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「あー、やっちゃったなー。」





after the 負けられない闘い ver.太刀川隊 side K.I





「さ、出水くん!案内してもらおうか!」

(何でこんなことに…。)

本日午前中の出来事だった。
突然現れた唯我 アリスという女性は、自分の弟である唯我 尊の扱いついて異議申し立てを行った。
自分よりも弱いやつに唯我をいじめる権利はないと。
アリスの傲岸不遜な挑発に乗り、太刀川と出水はそれぞれアリスと模擬戦を行い、負けたほうがアリスが満足するまで今日1日三門市を案内をすることになった。
唯我曰く、アリスを満足させられるのはどんな大企業の御曹司にも無理だとのこと。

そんな中行われた模擬戦で太刀川は辛くも負けを逃れたが、出水は一重の差でアリスに負けてしまった。
それほどまでにアリスは実力があったのだ。
そうと知っていれば攻め方はいろいろあっただろうに、後の祭り。
約束は約束なので、出水はアリスに三門市を案内することになったのだった。

「俺防衛任務あったのに。」

「君が負けるからいけなのよ。」

今日の午後太刀川隊は防衛任務があった。
だが、出水はアリスとの勝負に負けてしまったので、アリスに1日付き合う羽目に。
代役は太刀川が探すこととなり、出水はアリスに引きずられる形で町に出てきたのだ。

「No.1射手も大したことないね〜。」

「もう1本やってたら俺が勝ってました!」

負けず嫌いの出水は勝ち誇ったアリスに言い返す。
アリスはそんな出水の頬をぷにぷにとつつく。

「ふふふ。それは負け惜しみだよ、出水くん。」

そうやって笑うアリスにため息をつく。
アリスを町に案内するのはいいが、自分はまだ高校生だ。
対してアリスは21歳と行っていれば大学生だ。
アリスが満足できるような案内が自分にできるだろうか。

「俺、高校生ですし、アリスさんの満足するような案内できるか知りませんよ?まだ太刀川さんのほうが良かったかも。」

そうして出水は財布を取り出して中身を見る。
A級で活躍しているとは言え、自分はまだ高校生だ。
年上の女性をエスコートできるだけの持ち合わせはない。

「あ、出水くん。お金の心配は無用だよ。君が普段遊んでるところとか教えてよ。」

「つまんなくても知らないですよ?」

「君のエスコートがつまらないはずがないよ。」

そう言って微笑むアリスに出水は頬を赤くした。





出水は普段学校帰りや任務帰りに友達や仲間と立ち寄って遊ぶ場所を案内したりした。
出水は最初に言ったとおり、アリスを楽しませられるか不安だったが、本人は存外楽しそうにゲームセンターで遊んだりしていた。
パンチングマシンで店の最高記録を更新したり、音楽ゲームでリズムに翻弄されていたり、それはまるで子供のようだった。

「アリスさん、楽しそう。」

「ん?あ、ごめんごめん。私ばっかり。」

今度はシューティングゲームでムキになっているアリスを見て、出水は声をかけた。
それにアリスは照れたように笑った。

「こういうところ来るの初めてでね。」

「え、ゲーセン初めてなんですか!?」

「うん。向こうにもゲームセンターはあったけど、忙しくて行ったことがなくて。」

「へー。唯我は・・あ、弟のほうはそんなかんじじゃないのに。」

出水はいつも泣きながら弁護士を呼んでくれと叫んでいる唯我を思い浮かべて首を傾げた。
同じ家の姉弟なのに、こうも生活が違うとは。
確かに唯我を初めてゲーセンに連れて行った時も感動していたが、アリスはそれ以上のように思える。

「あ、そうだ、出水くん。プリクラというものを撮ってみたいんだ。」

「いいですよ。確か1個上の階です。行きましょ。」

「うん。」

その時シューティングゲームのゲーム画面に全面クリアの新記録が更新された。





「へー、これがプリクラか。目がすごくキラキラしているね。」

「これでもおとなしめの機種選んだんですよ。もっとすげえのとかありますから。」

「これよりももっと?それはすごいね。」

プリクラを撮った2人は近くの公園のベンチに座ってアイスを食べながらプリクラを眺めていた。
目がキラキラに加工されたプリクラを見て、アリスはとても嬉しそうな、楽しそうな顔をした。

「出水くん、今日はありがとう。とても楽しかったよ!」

「こちらこそ。俺も久しぶりに遊びました。」

そう言って出水もプリクラに視線を落とす。
至近距離まで顔を遠慮なく近づけてくるアリスにドキドキしなかったとは言えば嘘になる。
というよりも、今日はドキドキしっぱなしだ。

そう思うと出水はプッと小さく吹き出した。

「どうしたの?出水くん。」

突然笑いだした出水にアリスは首を傾げる。
すると出水はこう言った。

「いや、何だか今日って案内したって言うよりは…。」

そう、これではまるで。

「デートみたいでしたね。」

「え?」

出水の言葉にアリスは一瞬言葉が出なかった。
そして出水と同じようにプリクラを視線に落とすと。

「っ!」

突然顔を真っ赤にした。
今度は出水がそれに対して目が点になる。
こんな反応は全く予想していなかった。

「あの、アリスさん?」

「っ!と、年上をからうものじゃないよ!出水くん!」

そう言って食べかけのアイスを一気に口の中に放り込む。
ややや?この反応はもしかして、と出水はアリスに尋ねる。

「アリスさん、もしかしてデートとかしたことない?」

「ばっ!馬鹿を言うんじゃない!デ、デートぐらいしたことあるさ、デートぐらい…。」

そう言いながらますます顔を赤くするアリス。
それは先程まで隣に座っていた年上の女性ではなく、まるで同い年か年下の少女のような反応だった。
出水は何故かそれが嬉しくなる。

「そうですよね、アリスさんならデートぐらいしたことありますよね。」

出水ももう言ってアイスの最後の一口を口に放り込む。

「その通りさ。私はこれでも君よりも年上なんだ。当たり前じゃないか。」

「それは失礼しました。」

出水はベンチから立ち上がると、顔を赤くしてうつむかせるアリスの手を引いた。

「!」

「じゃあ、送りますよ。手ぇ繋いで帰りましょ?」

「なっ!」

出水はアリスの答えなど聞かずにそのまま手を引く。

「出水くん!あまり年上を…。」

「からかってませんよ。」

アリスのほうを振り返る出水は不敵に笑った。





「本気だったらいいんですよね?」





アリスは顔を赤くしたまま視線を逸して、出水のその言葉に返事をしなかった。










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2018.11.07
side 出水くんです。
本気だったらいいんです。



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