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やったね、勝っちゃった☆





after the 負けられない闘い ver.二宮隊 side S.I





「さーて、どうする?」

「うーんと、とりあえず迷惑にならなさそうな場所探さなくちゃ。」

アリスは赤ん坊を抱いて犬飼とラウンジを歩いていた。

今日の朝突然赤ん坊を連れて現れたアリス。
訳あって知り合いの子を預かり、これまた訳あってその子を連れたまま基地に出勤した。
子守をしなければならなかったのでアリスは二宮にお願いをして任務と訓練を休むことに。
だが子守1人では心許ないだろうと、オペレーターの氷見の発案で二宮隊からもう1人子守のサポートを選出することになった。

二宮隊のアイドル的ポジションアリスと2人きりになれる時間はそうない。
氷見の巧みな煽りによって、アリスと子守をする人間を模擬戦で決めることになった。
トリオン量も戦術もトップクラスの二宮相手では、いくら手を知り尽くしている仲間内と言えど、犬飼と辻には厳しい闘いだ。
しかし2人は開幕早々二宮に2人で奇襲をかけて見事に成功させた。
二宮を落とした後、犬飼と辻は正々堂々と闘い、結果犬飼が勝利した。

「なんか遊べそうなもの持ってんの?」

「うん、一応お気に入りのおもちゃとか持ってきてるよ。」

アリスは視線を肩にかけているカバンに向ける。
大きく膨らんだカバンの中からよく聞けば鈴の音が聞こえる。
赤ん坊のおもちゃがあるならあとは場所さえ確保できればよさそうだ。

「隊室はダメって言われてるし、どうしようかな。」

「そうだなー。」

犬飼も首をひねって考える。
ボーダー基地は広い。場所は腐るほどあるが人に迷惑をかけないという意味ではかなり限られてくる。
それに赤ん坊をずっと抱っこしておくわけにもいかない。
ある程度赤ん坊がハイハイなどをしても平気そうな広めのスペースが必要だ。

「あ、そうだ。」

そこで犬飼が良いことを思いついたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
アリスはその笑顔に期待をした。

だって犬飼がこういうことを言う時は大体本当に良いことを思いついた時なのだから。





「うわー、良い天気。おひさま気持ちい良いー!」

「でしょー?」

アリスと犬飼は赤ん坊を連れて屋上へとやってきていた。
今日は天気も良いし、心地いい風も吹いている。
赤ん坊が風邪をひくこともないだろう。

「よく雷蔵先輩こんなの用意してくれたね。」

「ちょーと貸しがあってさ!」

アリスの言うこんなのとは、屋上に突如として現れたキッズスペースである。
いくら赤ん坊の移動手段がはいはいだけとは言え、万が一ということも考えられる。
野放しにしておいて危険な目に合わせては大変だ。

そこで犬飼はまず技術開発室に行き、チーフの寺島に事情を説明。
寺島は忙しそうで最初渋っていたが、犬飼が何やら耳打ちすると手のひらを返したように快く引き受けてくれた。
貯蔵していたトリオンを少し屋上の装飾に回してもらって、少し広めのスペースを柵で囲ってもらい即席キッズスペースを作ってもらったのだ。
この中に入れば赤ん坊もどこかへ勝手に行くこともできないだろうし少し目を離してしまった隙に!なんてことにはならないだろう。

「それにしてもよく澄こんなこと思いついたね。」

「前に荒船が映画鑑賞用にミニシアター作ってもらっていたこと思い出してさー。」

「ええ!?何それ!そんなことしちゃダメだよ。雷蔵先輩忙しいんだから。」

とは言いつつも、アリスは次また映画を皆で見る時は呼んでね、としっかり犬飼にお願いをする。
犬飼はもちろん笑顔でいいよ、と答えた。

「それにしてもレジャーシートにパラソルまで借りられるとは。」

アリスは自分に日陰を作ってくれているパラソルを見上げた。
それはよく夏のビーチに浜辺にささっていそうな、そんなものだった。

「これは太刀川さんから。だって真夏じゃないって言っても直射日光とか熱いじゃん?」

「そうだけど。このシートも太刀川さんの?」

「そ!」

キッズスペースの中に敷いている大きめのレジャーシート。
レジャーシートを敷いていることで何も気にすることなく赤ん坊を遊ばせれるし、
アリスと犬飼も靴を脱いでくつろげる。

「澄、ありがとう。何から何まで至れり尽くせりってかんじ。」

「いいっていいって。困ってるアリスを放っておくほど俺オニじゃないし。」

そんな会話をしていると赤ん坊が犬飼のほうへとやってきた。

「だーだー。」

「何々?俺をご指名?」

犬飼は赤ん坊を抱き上げて座ったまま高い高いをする。
すると赤ん坊はきゃっきゃっと声をあげて喜んだ。

「お、これ好きなかんじ?」

赤ん坊があまりに喜ぶので犬飼も気分を良くして相手をした。
そんな犬飼をアリスは意外そうな顔で見ていた。
それに気がついた犬飼はクビを傾げる。

「何?」

「あ、ううん。澄って子供好きなの?」

「うーん?どうかな。」

犬飼は子供をおろしてあぐらをかいている足の上に座らせた。
子供は急に降ろされてどうしたのかと後ろに倒れそうになりながら犬飼を見上げた。

「弟とか妹とかいるわけじゃないからなー。でも・・・。」

犬飼はそう言って視線を下に向ける。
すると自分を見上げる純真無垢なキラキラとした瞳と視線がぶつかった。
それを見て犬飼はフッと笑った。

「悪くはないかな。」

犬飼が優しそうに笑うので赤ん坊も嬉しそうににっこり笑った。
その犬飼の表情が今までに見たことがないほど優しかったのでアリスも何だか嬉しくて笑った。

「じゃあ澄は早く結婚して子供作らなくちゃね。」

アリスの発言に犬飼は目をキョトンとさせる。
ついでニヤリと笑うと赤ん坊の目を手で隠しアリスの耳元で囁く。

「だったらアリス、俺と子供作ってくれる?」

「え!?」

アリスは顔をボッと赤くした。
そんな自分をニヤニヤして見てくる犬飼を見て恥ずかしさで顔を歪める。

「なっ!そ、そんなこと言う!?普通!すぐに答えられるわけないでしょ!」

「ふーん。じゃあ待ってれば返事くれるんだ。」

「そ、そういうことじゃなっ!」

アリスは思いきり犬飼から顔を逸した。
犬飼はくすりと笑うと赤ん坊をお腹に乗せて寝転んだ。

「ちょ、ちょっと!澄!」

「いーじゃん。今日はこのへんにしといてあげるから膝貸して。」

そう言って犬飼はアリスの膝を枕に赤ん坊と昼寝を決め込むようだ。
犬飼だけなら無理やり立ち上がるなりして抵抗するが、
赤ん坊を抱いている状態で無理に立ち上がるのは危ないと思い我慢する。
下から犬飼がニヤニヤしながら見上げてくるので何とも居心地が悪い。

「あ、ちゃんと待っててあげるから返事聞かせてよ?」

「…そのうちね。」

アリスの消え入りそうなその一言に犬飼は満足したのか、
赤ん坊と2人すぐに寝息を立てて眠ってしまった。
アリスはそんな2人の柔らかい髪の毛を両手でそれぞれ撫でる。

「そのうち…ね。」

アリスは1人そうつぶやいた。










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2019.01.01
side 犬飼バージョンです。
私の中で犬飼はチャラいけど真面目でみたいなかんじ。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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