ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


「アリス、最近朝の散歩の時機嫌いいわねぇ。気をつけて行ってくるのよ。」

「そ、そんなことないよ!行ってきます、お母さん。」





続 散歩道にて





「昨日言ってた小テストはどうだった?桐島さん。」

「ふふん、もちろん満点ですよ!」

嵐山さんと朝の犬の散歩の時に出会ってから1週間が経っていた。
天気も味方してくれたのか、散歩が中止になることもなく、あれから毎朝嵐山さんと朝の犬の散歩をしている。
シェリーとコタローくんもすっかり仲良くなったみたいで、彼らは彼らで会うのが楽しみのようだ。

まあ散歩をしていると言っても、初めて出会った河原に大体同じぐらいの時間にやってきて2匹を遊ばしている間に二人で他愛もない話をする、そんな感じ。

初めは嵐山さんという有名人に出会って浮かれていたが、今はそんな感情はない。
それよりもこの1週間で嵐山さんを本当に好きになってしまったようで、自分としてもどうしたらいいかわからない状況。

こうやって会って話をして、盛り上がる。
それはいい、とてもいいと思う。
会話の合間に見せる嵐山さんの笑顔はとびきりで、もうドキドキしっぱなしだ。

「おー、すごいな、桐島さん。勉強得意なんだな。」

呼び方は相変わらず、"桐島さん"である。
確かにまだ1週間しか経ってないけど、こんなに会話が弾んでるのに何だか違和感だ。
それに少し寂しい。

でもどうやって話を持って行けばいいかわからない、名前で呼んでほしいだなんて。
そんなこと言ったら多分だけど大体の人は自分に好意を持っているのではと勘ずくだろう。
嵐山さんは2つも年上だし、かっこいいし、有名人だし。
あたしなんて女の子として相手にされるわけない。

「?どしたの?桐島さん?」

「あ、いえ!なんでもないです。」

ああ、何でもなくはないでしょ、あたし!
折角一緒にいるんだから楽しそうにしなきゃ!

そうよ、元々偶然出会っただけだもん。
2人だけで会って、話して、ファンの人とかにバレたら殺されそうなシチュだよ、これ。
そうだよ、贅沢だよ。こんな奇跡みたいな時間があるんだもん。それで十分じゃない。
そもそも名前とか初めに名乗っただけだし、覚えてないよ、きっと。
うん、そうだよ。あたしなんかが期待持っちゃダメよ。

「お、もうこんな時間か。」

嵐山さんがコタローくんを呼ぶ。
つられて時計を見ると確かにいつもそろそろ家に帰る時間だったので、あたしもシェリーを呼んだ。
楽しい時間はあっという間とかよく言うけれどホントにその通りだよね。

「ん?あれ?」

「どうしました?」

コタローくんの首輪にリードをつけようとしている嵐山さんがやけに手こずっている。
様子がおかしかったので覗き込むと、どうやらリードのフックが壊れてしまったようだった。

「あちゃー、これは新しいの買うしかないですね。」

「そうだよな。結構長く使ってたから仕方ないか。」

嵐山さんはクルクルとリードを巻いてポケットに入れる。
そうしてコタローくんを抱き上げた。

「コタロー。今日は帰りは抱っこして帰るぞー。」

「くぅん。」

か、かわいいっ!コタローくんに普通に話しかける嵐山さん、かわいいっ!
突然の光景に一人悶える。

「でもまいったな。ペットショップとかあまり行かないからどうしようかな。」

「嵐山さん、さっきのコタローくんのリード見せてもらえませんか?」

「うん?いいよ。」

嵐山さんは片手で器用にコタローくんを抱くと先ほどポケットに入れたばかりのリードを取り出す。
あたしはそれを受け取るとリードにつけられたメーカーのタグを確認する。
思ったとおり結構何処にでも置いてあるメーカーの物だった。

「このリードなら同じタイプのもの売ってるお店知ってますよ。」

「本当か!助かるよ、桐島さん。」

ぱぁっと明るくなる嵐山さんに思わず胸がきゅぅうとなる。
待って、この人本当に年上なの?可愛すぎるんだけど!

「あ、でももうそろそろ行かないと遅刻?」

「え、嘘!」

あたしは慌てて時計を確認する。
確かにそろそろ帰らないと遅刻はしないだろうが、ギリギリになってしまいそうだ。

「あ、そうだ。桐島さん、よかったら連絡先を交換しないか?あとでお店のこと教えてくれると助かるんだけど。」

「も、もちろん!」

嵐山さんからの申し出に思わず顔がにやけそうになるがそこを何とか我慢する。
嵐山さんは慣れた手つきでスマフォを操作し、あたしの名前を入力している様子だった。
その途中でこんな嬉しいことを言う。

「桐島さん、下の名前はアリスだよね。可愛い名前だね。どんな字書くの?」

「あ、えっと。」

下の名前覚えていてくれてる上に可愛いとは反則だ。
思わず頬が熱くなる感覚がする。
どうしよう、ホントに好きになってしまっている。
朝しか会えないこの人に、あたしはもう恋をしてしまっている。

「休み時間とかになったらお店のこと連絡しますね。」

「うん、頼むよ。アリスちゃん。」

突然呼ばれた名前に一瞬固まってしまう。
えっ?!今確かに名前で?!

「あ、びっくりした?いつまでも桐島さんって言うのも余所余所しいし、折角可愛いんだから呼ばないとと思ってさ!」

そうやって無邪気に笑う嵐山さんにどう顔向けしたらいいかわからない。
ただ黙っているのも変なので少し俯いてありがとうございますと言った。

何、今日のこの展開。
朝からちょっといい日すぎない?
何だか学校でとんでもない目に遭いそう。
いきなり抜き打ちの小テストあるとか。これすごくありえる。

「じゃ、じゃあまた連絡しますね!」

あたしは逃げるようにシェリーを引いて河原を駆け上がった。
上がりきった時にそっと振り返るとそこにはあたしを見送る嵐山さんとコタローくん。
振り返った私にニコニコと手を振る嵐山さん。
あたしは控えめに手を振りかえしてその場を去った。

家に着いた時に鼓動が早かったのは、走って帰ってきたからなのか、それとも別の理由なのか。
座り込むあたしをシェリーが心なしか笑ったような表情で覗き込む。

何よ、何かいいたそうね。
顔が赤いですって?そんなのあたしが一番わかってるよ。

あたしはシェリーの頭をわしわしと撫でた。










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2015.4.10
嵐山さんとの恋始まっちゃいました。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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