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空に散った同志達よ

私はいつまでもここにいます





星空





「ファーストネーム姫。また見ているのですか?」

「オプティ…。」

一人の少女が夜空を見上げていた。
いや、少女というには少し違うような印象。
姫と呼ばれた少女が振り返ると、そこには燃えるような炎が描かれた青いコートに身を包んだ青年がいた。

姫と呼ばれた折れそうなほど可憐な少女の名は、ファーストネーム・ファミリーネーム。
オプティという相性で呼ばれた青年の名は、オプティマス・プライム。
惑星サイバトロンからやってきた機械生命体である。

そうこの二人人間ではない。
所謂ロボットだ。
だが一瞥しただけでは、全く見分けがつかない。
それにファーストネームの憂いを帯びた瞳や、オプティマスの真摯な眼差しは、人間のそれよりも遥かに人間らしいものだった。

「レノックスにも言われているでしょう。あまり一人で出歩かないようにと。」

「ええ。でもごめんなさい、星があまり綺麗だったから…。」

そう言ってファーストネームはまた夜空を見上げた。

今日は天気がとても良い。
透き通りすぎていて、星の光が眩しすぎるくらいだ。
手を伸ばしても届くないはずそれらを、ファーストネームは酷く切なそうに見上げていた。

「故郷のことをお考えですか?」

「ええ、まあ、少し。」

「お父上とお母上のことをお考えですか?」

「ええ、少し…ね。」

ファーストネームの一族は、惑星サイバトロンの統治をしていた。
惑星では、サイバトロン王家として崇められ、よく惑星を支えていた。
オプティマスは、その王家を守護するオートボットの総司令をしていた。
特にオプティマスの率いる小隊は、ファーストネーム専属の護衛部隊だった。

平和に暮らしていた、あの日までは。

メガトロン率いるディセプティコンと呼ばれる軍団が謀反を起こしたのだ。
それを火種に惑星は、オートボットとディセプティコンの二派に別れて戦争が起こった。
その戦争の収拾にあたって、ファーストネームの両親は破壊され、王家で残されたのはファーストネーム一人となった。
ファーストネームは戦争の根源となった、キューブと呼ばれるエネルギー体と共に星を去る決意をした。

誰にも何も告げずに。

ただ戦争を終わらせるために、ただ一人、孤独という名の友を連れ広大な宇宙へと身を投げた。
そうして彼女がたどり着いたのが、人間の住まうこの地球だった。
現代からは何万年も遡ることにはなるが、ファーストネームはその悠久の時をキューブを見守りながら一人で過ごしたのだった。

人間に見つけられたのは100年ほど前だっただろうか。
だが、ファーストネームからすればそんなのは最近の話だ。
人間がキューブを見つけ、ファーストネームを見つけた。

そしてファーストネームは凍結された。

当時の人間からすれば、ファーストネームは地球外生命体で危険要因そのものだった。
人間達は抵抗もしないファーストネームを試験管のような円筒の巨大な装置に入れて凍結処分にしたのだった。

逃げようと思えば逃げれたし、殺そうと思えばファーストネームは人類を消すこともできた。
だがそれをしなかったのは疲れていたからか、それとも遥か昔に失われた故郷の偉大な先人達の言葉に従ったのか。

はたまた自分の愛しいと思う相手に言われた一言を覚えていたのか。

『ファーストネーム姫。貴女の手が汚れるくらいなら死んだほうがマシだ。』

彼の戦へ彼が赴く時に彼――オプティマス・プライムが言った言葉。
何万年も前に言われた言葉に従って、彼女は長い眠りに着いた。

だが、今回の地球におけるディセプティコンの襲来で再び現れたオートボット達を目の当たりにして、
人間は彼女を解放し、サムやバンブルビー達とひきあわせた。

メガトロンは死に、キューブも失われ、故郷へと帰る術もなくなったファーストネーム達は今も地球に残って軍に置いてもらっている。

「この空の何処かでまだ皆は生きているのかしら?」

空には満天に星々が散らばっていた。
所狭しと並ぶ星が少し煌くたびにファーストネームは体を震わせた。
誰かがまた来てくれたのか、と。

「ええ。まだたくさん仲間がいるでしょう。」

オプティマスは、静かにファーストネームの隣まで歩み寄った。
ファーストネームはドキッとして思わずそそっと、横にずれて彼と距離を置いた。

「そうあからさまに避けられると、傷つくのですが。」

「あ、ご、ごめんなさい…。」

メガトロンの処分が終わって一段落してからファーストネームはオプティマスに対してずっとこんな調子だった。
何かにつけて距離を置く。

「怒って…いるのでしょう……?」

「ええ、そうですね。」

ファーストネームが恐る恐る尋ねると間髪入れずに返事が帰ってきた。
声には小波のように静かな怒気が含まれている。

「私に何の相談もなく、星を出て行って。私がこれまでどんな思いで貴女を探していたと思うんです?」

「////!!」

オプティマスは素早くファーストネームの傍まで来たかと思えば、腰に手を回し彼女を強引に引き寄せた。

「オ、オプティ!」

「何か言うことはないのですか?」

オプティはあいているもう片方の手でファーストネームの顔をあげさせると目を細めて見つめた。
ただ一つの言葉を待っている。

「ご、ごめんなさい。」

「よろしい。」

「/////!!!?」

そう言ってオプティマスはファーストネームの唇を塞いだ。
長く深い口付けの間、ファーストネームは何を考えていたのかも覚えていない。

「星空に散った仲間を思って憂えるのもいいですけど、偶には私のことだけを考えてください。」

「オ、オプティ。」

「私でも嫉妬ぐらいはするんですよ。」

そう言ってオプティマスはまたファーストネームにキスをした。
ファーストネームは抵抗してみたが、そんなのは全然無駄だった。

「抵抗されるとまた傷つくのですが。」

「い、いきなりこの様なことをされたら誰でも抵抗します。」

「いきなりではないでしょう。忘れたのですか?」

ファーストネームは思わず、顔をぼっと赤くした。
どうやらファーストネームの大切にしていた記憶をオプティマスも覚えていたのが、嬉しいのやら恥ずかしいのやらといった感じだ。



『こんな戦争はさっさと終わらせて…。』



「貴女に浴びせるように愛を示したい。と言ったはずですが?」

「い、言ってましたけど!」

「それが今までお預けになっていただけです。」

オプティマスはファーストネームをきつく抱きしめた。

「オ、オプティ…。」

「愛しています、会いたかった。」

そう言ってオプティはファーストネームを一瞬見つめ、今度はゆっくりと静かに口付けた。
ファーストネームは少し躊躇いながら、それでも静かに返事をし目を閉じた。

「オプティ、私も愛しているわ。」

二人の唇が重なった瞬間、夜空の星々のいくつかが微笑むように煌いた。





夜空に散った我が同志達よ

私はいつまでも待ってます

私達はいつまでも待っています










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2018.9.13
パソコン時代の再録です。
実写版トランスフォーマーが大好きすぎて、
中でもオプティマス・プライムへの愛が止まりません。
これは相当マイナーだと思いますが、トランスフォーマー擬人化でも何でもいいので好きな人は挙手してください。
是非友達になってください(土下座)


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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