ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


「女子会だあ?」





女子会だとよ





「うん、そうなの!」

諏訪はニコニコと答えるアリスに口元をひくりとさせる。

諏訪は午後夕方まで防衛任務だった。
アリスを毎日送っている身として、ラウンジにいるというアリスに今日の予定を聞きにきてみれば、アリスはニコリと冒頭の言葉を発した。
アリスは朝から仕事で今日は昼までだったらしい。
諏訪が行った頃には既に帰る準備をしてラウンジで誰かを待っている様子だった。

「待て、女子会って。おい、誰と行くんだ?」

「え、誰って…。」

アリスは頭にその人物らを思い浮かべて指折り数えて見せた。

「えっと、連ちゃんと、羽矢ちゃんと、それから…。」

そう言ってアリスが3本目の指を折ろうとした時だった。

「アリスー!お待たせー!」

手を振りながら駆け寄ってくる彼女を見て諏訪はやっぱりかと大きなため息をつく。

「あ、望美せんぱーい!」

「よりにもよって加古かよ…。」

「あーら、諏訪さん、その反応は心外ですよ!」

諏訪は顔に手をやり項垂れる。
月見や橘高ならアリスに変なことを吹き込むことはないだろうが、加古は別だ。
アリスに余計なことを教えないか不安になる。

「心配しなくても、変なことを言いませんってば!」

テヘッと笑う加古に諏訪はため息以外何も出ない。
だがこんなに楽しみにしているアリスに行くなとは言えないし、何より自分にそれを言う資格はない。

「アリスー、加古さーん。」

「お待たせー。」

そこへ月見と橘高もやってくる。
続々と集まってきた女子達にやはり諏訪はこれ以上とやかく言えないのだった。

「どこ行くんだよ。」

「ショッピングモールのケーキ屋さん!限定でケーキバイキングやってるんだって!」

「そーかよ。」

嬉しそうなアリスに水もさせないので諏訪は優しく笑うとアリスの頭の上に手をポスッと置く。

「遅くなったら迎えに行ってやるから連絡してこいよ。」

「ありがとう!洸ちゃん!じゃあ行ってくるね!」

アリスは諏訪に手を振り、加古達と出かけていった。
最後に加古が振り返って意味ありげに笑ったのが気になるが、見なかったことにしておいたほうが任務に集中できそうだ。

「諏訪さーん、行きますよー!」

「おう。」

堤と笹森に呼ばれて諏訪はとりあえず防衛任務へと赴くのだった。





「あー、美味しかった。もう食べられないー。」

「予想以上に食べたわね、アリス。」

アリスは最後のパンプキンケーキを食べ終わると満足そうな顔をしてフォークを置いた。
食後の紅茶さえ入らないのではないかと思うぐらいに食べたはずだが、アリスは平気そうに紅茶に口をつけた。
4人の中で一番小柄なアリスのどこにそんなにケーキが消えたのか、他の3人は思わず笑った。

「このバイキングいつまでやってるのかなー。また来たいなー。」

アリスはそう言ってケーキのショウウインドウを振り返る。
まだまだそこには美味しそうなケーキ達が並んでいる。
種類が多すぎて今日は食べるのを断念したものもあったので、これは全制覇しなければとアリスは意気込んだ。

「来週末までやってたと思うからまた来ればいいわよ。」

そう言って加古は先程とは違う笑みを浮かべて言った。

「あ、諏訪さんと来ればいいんじゃない?」

ニヤリと効果音が聞こえそうな加古の笑みを見て、月見と橘高は苦笑した。
加古は完全にアリスと諏訪の関係を面白がっている。
諏訪のため息が深くなるわけだ。

「いいですねー!洸ちゃん一緒に来てくれるかなぁ。」

アリスは早速先ほど撮ったケーキの写真達をお供に、諏訪にメッセージを送信した。
任務中なので諏訪からの返事は返ってくることはないだろうが、アリスの中ではもうOKの返事が来てることになっているようで嬉しそうに笑った。

「アリス、諏訪さんって小さい頃どんな子だったの?」

「あ、私もそれ知りたーい!」

「洸ちゃんですか?」

アリスはんー、と唸りながら天を仰いだ。
諏訪といたのはアリスが小学生にあがる頃、6歳ぐらいまでの間だ。
もう大人になってしまった今からでは思い出すのが普通なら難しい。
だが、アリスは違ったようだ。

「わんぱくな子供だったよ!」

「「「そんな気がするー。」」」

アリスの中の幼い頃の諏訪は今でも鮮明に思い出せるようだった。
まるで昨日まで諏訪少年と一緒にいたような気さえする。

「髪の毛は真っ黒で、それから夏は1日中公園で虫取りしてた!あとは誰かとよく喧嘩してた。」

「「「そんな気がするー。」」」

アリスのあげる幼い頃の諏訪は、何というか今の諏訪から容易に想像できる。
加古達はそれぞれ小さい頃の諏訪を思い浮かべる。
おそらく今の諏訪がそのまま小さくなったような、そんな子供だったのだろう。
それが何だかおかしかった。

