎が、目の前にいた。
俺ではなく、紛れもない、真ちゃんが。

「あれっ!?元に戻ってる!!」
「……頭突きしたから…か?」
「そんな簡単なことで!?まあ、こういう時の定番ではあるけど…つまんねーっ!!」

あっけない事件の終わりに納得いかず、じたばたした。ふいに手を掴まれ、動きを止めた。

「…ん?なに、真ちゃん」
「高尾、形勢逆転、だな?」

なんて綺麗な笑顔だろう。つられて、俺も笑顔になる。

「…真ちゃん、ね?昨日、さ、散々ヤったでしょ?もう高尾くん腰痛いかな…」
「そんな高尾の体に鞭を打とうとしていたのは紛れもない高尾だからな?文句は言えないよな?」
「真ちゃんほんとやめよう悪かった俺が悪かったから」

真ちゃんが、にんまりと笑った。






「高尾、日々人事を尽くしているとは、こういうことなのだよ」










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山吹様からのリクエスト、「入れ替わり緑高」でした!
リクエスト募集したのっていつですっけ?2月?マジで?
仕事遅すぎにも程がありますね!本当にすいません…

何はともあれ、やっとこさひとつめ完成です!途中の高緑風味がすっごく大変でした…攻め尾受けも好きとか言ったの誰だよ…

山吹様、リクエストありがとうございました!











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