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「クッソ、マジかよ。」





after the 負けられない闘い ver.太刀川隊 side K.T





「さ、太刀川くん!案内してもらおうか!」

(何でこんなことに…。)

本日午前中の出来事だった。
突然現れた唯我 アリスという女性は、自分の弟である唯我 尊の扱いついて異議申し立てを行った。
自分よりも弱いやつに唯我をいじめる権利はないと。
アリスの傲岸不遜な挑発に乗り、太刀川と出水はそれぞれアリスと模擬戦を行い、負けたほうがアリスが満足するまで今日1日三門市を案内をすることになった。
唯我曰く、アリスを満足させられるのはどんな大企業の御曹司にも無理だとのこと。

そんな中行われた模擬戦で出水は辛くも負けを逃れたが、太刀川は一重の差でアリスに負けてしまった。
それほどまでにアリスは実力があったのだ。
そうと知っていれば攻め方はいろいろあっただろうに、後の祭り。
約束は約束なので、太刀川はアリスに三門市を案内することになったのだった。

「俺防衛任務あったのに。」

「君が負けるからいけなのよ。」

今日の午後太刀川隊は防衛任務があった。
だが、太刀川はアリスとの勝負に負けてしまったので、アリスに1日付き合う羽目に。
代役は出水が探すこととなり、太刀川はアリスに引きずられる形で町に出てきたのだ。

「まあ、君も強かったけど、私のほうが一枚上手だったってことね。あ、君を倒したから私が今日から攻撃手No.1ってことかしら?」

「1回勝負に買ったぐらいで威張んな。」


ガンッ!


ボソリと太刀川がそう呟くと、アリスのげんこつがいきなり飛んできた。

「君、20歳でしょ?私は21歳。年上はもっと敬いなさい。」

「年下にすぐそんなにすぐ暴力振るうやつなんか敬えるか!」

太刀川とアリスはギャーギャー言いながら町を歩く。
その様子に町の住人はくすくすと笑う。
2人は気がついていないが、周りの人間からしたら仲睦まじい様子に他ならない。
喧嘩するほどなんとやらだ。

「約束は約束でしょ。さ、太刀川くん。案内してよね。」

「へいへい。」

太刀川はそう言って渋々アリスに町の案内を始めた。





そうは言ってもいつもボーダーでランク戦漬けの太刀川は町を遊び歩くことも少なく、大した案内ができない。
そのことを知ったアリスは盛大に溜息をつき、とりあえず本屋に立ち寄り町のガイドブックを購入した。
そして行きたい場所を提示し、太刀川に車を運転させて徹底的に案内させた。

「あー、楽しかった!」

アリスの行きたい場所へ一頻り行き終えたころには時刻は夕方近くになっていた。

「太刀川くん、今日はありがとう!」

アリスは不意に太刀川に笑顔を見せた。

「まあ、俺も楽しかったし、別にいいけど。」

思えば今日は太刀川はアリスに翻弄されっぱなしだ。
性格はやや難ありだが、顔もいいし、笑った顔は特に可愛い。
実際今日の街案内の間太刀川はドキドキさせられる場面が多々あった。

(唯我の姉ちゃんがこんなに可愛かったとはなー。)

そう言って助手席に座るアリスを見た。
それに気がついたアリスが首を傾げる。

「何?太刀川くん。」

「何でもねえよ。」

「変なの。」

顔を赤くしてプイッとそっぽを向く太刀川に、アリスはさらに首を傾げた。

「あ、そうだ、太刀川くん。次いくところで最後にしよう。」

「まだ行くのかよ。どこ行きたいんだ?」

太刀川はアリスの膝に上からガイドブックを取り上げるとパラパラめくった。
今日1日で周れそうなところはもう大体周った。
するとアリスが太刀川の持っているガイドブックをそっと取り上げた。

