3





『――とは言ったものの…』


このままのんびり血盟城で過ごすのは頂けぬよな…。 姫とか祭り上げられて、民から徴収された税金や城の蓄えで、生活を続けるのは――頂けぬ。

眞魔国で眞王を探すにしろ、一か所に留まるのは効率が悪い。

ならば…自立して己の足で、街を転々とした方が善いな。――と、なれば…。


『善は急げ、だ!』


与えられた部屋で悶々と思考していた私は、ぬししっとにんまり笑みを浮かべた。


――手始めに職を探そう!

その為には、この城から抜け出さなければ。

その考えの元に私は、この部屋から唯一出れる扉に耳を寄せて、外を伺う。扉の外には気配が二人。

恐らくオリーヴが、隊長を務める隊の兵士だろう。どちらも彼女の気配とは違った。


『う〜ぬ…』


扉から逃走出来ぬならば――…。私は天井を見、そして室内を見渡して、窓に目を止める。

否しかし……窓からでは外から兵士に見つかってしまうのでは――。そろりとバルコニーに出て階下を覗く。


『…』


これくらいの高さならば飛び降りながら、一階まで行けるな。普通の人間ならば堪えるだろうが――…元死神をナメんなッ!


『――よしッ』


サクラはもう一度部屋を見渡して、行動に移した。







シュッタ、シュッタッっと忍者の様に軽やかに下へ、下へと降りて行く。

然し…高いな血明城。

結構降りて来たと思ったんだが――…私は上を仰いで、窓が開いたままの自室のバルコニーを見つめた。


――まだ抜け出した事はバレておらぬな…。しめしめ。

少し休憩もした事だしと、いそしそ下へ降りようと足をかける。と――…



シャッ



____突然、背後で音がした。



『――!』


そして沈黙。

音を立ててしまったか。ヒタリと冷や汗が、流れるのを感じながら、窓越しに立っておる女性と、視線を交じたまま全身の筋肉が固まる。


沈黙…。


見つめ合っている目の前の女性は、ただただ無表情で、何かを喋り出すようでもなく、悲鳴を上げるでもなく。奇妙な静寂がこの場を包み込んでいた。

真っ赤な長い髪に碧い瞳をした彼女は、何処か見覚えがある。…デジャブ?

何と言っていいのか…明らかに不審者は私であるし…ここで、ひっ捕らえられたりされたら……。


『…ち、違うのだ!否何が違うのかって感じではあるが……ってそうではなくて、だな…決して、怪しい者ではないぞ! …少々、ここから下へと目指しておるだけであるある故……気にしないでくれ』


想像が膨らんで――ゾッとして、慌てて身振り手振りしながら、口を開く。

が…なんか返って怪しさが増したような……。


――莫迦かッ私はッ!

サクラは、己自身に乾いた笑みを浮かべた。

赤い彼女が何か言う前に、ここ去らなければッと、急いで足を手すりにかける。


「――サクラ、私が判らないのですか?」

『…ぇ』


人形のような無表情だった彼女が、やっと口を開いて、振り向けば…やや目尻を吊り上げ、御冠の表情とかち合った。


「……。まぁいいでしょう。――さ、中へお入りなさい」

『――うぬ?』

「聞こえなかったのですか?早く中へお入りなさい」


聞き間違えではなさそうだ。

彼女は窓を開けて、サクラを室内へ入れとジェスチャーしている。


『(下へ降りたかったのだが…)』


困惑しながらも、この赤い彼女に逆らったらダメだと、本能が言っておるので…しぶしぶ従う。






[ prev next ]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -