ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


(ちょっと待って。あそこに飛び込む勇気はやっぱりない。)






初デート





あー、何だろう。あの光景と全く同じ光景を以前見た。

准さんと付き合いだして1ヶ月が過ぎた。
付き合う前と同じように准さんは私を朝迎えに来て、シェリーを連れて散歩に行く。
帰りは准さんの家に寄ってコタローくんを一頻り愛でた後家に帰る。
そして学校へ行く。
正式に付き合いだしてからもその生活は変わらなかった。

『デートしようよ、アリス。』

そう言われたのが昨日の朝だった。
頭の中は真っ白になって、顔は真っ赤になった。
すると准さんは笑った。

『アリス、可愛いな。』

その彼の笑顔にまた顔が熱くなる。
付き合いだしてから彼は積極的にそういうことを言うようになった。
嬉しいのは嬉しいけど、心臓に悪いと言うか、恥ずかしい。
一向に慣れない私と違って、やはり2つも年上だと彼はとても大人に見える。

『前に行った自然公園、見頃の植物も変わってるだろうし、また散歩に行こう。』

今までもデートをしたことはある。
でもそれは付き合う前のふわふわした関係の時だった。
いざ付き合いだしてから行くとなると前よりも緊張する。

待ち合わせは前と同じ駅前の広場。
前は15分前に行って准さんが既にいたから今日はもう少し早く着くように家を出た。
するとまた待ち合わせの駅前の広間に行くと人集りに遭遇。
んん、まさか?と思ってそっと近づいて遠巻きに見ると、やっぱりその中心には准さんがいた。

(やっぱり!囲まれ過ぎだよ、准さんっ!!)

相変わらずの人気を誇るボーダー嵐山隊の隊長、嵐山 准その人は、今日も営業スマイルなのか、はたまた通常スマイルなのかはわからないけど、いつもの笑顔で人だかりの中心にいた。
以前は別に彼女でも何でもなかったので出て行きにくかったけど、今の私は以前とは違う。
そう、今は准さんの彼女なの!だから胸を張ってお待たせ!って言って、待った?とか言ったりしながら出ていけばいいの!

それでいいのよ、アリス!

(出ていけるわけないよ…。)

そう出ていけるはずがない。
相変わらず准さんを囲んでいるのは私よりも年上の大学生と思われるお姉様方。
私なんかが彼女面して(彼女だけど)出ていったら何て言われるかわからない。

「あ。」

どうしようかと柱の物陰から伺っていたあたしにやっぱりというか准さんは気がついて、笑顔2割増で駆けてきた。

「アリス、来てたのか!声掛けてくれよ!」

「ご、ごめんなさい。」

准さんはそう言うと先程まで自分を囲んでいたファンの人々に申し訳なさそうに笑って手を振る。

「ごめん、彼女来たみたいだから!皆また今度!」

「!」

ファンの人達からえー、という声があがったが、そこはやはり嵐山スマイルで手を振ると、ファンの皆様方は快く見送ってくれた。

「さ、行こう。」

そう言ってごく自然に手を差し出されれば、私もごく自然に手を返すしかない。
後ろからは羨ましい、という声が聞こえる。
私は耳まで赤くなっていないか心配になった。
それくらいに顔が熱い。

チラリと准さんを見上げれば、准さんもこちらを見ていたようでバチリと目があった。
ニコリと笑ってくれる准さん。
私は恥ずかしくてふいっと目を逸したけど、その代りに握る手に少しだけ力をこめた。





「わー、綺麗!」

「結構花が咲いてるなー。」

前と同じように駅からシャトルバスに乗り込んで自然公園を目指す。
准さんの言うように、春も過ぎていろいろな花が咲き乱れていて、前と同じ公園とは思えないぐらい綺麗だった。

「晴れてよかったですね、准さん。」

「ああ、絶好の散歩日和だ。」

手を繋いで爽やかな風が吹き抜ける小道をゆっくりと歩く。
周りを見ればカップルばかりだ。

私はふと心配になる。
准さんの隣を手を繋いでいる私はきちんと彼女に見えているだろうか。
まさかとは思うが妹とは思われていないだろうか。
いや、でも手を繋いでるから平気…かな…多分、おそらく、きっと。

「どうした?アリス。」

「あ、いえ!別に。」

准さんはどもる私にくすりと笑うと手を引いた。

「ちょっとこっち来て。」

「?」

准さんに手を引かれるままに着いていくと、そこは小さな湖があって小洒落たガボゼが建てられていた。
ガボゼの下にはこれまた可愛らしベンチが設置されていて、准さんはそこまで行くと座った。

「ほら、アリスも座りなよ。気持ちいいぞ、風が。」

「は、はい。」

私は言われるがままに准さんの隣に座る。
たしかに准さんの言う通り、気持ちのいい風が吹いていた。
涼しい風が気持ちよすぎて思わず私は目を閉じる。

「気持ちいい。」

「気にいると思ったよ。」

私は目を開いて辺りを見渡した。
こんなにかんじのいい場所なのに、人が誰もいない。
それが不思議だった。

「ここってさ、ちょっと入り組んだ場所にあってあまり人が来ないんだって。」

「へえ。そうなんですね。」

と、返事をして気がついた。

(2人きり!!!)

自然公園だからと思って油断をしていた。
まさか2人きりになるだなんて!

付き合いだしてからの外出は犬の散歩だったので2人きりになることはまずなかった。
今日も自然公園だから人も多いだろうし、2人きりになるなんて予想していなかった。

「アリス。」

「!」

ベンチに置いた手の上に准さんが不意に手を重ねてきた。
驚いて手を引きそうになったけど、准さんが握りしめてそれはできなかった。
准さんは私の手を引き、抱き寄せる。

「緊張してる?」

「あ、えっと…。」

正直わかっているならやめてほしいと思った。
顔が異常なまでに熱くて、絶対に顔をあげたくないと思った。
でもそんなことが許されるはずがない。

「1ヶ月も我慢したからキスぐらいしていいだろ?」

「准さん…。」

准さんは私の頬に手を添えて顔をあげさせると静かにキスを1つ落とした。

「っ。」

「アリス、可愛い。もっとしたくなる。」

そう言ってもう一度准さんがキスをしようとした時、私は背後に人の気配を感じて思わず准さんの胸を押した。

「ダ、ダメです!こ、こんなところで!」

「ちぇ。」

准さんは意外にもすんなり引き下がってくれた。
私はそれにホッとする。
キスが嫌なわけではない。
正直まだ慣れないので心臓に悪すぎるだけだ。

「まあ、これから何度でもできるし。さ、散歩の続きに行こうか。」

「もう、准さんってば…。」

立ち上がると准さんは普段通りの人懐こい笑顔を浮かべて手を差し伸べてくれた。
私はちょっと困った顔をして、それでもやっぱり准さんの手を握り返した。










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2018.11.07
遂に書いてしまいました。
散歩道の番外編。やっちまいましたよ。
これを機にちょくちょく書いていきたいと思います。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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