ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


デキる女はやっぱり違うぜ





なんじゃこりゃ





「ここのthatはこっちじゃなくて…。」

「あ、こっちの名詞を指してるんですね!」

「そうそうその調子!」

「いやー、アリスちゃんの教え方わかりやすくて助かるよ。」

「えへへへー。ありがとうございます、堤先輩!」

本日の諏訪隊隊室はちょっとした授業のようなものが催されていた。
もうすぐ実力テストが近い笹森が英語で悩んでいるところへ、今日の仕事が終わったアリスがやってきたのだ。
まだ仕事にしばらくかかる諏訪が待っている間笹森に英語を教えてやれとアリスに言うと、アリスは快くOKをした。
そこへ堤もやってきて、堤のほうが1個年上ではあるが、堤も英語をアリスに教わり出したのだった。

「あ、小荒井達だ。」

すると笹森の端末に東隊の小荒井達から連絡が入った。
東にアリスを紹介された小荒井達は自分達もアリスに勉強を教わりたいと連絡してきたのだった。
それをアリスに伝えると断る理由のないアリスは快く返事をした。
東には前に助けてもらったこともある。
尚更断る理由はない。

「おいおい、これ以上増えるならラウンジ行けよー。この時間なら空いてるだろうからよ。」

これ以上人数が増えるなら部屋が少し騒がしくなるだろう。
デスクワークが得意でない諏訪は周りが騒がしくなると、途端に集中できない。
むしろ自分も混ざりたくなってしまう。

「はーい。」

諏訪に言われてアリス達はそそくさと荷物をまとめて隊室を出ていった。
諏訪はタバコに火をつけ直して、デスクに向かった。





「マジ助かるっす、先輩!」

「ホントわかりやすいです。」

ラウンジに場所を移動したアリス達と東隊の小荒井と奥寺が合流した。
アリスは快く2人にも英語を教える。
わかりやすいアリスの説明に高校生達はどんどん問題を解くことができた。

「太刀川、逃げるな。」

「嫌だってば、風間さん!助けてー!!」

するとラウンジの向こうが何か騒がしい。
気になって覗き込むと、そこには風間に引きずられている太刀川の姿があった。

「あ、堤!助けてくれ!!」

「うわっ、どうしたんだよ、太刀川!」

太刀川は堤の姿を見つけると、堤の腰に抱きつく。
突然のことに堤は驚いた。

「堤、ちょうどいい。こいつを何とかしろ。」

「え、いや、どうしたんですか?」

自分にしがみついておいおい泣く太刀川に苦笑しながら堤は風間に問うた。
すると風間は大きくため息をついた。

「レポートが終わっていないのに逃げようとしたんだ。今回のは終わらせないとマズイ。」

「風間さんが言うくらいなら相当ですね。」

堤はまた苦笑して太刀川を見下ろす。

「英語とか無理。マジ無理。」

太刀川は小さく呟く。
堤も風間と同じようにため息をついた。

「堤先輩?」

するとなかなか戻ってこない堤を心配してアリスがやってきた。
堤はアリスを見て閃いたような顔をした。

「あ、太刀川、アリスちゃんに教えてもらおうよ。女の子に教えてもらったら少しはやる気出るだろ?」

「アリス?」

「ほら、諏訪さんの幼馴染の子だよ。」

太刀川は顔を上げてアリスを見た。
アリスのことは加古から送られてきた写真で見たことがある。
だがアリスのほうは太刀川を知らない。
自分のことをじっと見る太刀川にアリスは小首を傾げて見せた。

「…俺、やるわ。」

アリスが諏訪のものだというのは重々承知だが(実際はただの幼馴染だが)、風間にビシバシとやらされるよりは断然女の子に教えてもらうほうがいい。
太刀川は堤の提案を受け入れた。
風間はその太刀川の返事を聞いてアリスを見た。

「そういうわけだ。手伝ってくれるか、桐島さん。」

「はい、喜んで!」





「なんっじゃこりゃ。」

諏訪はようやくデスクワークを終わらせてラウンジにいるアリス達に合流した。
そして諏訪は目の前に広がる異様な光景に顔をひきつらせる。

「何だよ、この人数。」

たしかアリスは隊室で堤と笹森に英語を教えていた。
そしてそこに東隊の小荒井と奥寺がやってきて合流するという話だった。
隊室ではもう狭くなるので諏訪はラウンジに行ってやるように言った。

たしかに言った。

「へえー、これダンガーじゃなくてデンジャーなんだ。」

「なるほど、そういう要約の仕方もあるのね。」

「これがさっきアリス先輩が言ってたやつだろ?」

「違うってそれはこっち!こっちがアリス先輩が言ってたやつだよ、奥寺!」

「そういう方向からの切口はおもしろな。今度教授達に相談して実験してみるか。」

「だいぶレポートができた、アリスちゃん。ありがとう。」

「アリス、さすがだなー。」

上から太刀川、加古、奥寺、笹森、東、堤、嵐山である。
他にも小荒井や月見、橘高、嵐山隊の時枝や佐鳥までいる。
何がどうしてこうなってここまで人数が増えたのか謎だ。

「あ、洸ちゃん!」

そんな中誰も気づくことがなかった諏訪に、最初に気がついたのはもちろんアリスだった。
その声に全員が手を止めて諏訪を見る。
その視線にうっとなったが諏訪は一応手を挙げて挨拶した。

