通じ合っても、すれ違う

「高尾、お前は俺のことが好きなのだろう」

突然、何の脈絡もなく緑間から発せられた言葉。高尾は何事かと一瞬目を見開くが、それも本当に一瞬で、すぐににっこりと笑って口を開く。

「うん、好きだぜ?でも、それは真ちゃんもだろ?」

見透かしたように笑い、茶化すように言葉を発す。そう、二人は分かっていた。互いに互いが好きなことを。想いが通じ合っていることを。
しかしそれを口に出したのは初めてで、それも勘違いだったらどうしようだとかそういう不安から言わなかったのでは無かった。

分かっていた、から、言わなかった、のだ。

「ああ。高尾、俺はお前が好きだ。お前を愛している」
「…ありがとう真ちゃん、すげえ嬉しい」

緑間からの告白に、嬉しそうに、幸せそうに笑う高尾。しかし、次の瞬間高尾のそれは嘲笑うかのようなものに代わり、口元を歪ませる。

「でも真ちゃん、俺、お前とは付き合えない」

きっぱりと、吐き捨てるように高尾はそう言った。緑間はそんな高尾に眉を潜め、不機嫌そうに表情を歪ませた。

「何故だ」
「真ちゃんが好きだからだよ」
「好きなのに何故付き合わない」
「好きだったら付き合わなきゃいけないの?」
「そういうのを屁理屈と言うのだよ」
「あのね真ちゃん、俺は真ちゃんの未来を奪いたく無いんだよ」
「、」

表情を変えることもなく、淡々とそう言う高尾に、緑間はますます表情を苦くする。

「俺と付き合ったら、真ちゃんの未来を奪っちゃうかもしれないでしょ?真ちゃんは頭もいいし、バスケ上手いし、努力家だ。真ちゃんには無限の可能性がある。輝かしい未来が待ってる。そんな真ちゃんの傍にいたいって気持ちももちろんあるよ?でもね、俺が真ちゃんの傍にいて、真ちゃんが俺を大切に思ったら真ちゃんの輝かしい未来が壊れちゃうかもしれないだろ?俺、真ちゃんの邪魔になるくらいなら、真ちゃんの未来を奪うくらいなら、喜んで自分の感情を切り捨てるよ」
「…高尾、俺は高尾がいない未来なんていらないのだよ」
「駄目だよ真ちゃん。お前がうちの大切なエース様でも、その我が儘は聞けない。俺は、俺のせいで真ちゃんの未来が崩れていくのを平気で見ておけるほど図太くないんだ」

困ったかのように笑い、諭すように言葉を紡ぐ。いつもは何よりも愛しのエース様を優先する高尾だが、今回は全く聞き入れるつもりがないようだ。

「…俺が付き合わないとバスケを辞めると言ってもか」
「はは、俺はそんな愚かな選択をする緑間真太郎を好きになった覚えは無いから、そんなことを言った瞬間真ちゃんへの想いは消え失せるけど、それでもいい?」

高尾は、未だ笑顔だが、それはいつもの屈託のない笑顔ではなく、困ったような、呆れたような、悲しいような感情の入り交じった笑顔だった。それはまるで泣いているようにも見えて、緑間は何も言えなくなる。

「なあ、真ちゃん。すごくすごく大好きで、すごくすごく愛してるぜ。…だから、ごめんな」



(どうしたって交わらない想いが、二つ)










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緑間が好きだからこそ自分のせいで道を閉ざしていく緑間を見たくない高尾と、高尾が好きで高尾との未来が一番輝かしいと思っている緑間
このあと緑間は何度も告白するけど、返事は変わらずNO。
これからも二人はお互い以外が好きになれずにむしろ想いは膨らむ一方で、だけど想いは通じ合っているのに見ている先が全く違うからどうしたって繋がることが出来ない緑→←高、という話でした。
付き合ってないけど空気は夫婦、付かず離れず生殺し状態のまま死ぬまで一緒にいるんでしょうね。











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