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勝ったのはいいが。





after the 負けられない闘い ver.二宮隊 side M.N





「ふふ、皆見てますね。」

「そうだな。」

ボーダー本部基地のラウンジ。
夕方で人で賑わっているそこを二宮とアリスが歩いていた。
アリスの腕には大きな荷物が抱えられていて、哺乳瓶などが覗いている。
対して二宮は赤ん坊を抱き、無表情で歩いていた。

(隊室はダメだと言うんじゃなかった…。)

二宮は自分の発言を後悔していた。

今日の朝突然赤ん坊を連れて現れたアリス。
訳あって知り合いの子を預かり、これまた訳あってその子を連れたまま基地に出勤した。
子守をしなければならなかったのでアリスは二宮にお願いをして任務と訓練を休むことに。
だが子守1人では心許ないだろうと、オペレーターの氷見の発案で二宮隊からもう1人子守のサポートを選出することになった。

二宮隊のアイドル的ポジションアリスと2人きりになれる時間はそうない。
氷見の巧みな煽りによって、アリスと子守をする人間を模擬戦で決めることになった。
トリオン量も戦術もトップクラスの二宮相手では、いくら手を知り尽くしている仲間内と言えど、犬飼と辻には厳しい闘いだ。
2人は開幕早々二宮に2人で奇襲をかけるが、結果は失敗。
見事に返り討ちにあってしまい、二宮がアリスとの子守をする権限を勝ち取ったのであった。

「二宮さんが赤ちゃん抱っこしているのって何だか不思議ですね。」

「それは褒めているのか?」

「褒めているつもりです!」

無表情の二宮が赤ん坊を抱いている。
シュールすぎて周りがザワザワしているのがわかる。
だがアリスは意に介していない。
いや、もしかしたらただ気がついていないだけかもしれない。

「ん?」

二宮は腕の中でもぞもぞと動いていた赤ん坊が動かなくなったことに気がつき覗き込む。
すると赤ん坊は歩いている間の小さな揺れが心地よかったのか、眠ってしまっていた。

「あ、寝ちゃいましたね。」

「そうみたいだな。」

スースーと気持ち良さそうな寝息を立てて眠る赤ん坊。
このまましばらく寝てもらえると助かるが、その間ずっと二宮が抱っこしているのも酷な話だ。

「仮眠室が空いているか見てみるか。」

「そうしましょう。」

二宮とアリスは赤ん坊を寝かせられる場所を求めて仮眠室へと向かった。





「よかったですね、部屋が空いていて。」

「そうだな。」

仮眠室の空き状況を確かめると、何個か空室があった。
アリスは赤ん坊が起きて泣いてしまった時のことを考えて、比較的に周りに人がいない区画の仮眠室を予約した。
部屋に入ると二宮は赤ん坊を起こさないように、ベッドに腰掛け、ゆっくりゆっくりとおろす。
赤ん坊はおろした瞬間軽く身じろいだが、眼を覚ますことはなかった。

「よかった、このまましばらく寝てくれそうですね。」

アリスは二宮の隣に腰掛け小声で言った。
そして赤ん坊の小さな手のひらをちょんちょんと指で触る。
赤ん坊はその度にぴくりと動き、アリスの指を握った。

「二宮さんもやってみてください、かわいいですよ。」

「む。」

二宮は初めは子守に乗り気ではなかったのに、先ほど抱っこしていて早速情が移ったようだ。赤ん坊が自分の指でも握り返してくれるか気になり、アリスの言う通り人差し指でちょこんとその小さな手のひらに触れてみた。
すると赤ん坊はさっきまでと同じように二宮の指をキュッと握った。
それが思いのほか嬉しかった。

「よかったですね、二宮さん。」

「ああ、まあ。そうだな。」

そう言って2人が顔を見合わせようと顔を上げた時。
赤ん坊を見ようと座ったので、お互い思いのほか近い距離で座っていた。
アリスはすぐ目の前に二宮の顔があったことに驚き、顔を真っ赤にして思い切り顔を赤ん坊のほうに逸らした。
しかも考えれば本来1人で使うはずの仮眠室、こんなに狭い空間に二宮と2人きりだなんて(赤ん坊はノーカン)
アリスは急にドキドキしてきた。

「アリス、どうかしたか?」

一方二宮は当初の目的を思い出した。
赤ん坊にほだされて忘れるところだったが、この子守の機会に乗じてアリスとの距離を詰めようというのが本来の作戦だったはず。
二宮はアリスが自分のことを意識したことをいいことにわざとらしく上のように言ってのけた。

「あ、いえ。何でもないです。」

緊張してしまって妙に声が上ずってしまったアリス。
二宮は表情を崩さずいつも通りのフリをしてアリスに手を伸ばす。

「何でもないことはないだろう?耳まで真っ赤だぞ。」

「!」

二宮はアリスの頬に添える手をゆっくりと顔を自分のほうに向けさせる。
アリスは顔は二宮のほうを向いたが、気持ち俯いて眼を合わせないように必死だ。
二宮は空いているほうの手で、アリスの手を握る。
アリスは驚いて手を引っ込めようとするが、二宮はそれを許さない。
アリスは観念したのか、二宮の手を握り返す。

「アリス。」

二宮はアリスの手に添えていた手を離して顎を掴むとゆっくりと顔を近づける。
アリスはキュッと眼を瞑った。

「?」

だがそこで二宮は他の人の視線を感じてふいっと横を見ると、赤ん坊をがジッと自分達のことを見ていた。

「お前、いつから起きて…。」

と、つい二宮は言ってしまった。

「えっ?!」

その言葉にアリスも眼を開き赤ん坊を見る。
すると寝転がったまま嬉しそうにきゃっきゃっと手を叩いて喜ぶ赤ん坊がいた。

「み、見てたの?!」

アリスはさらに顔を赤くした。
赤ん坊だから2人が何をしようとしてたかはわからないだろうが、見られていたのがやはりなんとなく恥ずかしい。

「もう、起きてるなら言ってよ。」

アリスはごまかすようにそう言うと赤ん坊を抱き上げると二宮に背を向ける。
二宮は赤ん坊が起きていたことを口に出したのを激しく後悔した。

(クソ、俺としたことが…。)

あのままアリスをモノにできたかもしれないのに、そのチャンスをみすみす棒に振ってしまった。
こんな機会はしばらくはないだろう。
そう思うとため息が出そうだ。

「あ、あの二宮さん?」

するとアリスは二宮に背を向けたままこう言った。

「続き、今度してくれますよね?」

二宮は一瞬何を言われたかわからなかった。
だがそれはすぐさま理解に変わる。

「もちろんだ。」

二宮は立ち上がるとアリスの後ろから頭に手を置く。

「何度でもな。」

すると赤ん坊はまた声を上げて笑った。










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2018.12.14
side 二宮バージョンです。
ちょっと二宮熱が上がっている内に更新しておこうと思いまして!
二宮はなんだかんな赤ん坊とか子供にほだされやすいと思う。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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