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「おぎゃー!おぎゃー!」





負けられない闘い ver.二宮隊





「「「……。」」」

「お、おはようございます。」

ある日の朝、二宮隊の隊室に赤ん坊の鳴き声が響いた。
赤ん坊を連れてきたのは二宮隊スナイパーのアリス。18歳。
隊室にいた二宮、犬飼、辻はそれを何とも言えない顔で見つめた。

「アリス、何だそれは。」

「あ、いえ、えっと。」

最初に口を開いたのは、隊長の二宮だった。
アリスは赤ん坊を抱いたまま、なんと説明しようかと言葉をつまらせた。

「え、何?アリス、子供いたの?」

「そんなわけないでしょ!澄!」

真顔でそんなことを言う犬飼に顔を赤くして怒るアリス。

「弟さんですか?でもそれにしては年が…。」

「あ、ううん。えっと…。」

辻の言葉にアリスは冷静になり状況を説明した。

連れてきた子供は知り合いの子供だ。
この子の両親とアリスの両親は仲が良く、みんな医者をしている。
そんな中急遽この子の両親は他県にオペをしに出張することになり、赤ん坊のこの子を預かってもらう手はずが取れずアリスの家で預かることになった。
しかし困ったことにアリスの両親も緊急のオペが入り、急遽病院へと出勤。
一人っ子のアリスがこの子の面倒をみることになったのだが、今日は訓練や防衛任務が入っている。
二宮に怒られるかもと思ったが、連れてくる意外にアリスには選択肢はなかったのだ。

「だからあの、二宮さん、今日の防衛任務と訓練なんですけど…。」

怒っているのかどうなのかわからない、そんな表情の二宮にアリスは子供を抱いたまま恐る恐る見上げる。
二宮はふうとため息をつく。

「そんなにビクつくな。別に怒っていない。」

「じゃあ!」

「ただし隊室では預かれないぞ。防衛任務の時に氷見の邪魔になる。」

「はい!ありがとうございます!」

アリスは子供に良かったねぇと笑いかける。
すると子供も笑い返して、キャッキャッと声を上げて喜んでいる。

「でもアリス先輩だけだと大変なんじゃ?先輩確か下に兄弟いませんでしたよね?」

「あ、うん。そう、かも。」

辻の言葉に急にアリスは不安になった。
この子の面倒は何度かみたことがあるし、子供が好きだから問題はない。
だが父と母が帰ってくる夕方まではまだ大分時間がある。
それまで1人でずっとこの子の面倒なんてみられるだろうか。

「じゃあ俺らも手伝います?」

犬飼の提案に二宮は顔を強張らせる。
アリスと同様1人っ子の二宮は子供の相手なんかしたことがない。
そして本能でこの目の前にいる小さな存在が得意ではないと感じている。

「犬飼、何を勝手なことを…「いいじゃないですか。」

二宮が何とか子供の面倒を回避しようとした時だった。
隊室の奥からオペレーターの氷見が出てきた。
事情は把握している様子。

「全員では難しいですが1人ぐらい平気なのでは?」

氷見はそう言ってアリスの抱っこする子供の頭を撫でる。
子供はキャッキャとまた声を立てて笑った。

「馬鹿を言うな。これ以上人員は避けん。」

二宮の厳しい言葉にアリスはシュンとする。
だが自分の事を許してくれるだけでもありがたい状況なのだ。
これ以上わがままを言うのはよくない。
アリスはその辺りはきちんとわきまえていた。

「そうですか。残念ですね。」

氷見はそう言うと3人にだけ聞こえるようなトーンに声量を下げる。

「折角、アリス先輩!と、2人!きりになれるのに。子供はいますが。」

表情を変えずにそう言う氷見の言葉に3人はハッとした。

(確かに氷見の言うことは一理ある。アリスと2人きりというのはそうそうない。)

(いっつも二宮さん邪魔するもんなー。確かにチャンス。)

(アリス先輩と2人きりなんて、緊張して吐きそう。でもこんなチャンス二度とないかも。)

3人は互いを交互に見回した。
アリスはこの二宮隊のオアシス。
クールな氷見と違って、暖かくいつもこちらを気にかけてくれる。
そんなアリスのことが3人はそれぞれ好きなわけだが、それをお互いが認識しているためもちろん妨害合戦の毎日だ。
そうすると氷見の意見は確かに子供付きではあるが、アリスとほぼ2人で話ができる状態になるのだった。

「ううん、いいのひゃみちゃん。
他に一緒に見てくれそうな人を探すよ。
荒船くん、さすがにアンパンマンの映画とかは持ってないよねー。」

そう言ってアリスは他の隊の友達に連絡を取ろうと端末を取り出した。
それを二宮は手を添えて制した。

「二宮さん?」

「待て、アリス。他の隊に迷惑は掛けられん。人員はウチで割こう。」

「え、いいんですか?」

「俺はお前の頼みは断らん。」

「あ、ありがとうございます!」

二宮の言葉にアリスはパアッと笑顔を見せる。
先程ダメだと言っていたのはどこの誰だったかと問いたいが、犬飼と辻は言葉を飲み込む。

(面白くなってきた。)

氷見は皆に見られないように背中を向けてフフッと笑った。

「では誰がアリス先輩と残るか決めましょう。
そうですね、折角なので模擬戦で決めてはいかがですか?
時間もありますし、子供も案外退屈せずに済むかもしれません。」

氷見は日々アリスを取り合う隊員達の姿を見て楽しんでいる。
それは決して嫌な意味ではなくて、生暖かい目で日々を見守っているという意味での話だ。

「模擬戦か。いいだろう、面白い。」

「辻ちゃん、頭から協力して二宮さん消そう。その後2人で勝負決めよう。」

「わかりました。でも不意打ちとかしないでくださいよ。」

自信満々の二宮に、密かに共闘の約束をする犬飼と辻。
そんな3人に構わず、子供に向かって良かったねぇと微笑むアリス。

(誰になってもコレはきっと面白いわ。)

氷見にうまく乗せられていることにも気づかず、今二宮隊の負けられない闘いの火蓋が切って落とされた。










Next
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2018.12.08
また始まってしまいました、負けられない闘いが。
今度は二宮隊です!
氷見さんはこの状況に火をつけて遊んでいます。




※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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