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本当はもう気づいている





こっちの身にもなってくれ





「シュヴァルツ大佐…。」

「何かね? ファミリーネーム軍医殿。」

「いい加減にしてください!!」

「さて、何のことかな?」

ここは砂漠にある基地の中の医務室。
この基地はガイロス帝国の所有するたくさんの基地の中の一つ。
そう、小さな小さなしがない地方基地である。

「毎回毎回師団を連れて来ないでくださいって言っているじゃないですか!!」

「何でだい?」

……はずであるが。

何故か仰々しい数のゾイドが周りを囲んでいる。
一地方基地にしては数も多すぎるし、何やら装備も上等なもの。
特に任務もあるわけではない様子。
兵もそれぞれに適当な休憩を取ってくつろいでいる。

「任務はどうしたんですか!? 任務は!?」

「何を言ってるんだ、任務は終わったよ。」

「だったらまっすぐガイガロスに帰ればいいでしょ!」

「ファミリーネーム軍医。私は君に会いに来ているのだよ。そんなに怒らないでほしいね。」

「そ、そんなこと仰られても誤魔化されませんから!」

「誤魔化しているつもりはないさ。」

そう言ってシュヴァルツは医務室の椅子に深く腰掛けてファーストネームを見た。

この小基地で軍医を務めているファーストネーム。
そしてその悩みの種がこの目の前に座っている腹黒大佐、カール・リヒテン・シュヴァルツだ。

出会いは何のことはない。
単なる偶然だ。
任務帰りにシュヴァルツたちの軍は一番最寄だったこの基地へと帰ってきた。
そのときの任務は激しいものだったようで負傷者がかなりいた。
だから小さいとは言えこのファーストネームが勤めている小さな小さな基地に帰還したのだ。
そこでシュヴァルツの手当てをしたのがファーストネームだった、ただそれだけ。

で、今こんなことになっている。

「毎回毎回こんなに師団を連れてきて! 怒られるのは私なんですよ!!」

「ほう、この基地の最高管理者はこともあろうに私の恋人である君を怒るのかね?」

「(しまった…)って誰が恋人ですか!!?」

ファーストネームはつい口をうっかり滑らせて上司のことをちくってしまった。
多分、上司は明日の朝陽は拝めない。
シュヴァルツがそういう人物だということはファーストネームはもう十分わかっていたのだ。

「誰って君に決まっているだろう?」

「わ、私は別に大佐のことをそのように思ってはいません!」

「はあ、ファーストネームは嘘が下手だな。」

「なっ!!」

ファーストネームがいくらがんばっても結局いつもシュヴァルツには勝てないまま。
あっという間に間を詰められたかと思うと今度はありえないくらいの至近距離。
ファーストネームは本当に悔しがる。

「シュ、シュヴァルツ大佐放して。」

「何だい?聞こえないよ、ファーストネーム。こっちを向いていってごらん?」

近くにありすぎるシュヴァルツの顔を見ないように下を向いて訴えるファーストネーム。
対して聞こえているくせにわざと意地悪をするシュヴァルツ。

シュヴァルツはファーストネームの顎に手を添えると強引に自分の方を向かせる。
悔しそうに口を閉めて目を潤ませているファーストネーム。
それがシュヴァルツを煽っていることにしかなっていないことにどうしていつも気がつかないのか。

「ファーストネーム。本当に君はわからずやだな。」

「そう思うなら来ないでください。」

「そして強情だ。」

そう言ってシュヴァルツはファーストネームに静かに口づけた。
それをこれといった抵抗もせずにいつも受け入れてしまうファーストネーム。
それがシュヴァルツを調子づかせるということにやはり気がついていない。

「本当に君は愛し甲斐のある女性だな。」

「ご冗談を……。」

ファーストネームはそういうのが精一杯だった。
ドキドキしすぎて何と言って抵抗すればいいかがわからないといったほうが正しいが。

「まあ、今日はこの辺にしておくよ。」

そう言って短いキスをファーストネームの額に落としてシュヴァルツは医務室から出て行った。

「もう、ホントに。」

ファーストネームはもう閉まってしまった医務室の扉を見て自分の唇を一撫でした。

嫌なら転属届けでも何でも出せばよいのに。

自分はいつもこの基地でシュヴァルツが来るのを待っている。

矛盾しているのは知っている。

だが自分はやっぱり素直になれないのだ。

「……心臓に悪い。」

いつも自分をあんなふうに翻弄する。

そんなシュヴァルツのことが本当は好きなのだということは多分であった日からわかっているのだ。










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2018.09.20
無印ZOIDSからまたまたシュヴァルツ大佐です。
なんなのこの人、ホントに。かっこよすぎて震える。





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