ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


闘いは突然やってくる。





負けられない闘い ver.太刀川隊





「断固としてお断る!!」

その日太刀川隊からいつもの悲鳴が聞こえていた。
声の主は太刀川隊所属のガンナー唯我 尊。
A級1位の太刀川隊に所属しているにも関わらず、その実力はB級にも劣ると言われる彼は、親のコネで上位のチームに入りたいと言い、城戸が太刀川隊に放り込んだお金持ちのボンボンだ。
だが太刀川隊に所属している人間がそんな金だとか権力に気を遣ったり屈するはずもなく、唯我は日々厳しく育てられているのであった。

「嫌です!理不尽です!!」

「世の中は理不尽なことだらけだぞ。」

「そうそう、諦めて受け入れろ。」

太刀川と出水がビシバシ鍛えている中で、無理難題を言いつけられているのか、今日も理不尽だとのたうち回りながら泣いている。

「誰か助けてえ!!」

唯我がそう叫んだ時だった。


ドゴオオォォ!!!


「「「!?!?」」」

その時爆煙とともに太刀川隊の隊室の扉が吹き飛んだ。
もちろん中にいた太刀川、出水、唯我は呆気にとられて動けなかった。

「え、何?」

出水がやっとそうやって呟いた時、ジャリっと誰かが入ってくる音が聞こえた。

「ここが太刀川隊の隊室?」

噴煙から姿を表したのは何とも美しい黒髪を携えた女性だった。
基地内では見たことがない顔で、その端正な顔立ちから太刀川も出水も思わず言葉を忘れる。
だが太刀川はハッとした。
そのインパクトと美しい容姿から一瞬何も言えなかったが、ここは自分の隊室だ。
それをいきなり扉を破壊して入ってきたのだから抗議の1つや2つ言ってやらねば隊長としての面目がない。

「あんた誰?」

「ああ、お構いなく。」

太刀川がやっとそう言うと、女性は一言そう返事をしてあたりを見回した。
そこで女性は部屋の隅で震えている顔面蒼白の唯我を見つける。

「あ、いた。」

その声に唯我はビクリと震えた。
太刀川と出水はそこでようやく唯我の異変に気がついた。

「何?お前知り合い?」

「あ、いや、えっと・・・。」

出水の言葉に返事をしようとした時だった。

「久しぶり、尊!!元気してたー!?」

その女性はいきなり唯我をその豊満な胸の中にしまいこんで振り回した。

「わー!やめっ!ちょっ!」

「会いたかったぞー!」

一頻り唯我を力の限りに振り回すと、その抱きしめる力からすっぽ抜けたのか唯我はその女性の手を離れ、太刀川と出水の目の前にどさりと落ちた。

「あ、ごっめーん!痛かった?」

「痛いですよ!」

頭にできたたんこぶを擦りながら涙目で唯我はこう言った。

「もう少し優しくしてくださいよ!アリス姉さん!!」

「「姉さんん!?」」

唯我の言葉に太刀川と出水は思わず声をあげる。

「あ、唯我 アリスでーす、宜しく!」

するとその女性は先程までの冷ややかな表情を消してニッコリと笑った。

「尊がいつもお世話になってます。」

そしてその長い髪を揺らしながら頭を下げた。

「唯我、お前姉ちゃんいたの!?」

「めっちゃ美人じゃねえか!」

太刀川と出水は唯我を引き寄せてヒソヒソと詰め寄る。
その様子を見て、アリスと呼ばれたその女性は眉根をひそめる。

「ちゃんと紹介しろ!」

「好印象になるようにな!」

「いや、あのお2人とも騙されないほうが…。」

突然現れた唯我の姉のアリスは、唯我とは全く違っていて、財閥令嬢に相応しい容姿を持ち合わせていた。
太刀川と出水はそれに一目で恋をする。
それに対して唯我は以前顔面蒼白なままだった。

「尊!!」

「は、はいいぃ!!」

唯我は名前を呼ばれてすぐさま立ち上がると、アリスのもとへと駆け寄り姿勢を正した。

「そう言えば聞いたわよ。あんた父さんに言って無理やりこの隊に入れてもらったんだって?」

「あ、いや…。」

先程まで弟の唯我との再会を喜んでいたアリスは態度が一変して厳しい空気が辺りに漂った。
そして次の瞬間。

「この馬鹿弟がー!!!」

「ふべえ!!」

「スコーピオン!?」

「え、ボーダー隊員!?」

アリスは懐からトリガーを取り出すと、唯我をスコーピオンで殴り飛ばした。
飛ばされた唯我は壁に激突して意識を失う。

「あんたねえ!実力もないのに父さんのコネで人様に迷惑を掛けるなって何度言わせればわかんの!?ちょっと聞いてるの!?尊!!」

既に意識のない唯我の胸ぐらを掴み、脳みそが溢れるのではないかと思うぐらいに唯我を揺さぶるアリス。

((唯我の姉ちゃん、怖えぇ!!))

先程までの印象が一気に書き換わってしまう。
太刀川と出水は震え上がる。

唯我 アリス。21歳。
ポジション、アタッカー。主な使用トリガー、スコーピオン。
コネで入隊した弟の唯我とは違って、姉のアリスは正式な試験や手続きを経てボーダーに入隊。
語学が堪能だったため、主に海外派遣チームで業務に準じていた。
そのため本部基地で面識を持つものはほぼおらず、唯我の姉の存在は今まで露見しなかった。

目覚めた唯我からそのプロフィールを聞いて、何だ、弟と違って随分とちゃんとした人なんだと出水は思った。

だが。

「そういえば、私がここに来る前に尊の悲鳴が聞こえてたわね。いつもそうなの?」

「あ、いや…。」

そうは言っても大企業の令嬢だ。

「ふーん。気に入らないわね。」

アリスは太刀川と出水を見てこう言い放つ。

「尊をいじめていいのは姉である私だけよ。私より弱いやつなんて論外。」

自信家で傲岸不遜な態度は、令嬢のそれだった。

「太刀川くんと出水くんって言ったわね。ちゃんと強いわけ?」

まるで品定めするような目で太刀川と出水を見るアリス。
だが強さに関しては、A級1位の太刀川隊だ。
馬鹿にされて黙っているはずがない。

「言うじゃねえか。」

「ホント言ってくれますね。」

太刀川と出水のこめかみがヒクリと動く。
その様子にアリスはニヤリと笑う。

「そういえば一応攻撃手1位と射手トップなんだっけ?そんな風には見えないけど。」

「あ、あの、アリス姉さん!そのへんで…。」

「尊は黙ってなさい。」

後で自分が八つ当たりされるのは目に見えている唯我は何とか止めようとしたが、時既に遅し。
両者の間では激しく火花が立っていた。

「そんなに言うなら模擬戦しようぜ?」

太刀川の提案にアリスが引き下がるはずもなく。

「いいわね。あ、そうだわ。私三門市に来るのかなり久しぶりなの。負けたほうは今日1日私を満足させるまで町を案内しなさい。」

「やれるものならやってみてください。」

そう今ここに太刀川隊の負けられない闘いが始まろうとしていた。










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2018.10.21
始まってしまいました、太刀川隊の負けられない闘いが…。
書くかわからないとか言いながらばっちり書いちまいました。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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