OTHERS | ナノ


「オプティマス、何だそれ?」

「サボテンという植物だ。」

「何だってそんなもの育ててるんだ?」

「これが私の愛の証明だからだ。」





サボテン





私達は故郷であるサイバトロンを失った。
今は地球という星で暮らしている。
地球には人間と小さな種族が住んでいる。
産まれてからまだそんなに経っていないまだまだ若い種族だ。

私達は軍に所属して地球に隠れ住んでいるディセプティコン達の討伐を行っている。
人間たちとの文化が違いすぎて未だ戸惑うことあるがそれでも不自由はない。

そんな中私は一人の人間の女性と出会った。
彼女の名前はファーストネーム。
軍の研究機関に所属していて私たちの世話係も担っていた。
彼女は少し変わっていて私たちを見ても驚かなかった。
資料で私達の事を知っていたと言っても、大抵の人間は驚きの声をあげてた。
しかし彼女は驚くどころか嬉しそうにに笑い、私達に一言宜しくと言った。

初めの印象は変わっている。
ただその後彼女への気持ちは次第に別のものに変わっていった。
彼女の向ける笑顔は大変好ましく、私はこの気持ちが愛しさだと気がついた。

だが人間という生命体と私達機械生命体では違いすぎる。
私はすぐにこの思いを断ち切ろうとした。

しかしできなかった。

断ち切ろうとすればするほどにこの思いは強くなり、
遂には柄にもなく彼女と話す仲間にさえ嫉妬をするようになっていた。
こんな気持ちになどなったことがなく、どう扱っていいかもわからない。
私なりに苦悩の日々が続いた。

だがそれはある日突然終わりを迎えた。

彼女と二人きりになる機会が不意に降ってきた。
私は本当に柄にもなく緊張したりして視線がばれないように車のまま彼女をずっと見ていた。
彼女は何か話しかけて来ていたが、正直覚えていない。
私はカツカツと足音をたてて行ったり来たりしている彼女を見ていてつい・・・

『好きだ。』

心の中でずっと思ってたことを思わず口に出してしまったのだ。
その場所には彼女しかいなかったからよかったものの、
彼女だけだったからこそ私の不本意な独り言は鮮明に彼女に届いてしまった。
口から出てしまった失言に慌てて弁解をしようとしたその時・・・

『変なの。』

彼女から出た拒絶の言葉に背筋が一瞬凍った気がした。
私の頭が真っ白になって何か言わなくてはと思っていた矢先・・・

『そんな変なのはあたしだけかと思ってた。』

続けざまに言われた言葉の意味を考えるにはまだ真っ白だった私の頭。
どういう意味か聞かなくてはと何かを言おうとした私に彼女は近づいてきて続けて言った。

『あたしもオプティマスの事好きよ。
種族違いの恋だなんて変だと思ってたけど二人とも変ならいいよね。』

そう言って彼女は照れくさそうに笑って見せた。
そんな彼女を見て私は気が付けば人型にトランスフォームして彼女を抱き締めていた。
少し力を入れれば壊れてしまいそうな人間の彼女。
同じ人間の形にトランスフォームしてもやはり力加減がわからない。
はっとして彼女を離して顔を覗き込むと頬を染めて笑う彼女がいた。
いつも通りの笑顔に私はつられて笑った。

それからというものの私達はいつも一緒にいた。
初めは仲間にどう話そうかと二人で顔を突き合わせて悩んだが、
そんな悩みは特に必要がなかったようで、みんなは初めに少し驚きはしたがすぐに事実を受け入れてくれた。
人間の方もサムやカーリー、レノックスは祝福してくれた。

幸せだった。

ファーストネームの笑顔を見るだけで私はどんな戦いも乗り越えていけた。
第二の故郷に帰る場所まででき、良き仲間にも恵まれて、本当に幸せだった。
人間のように口づけを交わし、体を重ねて、どうしようもないくらい愛し合った。
もちろん子供なんて作ることはできない。
だが彼女はそれでもいいと言ってくれた。

『子供はできれば欲しかったけど、あたしはそれでもいいわ。
だってオプティマスと一緒にいられるんだもの。』

あとから聞いた話だが、彼女は子供のころから良き母親になることが夢だったそうだ。
それでも彼女はその長年の夢を捨てて私を選んでくれた。
罪悪感あったが、それでも他の男に彼女をやるなんてこと、私にはできなかった。

それにそれ以上に不安を感じていることがあった。

ファーストネームと私の間にある確かで絶対に避けられないこと。
確実に近づいてきていつか彼女を私を奪ってしまうもの。

そう、死だ。

人間は長く生きて100年そこら。私達とは違いすぎる。
彼女がいなくなってしまった後のことを考える。
その度に胸が押しつぶされそうになる。

そんなことを考えているとファーストネームは言った。

『ねえ、オプティマス。
私ね、多分100年そこらで死んじゃうと思うの。人間だから。
それにね、オプティマス達と違って老いっていうものがあって、
そのうちしわくちゃのおばあちゃんになっちゃうの。』

彼女も彼女なりにそのことについて負い目があったようだった。

『ごめんなさい、そんなのってないよね。でもあたしもう貴方が他の女の人といるところなんて考えられない。』

ファーストネームの涙ながらの謝罪に私は責めることはしなかった。
むしろ責められるべきは私であるべきかもしれないのに。
彼女は私と全く同じことに憂えて涙して悩んでいたのだ。

『私はそんなことは気にしない。
私が愛しているのはファーストネームだけだ。
それだけはずっと変わらない。』

『嬉しい。でもそんなこと言わないで。
だって貴方は私達でいう永遠のように長い時間を生きるのよ?
きっと他の人を好きになるし、私もそれぐらいは覚悟しているわ。』

『そんなことはない。
私は永遠のその先までファーストネームを愛している自信がある。』

『ありがとう。嬉しいわ。』

本気で愛していた。
種族の壁などどうでもいいくらいに。
死が二人を別とうと私達にはそれはほんの些細なことだということを認識した。

それからも私は彼女を愛した。
彼女もまた私を愛してくれた。



『ねえ、オプティマス。これあげるわ。』

『これは?』

『サボテンっていうのよ。』

『何故これを?』

『サボテンの花言葉は“枯れない愛”。
貴方がこれを育ててくれている間は私をまだ愛してくれてるんだな、って天国からでもわかるでしょ?』

『ファーストネーム。』

『ねえ、オプティマス。育てて。植物だからいつか枯れちゃうけど。
それでも長く生きる種類だからきちんと育てれば100年は大丈夫なはずよ。』

『わかった。私はこれを育て続けるよ。』

『ありがとう。』



今も私はファーストネームにもらったサボテンを育てている。
ファーストネームはもう大分前に亡くなったが、私の気持ちはやはり変わっていない。
この愛の証だけを大切に守って育てていつか私の寿命が来たらこれを持ってファーストネームに会いに行こうと思う。
それもまだまだ先の話だが私は少しも苦にならない。





私は永遠のその先の先までファーストネームを愛し続ける自信があるのだから。










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2018.09.20
パソコン時代の再録です。
オプティ、かっこよすぎだよ。大好きだよ、マジで。
最新作見てないけどね。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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