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「やっと勝てたし。」





after the 負けられない闘い ver.風間隊 side S.K





「あ、菊地原くん!お待たせー!」

天気の良い日曜日。
三門駅前で佇む風間隊の菊地原のもとに、同じく風間隊のアリスが駆け寄る。
約束の時間通りにアリスは来たのだが、その場に菊地原の姿は既にあった。
アリスは待たせてしまったかと彼の姿を見つけて小走りで走っていった。

「別に待ってないし。」

だが当の菊地原は相変わらず無表情で一言そう言った。

先日風間隊の3人で行った乱戦形式の模擬戦。
主に歌川と菊地原が風間に挑戦するのだが、もう何十回、何百回と挑戦したかわからない。
何度風間にねじ伏せられようとも不屈の精神で立ち向かった結果、ついにその日は訪れた。
菊地原が勝利したのだ。
その時の菊地原は表情こそ無表情ではあったが、体はその喜びに正直に反応していて文字通り飛び上がって喜んでいた。
それだけ菊地原にとってこの模擬戦は重要だったのだ。
そう、この模擬戦はただの訓練ではない。
これはアリスに告白する権利を勝ち取るための闘いだったのだ。

「今日はありがとう、一緒に行ってくれて。」

「別に特に予定なかったし。」

2人はそう言って三門ショッピングモールへと向かった。
目的はもうすぐくる風間の誕生日プレゼントを探すことだった。
兄である風間が大好きなアリスは当然毎年風間にプレゼントを贈っている。
だが今年は何をあげようかと悩んでいた。
と、そこへ意を決してデートに誘いに来た菊地原が現れ、アリスはそうだ、菊地原に相談しよう!と彼を今日買い物に誘ったのだ。
菊地原からすれば逆に誘われてしまった形になってしまったが、それはそれで好都合だったのでそのまま承諾した。

「うーん、お兄ちゃん、何が欲しいかなぁ。」

「アリスがあげるものなら何でも喜ぶんじゃないの?」

「そうかもしれないけど…じゃなくてちゃんと一緒に考えてよ!」

「はいはい。」

アリスと菊地原はいろいろと店を回った。
食品雑貨店でカレー粉を見たり、キッチン用品店でカレー皿やスプーンを見たり。
だがどれも2人の中でピンと来なかった。
そのままお昼になってしまったので2人は一緒にフードコートで昼食を摂り、またプレゼント探しに出かけた。

「なかなかないねえ。」

「というか、アリスがいろいろあげすぎててネタ尽きてる感あるよね。」

困ったなあと2人で歩いていると、不意に声をかけられた。

「ちょっとそこ行くお2人さん!」

それは今このショッピングモールで行われているイベントのスタッフのようだった。
菊地原はこういうのは呼びかけられてもスルーするタイプだが、アリスは呼び止められて律儀に止まるとそのスタッフの側に寄った。

「今イベントで巨大迷路やってるんです!フードコートで今日お昼食べたならやらなきゃ損ですよ!」

それはフードコートの店舗が共同でやっているイベントのようで、今日食事したレシートがあればただ挑戦できるらしい。
ミッション型の巨大迷路でクリアすれば景品がもらえるとのこと。
菊地原は興味ないが、アリスは少しやりたそうだ。
だが風間のプレゼント選びにはまだまだ時間が必要だし、道草を食ってる場合ではなかった。
アリスが諦めて断ろうとした時。

「これ!」

アリスは景品の一覧を見て飛びついた。
景品の中に風間がよく食べに行っているカレーチェーン店のグッズがあったのだ。

「こ、これ超レアなやつだ!カーリーくんの限定モデル、カツカーリーくんだよ!」

「何その頭悪そうなネーミング。」

菊地原の悪態など聞こえてなさそうな様子でアリスはそれを見た。
これを風間へのプレゼントにできたなら。
きっと風間は喜んでくれるだろう。
菊地原はふぅとため息をついてスタッフにレシートを見せた。

「ホントにタダなワケ?」

「もちろん!かわいいカップルさん、入場でーす!」

「「!!」」

レシートを確認したスタッフはそれにスタンプを押してニッコリと笑うと、そう言って2人の背中を押した。

「違っ!」

「はい、じゃあ頑張ってくださいねー!」

スタッフには反論しようとした菊地原の言葉は届いていない様子で、2人を迷路に押し込むと扉を閉めた。

「…。」

「…。」

スタッフのせいで何となく気まずい空気が流れる。
菊地原としてはまだ告白のタイミングを探っていただけに急にこんな展開にされてしまうのは迷惑甚だしかった。

「ほら、行くよ。さっさとクリアして…。」

菊地原はそう言ってアリスのほうを振り返ると言葉をなくした。
アリスの顔が信じられないほど赤くなっていたからだ。
そして先ほどまではなかったが、明らかにさっきの言葉を気にして菊地原を意識している様子だった。
菊地原は慌てて視線をもとに戻す。
なんなんだ、あの反応は。
少なくとも菊地原と付き合っていると勘違いされたことを不快に思っている様子ではなかった。
それに菊地原にはちゃんと聞こえている。

「アリス、心臓の音すっごいんだけど。」

「!!」

アリスは更に顔を赤くした。

「か、勝手に聞かないでよ!菊地原くん!」

「それは無理でしょ。」

菊地原はそういうと、アリスのそばに寄り手を握った。

「まあその理由は道中たっぷり教えてよ。」

「い、意地悪だなあ。」

「そう?」

2人は手を固く握り合って迷路の奥へと進んでいった。









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2018.10.07
大昔に書いた負けられない闘い ver.風間隊のside菊地原です。
負けられない闘い ver.風間隊を読んだ後に読むの推奨です、
とあとがきに書いてもという気はしますが・・・
多分続きます。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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