ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


「迅さん、あたしボーダー辞める!!」





依存な2人が通ります





「はあ、そりゃまた何で?」

目の前で突然ボーダーを辞めると声高らかに言うアリスに迅はさして興味なさそうに返事をした。

「だっておかしいでしょ!?あたしは月くんの子守じゃないんだよ!」

アリスはバンバンと机を叩いて怒りを露わにする。

「いやー、でもさ。天羽ってアリスちゃんの言うことしか聞かないじゃん?」

「だからってどうしてあたしがオペレーターとして月くんの面倒みないといけないの?!」

アリスはそう言って部屋の片隅で昼寝をしている天羽を指差した。

アリスの怒りの矛先の“月くん”というのは天羽 月彦のこと。
天羽はボーダーに所属するブラックトリガー使いだ。
つまり迅と同じくS級隊員。
そしてアリスはその天羽の専属オペレーターをしていた。

「大体迅さんはオペレーターついてないじゃん!S級なのに!!」

「いや、ほら、俺はエリートだからさ。」

アリスの怒りはどんどんヒートアップしていくが、迅の態度は変わらず終始落ち着いている。
というより興味なさそうに見える。
先程から一定のリズムで減るぼんち揚がその証拠だ。

「月くんってば手がかかるんだもん!いつもフラフラ何処か行っちゃうし、戦闘でも言うこと聞かないし!」

「うんうん、天羽ってそういうとこあるよねー。」

「そうでしょ!?だからあたし今度こそボーダー辞めてやるんだから!」

天羽がすぐそこで寝ているというのにアリスは御構い無しだ。
というか、天羽も天羽でこの怒声の中よく眠れるなと迅は感心した。

「止めたって無駄だからね、迅さん!」

アリスはそう言って腕を組んでプイッとそっぽを向いた。
迅は時計を見上げる。

(そろそろいいかな。)

迅がここに来てアリスから天羽の話を聞かされ始めてから30分ほど経過した。
これだけ鬱憤を吐き出させればしばらくはまた持つだろう。

「止めはしないよ。アリスちゃんは優秀だから残念だけど、辞めるのは個人の自由だし。」

「そうだよね!じゃあ早速辞表を…。」

「あーでも…。」

迅のその声にアリスは紙を取り出そうとした手を止めた。

「そうしたら天羽のオペレーター別の人探さないとなー。」

アリスは持っていたシャーペンをカタリと落とす。
その反応を見て迅は更に続けた。

「アリスちゃんほど天羽が懐いてた人っていなかったから大変だなー。まあでも新しい人来たら天羽もその内懐くだろうし。こっちのことは気にしなくて大丈夫だよ。」

と、迅はここまで言えばもういいだろうと口を閉じた。
目の前のアリスが1人で百面相をしている。
泣いたり怒ったり悔しがったり。
迅は気にせずぼんち揚を食べる。
そして一頻りアリスの顔の変化が終わったところで、そろそろかなと迅は手を止めた。

「や、待って、迅さん!」

「何?アリスちゃん。」

「あたし辞めるのやめてもいいよ。」

「どうして?」

アリスは天羽をチラリと見た。
そして照れたように顔を赤くしながら、だが態度にはそれを出さずに言った。

「ほ、ほら、月くんの面倒見るのって大変でしょ?あたしじゃなきゃできないっていうか。あたしが一番適任だと思うの、他の人より。」

「うーん、まあ、そうかな。」

「でしょ!?だからあたし月くんのオペレーター続けてもいいよ?」

先ほどまでの怒りはどこへ行ったのか。
迅はため息をつく。
と、そこへ天羽がのそりと起き上がってフラフラとアリスに近づいてきた。

「アリス、辞めちゃうの?」

まだ寝ぼけているような顔をして、目をこすりながらそう言う天羽にアリスは立ち上がって飛びつく。

「月くんを置いて辞めるわけないでしょ!あたし以外にこんなに月くんのお世話できる人なんていないんだから!」

アリスはそう言って天羽にグリグリと頭を擦り付ける。
天羽は安心したようにアリスを抱き返した。

「よかった。アリスがいなくなったら困るよ。アリス以外のやつとかいらないし。」

「あたしもよ!月くん以外のオペレーターになんかならないんだから!」

顔を合わせて、ねー!とニコニコと話をするアリスと天羽を見て、迅はため息をついて立ち上がる。

「よかったね。じゃあ俺もう行くね。」

「あ、うん、迅さん、まったねー!」

「お疲れ様ー。」

部屋を出ると迅の端末が音を立てて着信を知らせる。
迅はディスプレイを見て再びため息をつく。

「はい、こちら実力派エリート迅でーす。うん、終わったよ。まあこれでまアリスちゃんしばらく持つでしょ。っていうかボス毎回アリスちゃんなだめるために俺呼ぶのやめてよ。ラブラブオーラで俺苦しいって。そ。はーい、了解。」

通話が終わると迅は次の現場へと足を向けた。

「月くん、何かおやつ食べたくなーい?」

「うーん、今はいいかな。それよりアリス膝枕してよ。もう少し寝たい。」

「いいよ!」

天羽とアリスはお互いなくてはならない存在だ。
それでもアリスのストレスは徐々に溜まっていき今日のように爆発することが偶にある。
アリスはオペレーターとして優秀だし、何より天羽が本当にアリスの言うこと以外を聞かないものだから、厄介極まりない。
その度に実力派エリートの迅が上からの命令でアリスのガス抜きをうまいことして辞めないようになだめている。
天羽はアリスが好きで、アリスは天羽が好きなのに。
こんなにも依存し合っているのに、なんと付き合っていないと言うから驚きだ。

「あたし、ボーダー辞める!!」

そしてまた今日もお馴染みのセリフが基地内にこだまするのだった。











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2018.10.16
20,000打企画、いつみ様からのリクエストです。
天羽くんで依存オペレーター甘々というリクエストでした。
お待たせしてすみませんでした。
でも、これ…依存も甘々も中途半端のような…。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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