夕日に照らされて
2013/09/25 00:37





テスト前で部活がオフになった日。
俺と高尾は、教室で勉強をしていた。
高尾はあまり数学が得意ではないらしく、このままでは赤点ギリギリ、最悪の場合赤点を取ってしまうと泣きつかれ、仕方なく高尾に数学を教えることになったのだ。

「…で、さっきのこれを代入したら…」
「…あ、こう?」
「そうだ」
「わああ…出来た…!」
「あとはそれの応用なのだよ」
「うん!!真ちゃんありがとう!」

教室にはもう、誰もいない。
テスト週間に入っている今、どこの部活も休みになっており、グラウンドや体育館からかけ声が聞こえる事もないし、みんな次々と家に帰ってしまうから、そこら中がしんと静まりかえっている。
つまり、俺と高尾の二人きりなのだ。

「真ちゃん、ここなんだけど…」
「………っ」
「? どした?」

近い。顔が近い。

俺は高尾に所謂恋というものをしている。最初は決していい感情なんて抱いていなかったのに、こいつの人懐っこさとか、気付かないような優しさに触れ、いつの間にか惚れてしまったのだ。

だから。

「真ちゃん?真ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だ…」
「そ?でね、ここなんだけどね…」

二人きりの状況とか。
教室が夕陽に照らされてちょっといい雰囲気になってることとか。
ちょいちょい高尾が戸惑うほど顔を近付けてくる(質問する為ではあるが)こととか。

ちょっとフラグ立ちすぎてどうしたらいいか分からないのである。

(もうマジで、告白の大チャンスなのだよ…なんかもうドラマかよってくらいいい雰囲気過ぎて逆に照れ臭いが、ここを逃したらもう告白出来ない気までしてくる程の大チャンスが巡ってきているのだよ…)

そんなことを考えながら、早一時間。
言おうと口を開き、高尾を数秒見つめ、口を閉じる。その動作を繰り返していた。
どこのヘタレだ俺は…!

「…………っ、あのな、たかっ」
「ねえ真ちゃ、」

嘘だろ。

「…………………なんだ…………」
「ごめん……なんかすごいタイミング悪かった…?」
「いや…いいのだよ…用件はなんだ…」
「あ、あのね…」

ありえないタイミングで入ってこられ、あまりのことに脱力しながら高尾を見ると、夕日に染まっても分かるほど真っ赤な顔をした高尾と目があった。

「あのね…」
「…………」

嘘だろ。

この雰囲気、赤面し緊張した様子の高尾、この状況は鈍い鈍いと言われてきた俺でも分かる。これは、もう…

「俺っ、真ちゃんがす」
「ちょっと待て!!!!!!」

………あ、高尾の顔が絶望に染まった。

「え…?今のタイミングで入ってくるか普通…?」
「いや、違うんだ…ほんとちょっと待て…」

ああ。もうグダグダじゃないか。
せっかくの夕日も、呆れ返っている。

「俺のプライドの為に、俺から言わせてくれ」

しかし、夕日は未だ高尾の顔を綺麗に照らし続けてくれている。まあ、悪い雰囲気ではないだろう。

「あのな、高尾………」





「好きだ」





夕日が映し出す影が、そっと重なった。










(なんてグダグダで、俺たちにお似合いな雰囲気だろうか。)










-------------------
久しぶりに書きました…
ハチ姉宅でやっている企画になにかリクエストを出したいといろんなシチュエーションを考えてたら自分が思い付いちゃいました。しかし当初考えてたのよりギャグになった(笑)
緑高ちゃんは、とびきり素敵な雰囲気も似合いますが、とびきり素敵な雰囲気がぶち壊されグダグダになっちゃった雰囲気も似合うな〜ということで。







prev | next


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -