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「ついに勝ったぞ!」





after the 負けられない闘い ver.風間隊 side R.U





「あ、歌川くん!お待たせー!」

天気の良い日曜日。
三門駅前で佇む風間隊の歌川のもとに、同じく風間隊のアリスが駆け寄る。
約束の時間通りにアリスは来たのだが、その場に歌川の姿は既にあった。
アリスは待たせてしまったかと彼の姿を見つけて小走りで走っていった。

「全然待ってないよ、今来たところ。」

実は30分も前に来ているのに歌川はそう言って爽やかに笑った。

先日風間隊の3人で行った乱戦形式の模擬戦。
主に歌川と菊地原が風間に挑戦するのだが、もう何十回、何百回と挑戦したかわからない。
何度風間にねじ伏せられようとも不屈の精神で立ち向かった結果、ついにその日は訪れた。
歌川が勝利したのだ。
その時の歌川は両手を握りガッツポーズをして声高らかに喜んだ。
それだけ歌川にとってこの模擬戦は重要だったのだ。
そう、この模擬戦はただの訓練ではない。
これはアリスに告白する権利を勝ち取るための闘いだったのだ。

「今日は付き合ってくれてありがとうな。」

「ううん、お兄ちゃんの誕生日プレゼント選びならいくらでも付き合うよ!」

歌川は風間の誕生日プレゼントで悩んでいるので買い物に付き合ってほしいと言ってアリスをデートに誘った。
アリスは深くは考えず大好きな兄のためのプレゼント選びなら喜んでと二つ返事した。

2人は待ち合わせ場所から三門ショッピングモールへと移動する。
誕生日プレゼント選びをうまく挟みながら、歌川は綿密に練ってきたデートコースを満喫する。
間にちょくちょく風間のプレゼント探しをしているのでアリスは普通にデートをしていることに全く気がついていない。

「あ、歌川くん。この雑貨屋さん寄っていいかな?」

「ああ、いいよ。」

アリスは新しくできた様子の雑貨屋さんの入り口で足を止めた。
何か惹かれるものでもあったのか、アリスは店内を興味深そうに見て回る。
ラインナップを見るにここは犬関連の雑貨やグッズを取り扱う店のようだった。
犬好きの歌川としてもこの店はなかなか見応えのある店だった。

「アリス、何見てるんだ?」

店内を一周して入り口付近に戻ってくると、アリスはとある一角を占領している商品に見入っていた。
歌川も側に寄り隣に立ってそれを見る。
アリスが見ていたのは、可愛らしくデフォルメされた犬のキャラクターが大きなハートを抱きしめて幸せそうな顔をしているストラップだった。
キャラクターの犬は帽子をかぶっており、それが何種類か色がある。
一押し商品なのか、店の外からも見えるように展示されており、結構な数が並んでいる。

「これ、すっごくカワイイ。」

「たしかに。」

アリスは目をキラキラさせてそのストラップを見ていた。
そんなアリスが可愛らしくて歌川は思わず笑みを零す。

「買ってやるよ。色は何色がいい?」

「えっ?!」

突然の歌川からの申し出にアリスはブンブンと両手を振る。

「そ、そんな悪いよ!そんなつもりで見てたんじゃないし!」

「いいからいいから。今日付き合ってもらったお礼。ほら何色にする?」

お礼に、と言われると今度は断るのが逆に申し訳ない。
と、アリスは思うだろう、というのは日頃の付き合いで歌川も心得ている。
そしてその思惑通りアリスはじゃあ、と言ってその内の一個を指差した。

「青がいいな。」

「了解。買ってくるから待ってて。」

歌川がアリスが指差したストラップを持ってレジへ行くとものすごくニコニコした店員がプレゼント用に包むかと聞いてきた。
別にそれほどまでしなくてもよかったが、折角なのでプレゼント用に包装してもらう。
そして店を出ながら歌川はそれをアリスに渡した。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう、歌川くん!」

アリスは早速それを箱から出すと普段使っている端末に取り付けた。

「この包装もすごく可愛いね。」

「ああ、そうだな。」

てっきりちょっと可愛い袋に入れてくれてリボンのシールを貼る程度かと思っていたプレゼント包装は、まるでこのストラップ専用のものでもあるかのようにフィットしており、またデザイン的にも凝っていた。
2人で箱を眺めていると、すれ違いざまに同じ歳ぐらいの女子高生グループが店に入っていった。
そしてこんな会話が。

「あ、これ。このストラップじゃない?」

「あ、ホントだ!テレビでやってたやつ。」

「好きな子にプレゼントすると両想いになれるだっけ?」

何だって?

歌川とアリスは顔を見合わせてお互い顔を赤くした。
歌川は慌てる。

「いや、アリス!俺はその!」

知らなかった。
このストラップにそんな意味があるなんて。
歌川的には両想いになれるならそれは最高な話だし、一応今日は告白するつもりで誘ったのだから別に問題はない。
問題はないが、問題は大アリだ。

「ごめん、俺知らなくて!嫌なら返してくれていいから!」

ああ、馬鹿野郎。
歌川は自分の中で自分を殴る。
今が絶好の告白のチャンスだったのに返せだなんて言ってどうする。

「…ねえ、歌川くん。」

歌川が自分の中で戦っていると不意にアリスが歌川を呼んだ。
呼ばれて歌川がアリスを見ると少し恥ずかしそうにアリスは歌川を見上げた。

「これ、返さなくてもいい?」

「え?」

歌川は一瞬アリスの言ってることを汲み取れなかった。

「返したくないっていうか、えっと、その。」

そこまで聞いて歌川はようやく理解する。
何だよ、このストラップの効力すごいじゃないか。

歌川は大事そうにストラップを握る手に自分のものを重ねた。

「もちろん。貰ってくれるならすごく嬉しい。」

「ありがとう、歌川くん。」

2人は手を繋いで風間のプレゼント探しを再開した。









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2018.10.10
大昔に書いた負けられない闘い ver.風間隊のside歌川です。
歌川マジ爽やかイケメン。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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