「最後は君がよく行く店を教えてよ。女の子が満足するようなお店。」

「はー?だから俺はあんまりそういうのは・・・。」

そこまで言って太刀川はハッとした。
唯一女の子を連れて行っても問題なさそうな店が太刀川の行きつけであったことを思い出したのだ。

「どう?」

「あー、一箇所だけ、多分。」

「本当?変な店だったら怒るよ?」

「それは勘弁。」

太刀川はそういうと車を走らせた。





「へー、こんなところ来るんだ、太刀川くん。」

アリスは通された店の中を見渡して感心したように言った。
太刀川は目の前でその言葉に不服そうに返した。

「意外で悪かったな。意外で。」

「そんなに怒らないでよ。」

アリスは笑って、メニュー表を開いた。

ここは三門市の商店街にある喫茶店。
店内の内装は純和風になっており、今座っている座席も小さくはあるが、畳の敷かれた個室だ。
長く外国暮らしだったアリスはそれだけでも高評価だったが、太刀川がこのような店を知ってるのは確かに意外だった。

「前に時枝に教えてもらったんだよ。あ、時枝っつーのは他の隊の後輩なんだけど、あいつも餅好きでよ。」

「餅?」

嵐山隊の時枝の好物の1つに餅がある。
これは太刀川との共通点である。

太刀川は無類の餅好きで、七輪で上手に餅を焼くこともできるぐらいだ。
だが餅が好きすぎて、ボーダー本部基地をきな粉だらけにしてしまったので、基地内ではきな粉が禁止されたというエピソードもある。
アリスはそれに笑い転げた。

「そんなに笑うな。」

「あ、ごめん、ごめん。でもさ、お餅ってお正月に食べるものじゃないの?」

「今はそうでもねえの。餅はな、立派なスイーツだぞ、スイーツ。」

「君の口からスイーツとはまた面白いね。」

「お前喧嘩売ってんのか?」

確かにアリスの言う通り餅と言えばお正月に食べる印象が強い。
たしかにそれは間違っていないし、実際に餅はお正月ぐらいしか食べないという人も大勢いるだろう。
しかし今は太刀川の言う通り、スイーツなどにも積極的に取り入れられ、女性の間で人気が急上昇している。

「ごめん、ごめん。じゃあさ、オススメとかがあるんでしょ?私はそれにするよ。」

「おう。そうしろ。」

太刀川はそう言うと店員を呼び、オススメのスイーツを2人分注文する。
程なくしてやってきたそのスイーツにアリスは感激する。

「これお餅使ってるの?嘘でしょ?」

「食ってみろよ。ここの餅は最高だぞ。」

そして一口アリスはそれを口に運ぶ。
その瞬間に顔がパッと笑顔になった。

「おいしい!おいしいよ、太刀川くん!たしかにお餅なんだけど、こんなの食べたことがないよ!」

今日の中で一番とびきりの笑顔を見せたアリスに太刀川は顔を赤くする。

「そうかよ。」

「うん、本当においしい。太刀川くん、ありがとう!」

「ああ(クッソ、何でこんなに可愛いんだよ!)」

そんな太刀川の気持ちなどつゆ知らず、アリスは満足そうにスイーツを頬張るのだった。





「太刀川くん、私出すよ?」

「馬鹿野郎。さすがの俺でも丸1日女のお前におごられてたまるか。」

今日1日遊び周ったが、その際にかかった費用は全てアリス持ちだった。
アリス曰く、脅迫じみてはいたが、町の案内をお願いしたのはアリスのほうだ。
お金を出すのは当然のこと。

しかし、さすがの太刀川も1日女性であるアリスに全て奢られたとあっては男がすたる。
それにこの店だけは自分が自信を持って案内したお店なのだ。
最後ぐらいは自分だって格好つけたい。

「ふーん、案外男らしいところもあるんだね。」

アリスはそう言って先に店の外に出た。
そして会計をしてくれた店長はにっこり笑った。

「太刀川くん、彼女連れてくるとは珍しいね。」

時枝にこの店を教えられてから通い詰めている太刀川はすっかり店長とも顔なじみだった。
その店長に言われて太刀川は慌てる。

「ばっ!彼女じゃねえよ!」

「え?違うの?いい雰囲気だったじゃないか。」

「違えって!!」

そして太刀川は店の外で待つアリスに視線を向ける。
アリスはそれに気が付き、太刀川に笑いかける。

「ほら、イイ感じじゃないか。」

「うるせえな。違うっての。」





「今はな。」





そうやって赤い顔で呟く太刀川に店長はにっこり笑って、割引券を2枚くれた。










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2018.10.24
太刀川くん君のキャラクターがわからないよ。



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