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アルレイ兄妹ネタ2(アルレイ)
(パラレル)

※兄妹関係捏造パラレル



「嘘…だろ?…何で、レイアがそれ…持ってるんだよ…」

小さな小屋の中、ベッドに横たわる包帯を巻かれた彼女の上半身。
その胸元に輝く、七色に光る小ぶりの宝石のついた首飾り。
それを凝視してアルヴィンは固まった。
それは自分が…持っていたものなのに。


20年前エレンピオスから何もわからないまま、リーゼ・マクシアに流れ着いて。
その時に父は亡くなった。
そんな拠り所のなくなった母にある一人の研究者が支えとなった。
そして二人の間に子供が生まれた。
アルフレドにとっては父親違いの妹だった。

あの時はそれを認められなかったけれど、今は理解る。
独りで生きていくのは苦しい事だ。
拠り所が欲しいと感じるだろう。
子供の頃の自分がそれを理解出来ていたならと思う。
それが理解出来ていたなら妹の父親を見殺しにはしなかっただろう。
妹の父親は偶然、アルクノアの秘密の一端を覗いてしまい殺害された。

そしてまた拠り所を失った母の気持ちは過去に閉じ篭ってしまう。

当然小さな赤ん坊は放置される事になった。
腹を空かせて泣くその声が煩くて何度殺そうと思ったかしれない。
けれど実行には移せなかった。
多分家族、だったからかもしれない。

結局見捨てておく事は出来ずに、暫くの間ミルクを与えたり、あやしたり、寝かしつけたりの日々を送った。
その中でその小さな存在はアルフレドの本当に小さな拠り所になっていった。
生きているぬくもりに孤独を感じなくて済んだ。
話し掛ければ、笑ったりもする。
自分に反応してくれる存在があるのは嬉しかった。

けれど、ふと気づいた。
この子はこのまま此処にいたら不幸になるのではないかと。
今の自分の状態は決して幸せとはいい辛い状況じゃないかと。

アルクノアの仕事で人を殺して帰ってきた時、
幼く柔らかな頬に触れたその手に血糊がべったりついていたせいで、血が赤子に移ってしまい、まるで怪我か何かを負っているように見えた。
それはこの子の未来を暗示しているように感じられてアルフレドの肝を冷やした。
このままここにいたら、この子は死んでしまうと思った。
仮に自分が上手く育てられたとしてもこの手はこんなに血に塗れている。
そんな世界にこの小さな存在を置いていてはいけない。

「お前はここに居ちゃいけなんだ…。別の場所で幸せに生きなきゃ…」

そう思った。
まだ何も、家族すらも理解できない今のうちにここじゃない場所で生きていったほうがいいと。

自分の首元で光っていた七色に輝く宝石のペンダントを外して、妹の首に掛けた。
それはアルフレドが6つの時に母親から貰ったもの。
妹はもう母親に会うことはないだろうから、せめてこれだけでも傍にと思った。

妹を捨てる場所はかつてアルクノアに所属して、今はそこを抜けている男のいる場所に決めた。
彼は確か医者をやっていたはずだ。
そこが一番妹の命を守ってくれるはずだった。

ディラックの妻が赤ん坊に気づいて抱き上げ、院内に入っていくのを確認してからその場を離れた。
きっともう二度と会うことはないだろうけれど、妹は幸せに生きていってくれるはずだと思った。
あの場所にいるよりもずっと、きっと…。



そう、何故気づかなかったのだろう。
アルヴィンが妹を捨てた場所はル・ロンド。
そして妹は自分よりも明るい茶の髪と緑の瞳をしていたのに…。

確かに彼女は幸せに生きていた。

そんな妹に、そうと気づかぬまま仄かな恋心を抱いた。
何処か母と似ていると、その面影を彼女の中に見つけ…当然だった。
彼女は母の娘なのだから。

そして乱れた心のまま、彼女を殺そうとした。
レイアは今死の淵を彷徨っている。
あの時感じた未来への恐怖そのままに。
自分の手によって。


それを認めたくなくて、ジュードに縋りつくように問うた。
どうか違っていて欲しいと。

「なぁ、教えてくれよ!!レイアは!!レイアはロランド夫妻の本当の子供じゃないのか!!」

ジュードは突然何を言い出すのだろう、そんな顔をしたが、縋り泣くようなアルヴィンの雰囲気に気圧されて、話してくれた。

「…そうだよ。レイアは15年前、うちの病院の前に捨てられてた」

どうしてそれを知っているの?ジュードはそう問いかける。
けれど上手く答える事は出来なかった。

「その時丁度ロランド夫妻の子が死産してしまって…。それでレイアを養子にしたんだ」

もう間違いなどではない事を認めるしかなかった。
レイアがそのペンダントを持っているのも当然の話だった。
アルヴィンの視線がペンダントに向いているのに気づいたジュードはその説明もしてくれた。
それはレイアの宝物なのだと。

「レイアは言ってたよ。そのペンダントは大事なものだって。それがあれば何時か本当の両親や家族に会えるかもしれないって」

ロランドの両親の事を愛しているし、本当の家族のように思っているけれど、自分を産んでくれた人に会ってみたいと。
ペンダントを残してくれたという事は何か自分を捨てなければいけない事情があったんじゃないかと。

震えているのがはっきりと理解った。
レイアを撃った時と同じ様に震えていた。
再びジュードに縋りつく。

「なぁ!!レイアは…助かる…よな」

馬鹿な事を訊いていると思った。撃ったのは自分なのに。
ジュードは静かに首を振った。
まだ分からないと。レイアの体力次第だと。

自分が傷を付けておきながら祈るしか無かった。
どうか死なないで欲しいと。


自分にぬくもりを感じさせてくれた小さな命がこんなにすぐ近くにいた。
幸せを願ったその存在を自分が殺そうとした。
レイアは何も知らないまま、母親の最期も知らず、兄である自分に背を撃たれた。
自分はたった1人残った唯一の家族を殺そうとした。

過去に感じた予感は本物だった。
それを自分の手で実現させてしまうなんて。


一命を取り止めたレイアはアルヴィンを許すと言った。
以前のように話す事は出来なくなったが、レイアが生きていてくれるのならそれでいいと思った。


「ねぇ、どうして私を助けてくれながら避けるの?」

気まずい関係が続く中でレイアはアルヴィンにそう言った。
本当の事は言えなかった。
妹を撃ち殺そうとし、妹を好きになった愚かな兄の話など出来る訳がない。


「私がアルヴィンを好きだって言ったら抱き締めてくれる?」

「おたくは…ジュードの事が…」

「そうだね。ジュードは私の大事な存在。だけど私アルヴィンが好きだよ」

翡翠の瞳の刃が突き刺さって痛かった。
いっそ殺したいほど憎んでくれた方が楽だと思った。

自分を許してくれるレイアをどうしようもない程有難いと想いながら、
憎んで欲しいと願ってしまう。
自分を好きだと言わないで欲しいと。
その言葉に流され、触れてしまいたくなるから。
例え妹だと理解できたとしても、この気持ちを無かった事には出来ないから。

だからどうか嫌って下さい。


俺はレイアの事が好きだ。
俺達は血の繋がった兄妹だ。


どちらも口には出来ない言葉。
それを呑み込んでレイアの傍を離れるしかなかった。


後書き

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