「よ、よう。」

そして続ける。

「何これ、どういう状況?」

諏訪はそう言って空いていた堤の隣の席に座る。

「いやー、噂を聞きつけて色々な人が集まってきて…。」

堤はそう言って苦笑した。
太刀川のレポート提出の危機を脱するために、アリスが太刀川の面倒をみることになったのだが、それによって太刀川のレポートが著しく進行した。
あの太刀川が勉強している、うまくさせられていると噂が広まりまず加古がやってきたのだ。

それを聞いた東が太刀川の面倒も見ているのに自分のところの隊員も世話になっていたら申し訳ないと様子を見にきた。
ところが東もアリスと話してみると今までに思いつかなかったようなことがいろいろと出てきた。

そして今度はあの東と対等に話ができる人間がいると聞きつけて月見が橘高を引き連れてやってきた。
みるみる大きくなる所帯を見た人々が、なんだか大所帯で勉強会が行われていると噂をしだして、それを聞いた嵐山がちょうどいいから時枝と佐鳥も参加したらどうだ?と声をかけて連れてきた。

中心にいるのはアリスだ。

「というわけでして。」

「どんだけだよ。」

諏訪はアリスをチラッと見た。
さっきまで知らなかった人々に囲まれて、それでもアリスは楽しそうに話をしている。
もともと人懐こいところもあるアリスだ。
すぐに心は開くだろう。

「なあなあ、これ合ってるか?アリス。」

と太刀川がアリスに声をかける。

ん?今太刀川はアリスのことをアリスと呼んだだろうか。

「アリス、この要約はどう思う?」

と今度は風間が。
ん??風間も今アリスのことをアリスと呼んだだろうか。

「悪い、アリス。この法則についてお前の意見を聞かせてくれないか?」

と最後に東が。
ん???東も今アリスのことを…以下略

(何でみんなアリスのこと普通に名前で呼んでんだよ!!)

諏訪は眉間にしわを寄せた。
それに気がついたのは東や風間だった。
2人は両手を顔の前で合わせて悪いなという顔をした。
諏訪はそんな2人に片手をあげて気にするなと返す。
だが返した後に自問する。

(気にするな、じゃねえだろ、俺!俺とアリスはただの幼馴染なんだからよ!!)

頭を抱えてテーブルに突っぷす隊長を見て堤は苦笑した。
アリスがみんなに可愛がってもらえるのはいい、大いに結構だ。
だが心の中がなんとなく穏やかじゃない。
それは嫉妬と呼ぶ以外他がなかった。
そんな様子の諏訪を見て東が笑った。

「アリス。結構長くみんなに教えていたから疲れただろう。今日はもうお終いにしよう。太刀川の課題だったらあとは俺達で何とかできる。」

「え、でもまだ途中…。」

「諏訪が何か言いたいことがあるらしいこら聞いてやってくれないか?」

「なっ、ちょっ!!東さん!!」

諏訪はバッと立ち上がる。
そしてそんな中アリスと視線がバチっと合う。
アリスは首を傾げた。
ここで沈黙しては変に思われると思い諏訪は必死に言葉を探す。

「あー。駅前のクレープ食いてえって言ってたろ。行くか?」

「!行く!!」

アリスはパアッと顔を明るくすると立ち上がった。

「今日は助かったぞ、アリス。ありがとう!」

「アリス先輩、ありがとうございました。」

「また教えてくださいねー!」

みんなは口々にお礼の言葉を言いながらアリスを見送った。

「はーい、またお勉強しましょうね、皆さん!」

アリスは元気よく手を振ると諏訪の腕に飛びつく。

「ねえねえ、洸ちゃん。クレープさ、いっぱい種類あるから迷っちゃうよね、きっと。」

「お前が食べたいの2個頼めよ。そしたら半分ずつにしようぜ。」

「うん、やったー!」

そんな2人の後ろ姿を見て一同はため息をつく。

(あれで本当に付き合っていないんだもんなー。)





「それでね、みんなとお友達になったんだあ。」

「良かったな。」

駅前で買ったクレープを2人でベンチに並んで座って食べた。
その間アリスは先ほどまでの出来事を嬉しそうに語った。
諏訪は先ほどあの光景を見た時は正直少しムッとしたが、こうやって落ち着いて2人で話すと、やはりアリスの交友関係が広がることが嬉しく思えた。

「それでね、蓮ちゃんと羽矢ちゃんはね、同い年なんだって。」

根付のところで働いているとやはり職員が大半なので年上ばかりだ。
年上が嫌だとかそういうのではないが、やはり同い年の友達がもっと欲しかったり、年下とも交流がしたいだろう。
今日あの場に月見と橘高が来てアリスと友達になってくれたのは諏訪にとってもありがたかった。

アリスは長い間アメリカで暮らしていた。
だから三門市にはほとんど友達がおらず、ほぼ0からのスタートだ。
ボーダーでバイトをしているため大学へ行く機会も少し減り、友達を作る機会を少し失ったかと心配もしていたが、初めから自分がもっと積極的に仲間に会わせてやればよかったと諏訪は少し後悔した。

「それでね、蓮ちゃんが今度大学の友達とやる飲み会に呼んでくれて…。」

こうしてどんどんアリスは自分の知らないアリスになっていくのだろうと考えると諏訪としてはやはり複雑だが、目の前のアリスが幸せそうなのでそれでよかった。

「よかったな、アリス。」

「うん!」

そうやって笑うアリスはやはりどうしようもなく幸せそうな顔をしていた。










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2018.11.22
諏訪さん連載7話目更新です。
ヒロインさん頼りにされまくりです!


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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