欲張りの言い訳
2013/07/15 20:19





高校に入ってからというものハイスペックハイスペックとどいつからも言われるけど、俺がこういう性格になったのはなんでもないありがちなエピソードからだった。
ただただ単純に、俺が何かしら先回りして行動すると母ちゃんが褒めてくれて、それが嬉しくて先回りして行動する癖がついたって訳。
だから俺の中で人に気を使ってるだとかよく気付くだとかそういう意識はなくて、むしろ無意識だし見返りとかも求めてない。
ありがとうと言われるだけで十分だった。



(…ま、真ちゃんに出会うまでは、だけど)



毎朝見ているじゃんけん勝った後の微かなドヤ顔とか。
チャリアカー乗ってるときの優雅な横顔とか。
パス出した時の、楽しそうな顔とか。
俺の用意したおしるこを受け取るときの嬉しそうな顔とか。

そんな俺だけが知っているであろう真ちゃんの表情が見たくて、真ちゃんの為にあれやこれやをするようになった。

(俺って案外欲張りなのな)

自分でも知らなかった自分がどんどん引き出されていく。少しずつ少しずつ、欲張りになっていく。もう、今となっては、

(…俺のこと、好きになってくんねーかな、なんて)

そう思ってからは、止められなかった。好きになって欲しくて、もっと真ちゃんに近付きたくて、そんな欲張りな自分にちょっと自己嫌悪。

(それでも欲しい、なんて)

「…何をしている高尾、帰るぞ」
「…んあ?あっ、ごめんごめん、考え事してた…ってオーイ!早速後ろ乗るな!一応じゃんけん!」
「…チッ 面倒なのだよ」
「まあまあ。んじゃ、じゃーんけーんぽんっ!………………」
「早くチャリを漕げ下僕」
「下僕って言うな!!」
「高尾、おしるこを買い忘れた。コンビニに寄るのだよ」
「あーはいはい。じゃ、出発しまーす」

俺だけが漕ぐことの出来るチャリを漕ぎながら、心の中で問いかける。あと何回のわがままで真ちゃんが俺に振り向きますか?真ちゃんのわがままの見返りは、俺への愛でお願いします。

言ってから乙女チック過ぎたのがツボって吹き出すと、真ちゃんが訝しげな顔をしたのが見えた。

真ちゃん真ちゃん、もっと俺を見て。










(こんな特別も君だけなんだから)










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何を取っても高尾ちゃんの特別は真ちゃんですよね!ね!







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