「それからね…。」

アリスはとても嬉しそうに笑う。

「とっても優しいの。」

あまりにアリスが嬉しそうに、優しそうに柔らかく笑うものだから、見ている加古達も幸せな気持ちになった。
これでどうして幼馴染のままなのか、全くもって謎である。

「諏訪さんは今でも十分アリスに優しいわ。」

「うん!洸ちゃんは皆に優しいんだあ。」

諏訪が褒められたのが嬉しくて。
アリスはまるで自分が褒められたかのように照れてみせた。
諏訪は見た目がヤンキーなので誤解されがちだが、気さくで性格も明るく人当たりも良い。
面倒見もよく、後輩達にもよく好かれていた。

「あ!でもね、洸ちゃんってば酷いところがあるんだよ!」

だが突然何かを思い出したようで、先程までの幸せそうな笑顔はどこへ行ったのか、アリスはプンスカ怒り出した。

「私がアメリカに行ってから何度も手紙出したのにね!一回もお返事くれなかったんだよ!」

「「「そんな気がするー。」」」

アリスは頬を膨らます。
小学校に上がったばかりの頃で、当時のアリスには文章を書くのも難しかったが、両親に習って一生懸命手紙を書いた。
手紙を出してからは毎日のようにポストの前で返事を待っていたが、いくら待っても諏訪からの返事は来ない。
アリスはある日を境に手紙を出すのをやめたのだった。

「洸ちゃんってば、中身も読まずにきっと捨てちゃったんですよ!前に聞いたら顔逸らして何も言わなかったですもん!」

「諏訪さんならありそうー!」

加古はそれにケラケラと笑った。
そういうことには不精そうな諏訪のことだ。
返事なんて面倒で書かなかったに違いない。

(諏訪さんがそんなことするかしら。)

ただ月見はアリスの言うように思わなかった。
たしかに諏訪は見た目がヤンキーで…(以下略)
だが、推理小説を好んで読んだりと文学的な趣味もあり、細かな気遣いができる男だ。
子供の頃の話ではあるが、そんな諏訪が来た手紙を読まずに捨てるなんてことをするだろうか。

(何か返事を出せない理由があったんじゃ。)

月見はここまで考えて、その後のことは考えなかった。
これについてはどんなに想像を働かせても答えを知っている人物は1人しかいないし、その1人というのはおそらくその真実を人には言うまい。

「まあまあ、アリス!今日は私達が付き合うから憂さ晴らししましょうよ!」

「この後ボーリングとか行きません?」

「いいわねー!」

「やったー!」

ボーリングをしたことがないアリスは橘高の提案に飛び上がって喜んだ。





「おう、待たせたな。」

結局遊び倒した結果夜遅くなってしまったので、アリスを迎えに諏訪が車でやってきた。
(玉狛で木崎に借りてきた。)

「洸ちゃん、ありがとう!」

アリスはそう言うとトコトコと助手席に回り込む。
普段もこうやって諏訪が迎えに来て、普段もああやってアリスが乗り込むんだろうなと容易に想像できるほど2人のやり取りはこなれてた。

「諏訪さーん、長々とアリスお借りしちゃってすみませーん。」

「お前、そのニヤニヤ顔マジやめろ。」

何か言いたげな、意味ありげな加古の笑顔に諏訪はやはりため息が出る。

「私も送ってくださいよ!」

「お前自分の車で来てんだろ!早く帰れ!」

これ以上からかわれてたまるかと、諏訪は加古をしっしっと追い返す。
加古は笑ってそれに答えると皆に手を振って背を向ける。

「おい、加古。」

「はい?」

諏訪は帰ろうとする加古に声をかける。
加古は何かと思い振り返った。

「今日はアリスが世話になったな。気ぃつけて帰れよ。」

加古は目を点にする。
先ほどまでのぞんざいな扱いとは雲泥の差だ。
何だかんだと後輩を邪険にできない。
これが諏訪なのだ。

「いいえー!それじゃ、お疲れ様でーす!」

加古は元気よく手を振ると帰って行った。

「じゃあ、私達も帰ります。」

「諏訪さん、お疲れ様でした。アリス、またね!」

そう言って月見と橘高が帰ろうとするのを、諏訪は加古の時と同じように呼び止めた。

「あ、おい、お前ら。送っていかなくて平気か?後ろ乗ってけよ。」

諏訪はそう言って後ろの席を指差す。
月見と橘高は顔を見合わせて、ほんの一瞬だけ間を置いた後、諏訪の申し出を丁重に断った。

「大丈夫です、お気遣いありがとうございます。」

「蓮とは家も近いですし、平気です!」

「そうか?じゃあまあ、気をつけて帰れよ。」

「「お疲れ様でーす。」」

諏訪は2人の返事を聞くと車を出した。

「バイバーイ!蓮ちゃん、羽矢ちゃーん!また明日ー!」

「おい、アリス!窓から手ぇ出すな!危ねぇだろ!」

車が走り去る姿を見送って月見と橘高も家路に着いた。

『洸ちゃんは皆に優しいんだあ。』

その時何故かアリスが言っていた言葉が浮かんだ。
あんなに誰彼構わず優しいと、面倒見の良いのも考えものだ。
諏訪も自分で遠回りしてることに早く気づけばいいのにと2人は思ったのだった。










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2018.12.02
諏訪さん連載9話目更新です。
絶対に諏訪さんは面倒見がいいはず!
面倒見が良くない諏訪さんだなんてありえない!と思いながら書きました^^

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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