ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


それは陽だまりのように穏やかで暖かな日々。





幸せな家庭





「忍田本部長、次の予定ですが…。」

「わかった。ありがとう、桐島くん。」

ボーダー本部基地内を忍田本部長と秘書のアリスが練り歩いていた。
今日は数カ月に一度行っている本部内施設の見回りの日だった。
本部長自ら基地の隅々まで練り歩き、施設に不便はないか、や、清掃などが行き届いているかなどを確認する日だった。
何も本部長自らしなくとも良さそうなものだが、本人はこの日を機会に普段交流の持てない人達と話ができて嬉しそうなので周りは何も言わない。

「あ、忍田さん、アリスさんお疲れ様でーす!」

「ああ、米屋くん達か。お疲れ。」

「陽介くん、公平くん、駿くん、お疲れ様。」

少し遅くなったが昼食を摂ろうと食堂にやって来たところでA級隊員の米屋、出水、緑川に遭遇した。
彼らも訓練やら任務やらで遅くなってしまったが忍田達同様昼食を摂りにやって来た様子だった。

「忍田さん達もお昼っすか?」

「ああ。米屋達も一緒にどうだ?」

「マジっすか!奢りっすか!」

「他の隊員には内緒よ。」

「やったー!」

「あざーっす!」

そうして忍田、アリス、米屋、出水、緑川の5人で昼食を摂ることになった。
次の予定まで余裕があった忍田達はゆっくりと食後のコーヒーまで楽しむことができた。

「あ、お水なくなったみたいなので、私いただいてきますね。」

テーブルに備え付けされていた水のポットが空になったのを見て、アリスは食堂の職員に取り替えてもらおうと席を立ち上がった。

「悪いな、桐島くん。」

「いいえ、本部長はゆっくりなさってください。」

にっこりと笑って席を離れるアリスの後ろ姿を見て出水はニヤリと笑った。

「本部長とアリスさんってお似合いっすよね〜!」

「あ、俺もそう思う〜!」

出水の言葉に米屋も乗っかった。

「ホントホント!付き合っちゃえばいいのに!」

と言うのは緑川。

子供達の言葉に忍田は目を点にして、そして声を出して笑った。

「ははは、桐島くんと私が?
滅多なことも言うなよ、私はまだここで働いていたい。」

忍田の反応が予想のものとかけ離れている上に、その言葉の真意がわからず3人は首を傾げた。

「ああ、そうか。
桐島くんは旧姓のまま働いているからお前達は知らないのか。」

「え、旧姓って…。」

「桐島くんは結婚してるよ。」

忍田の言葉がまたもや予想していない言葉だったため、3人は声を上げた。

「嘘だぁ!」

「指輪してないじゃないっすか!」

「付けるのが勿体無くて家で飾ってるそうだよ。」

「アリスさん、乙女…。」

「え、待って!相手の人は誰ですか?」

「ボーダーの人?」

「お前達もよく知ってる人だよ。
桐島くんの本当の苗字は城戸だよ。」

「「「えっ!?」」」

3人は同時にピタッと固まる。
自分達もよく知っていて、その上城戸だなんて苗字の人は1人しか知らない。

「桐島くんは最高司令官殿のご婦人だよ。」

「「「えーっ!!」」」

3人がそう叫んだ時に、ちょうどアリスが水がたくさん入ったポットを持って帰ってきた。
その後は子供達からの質問攻めにあい、次の予定が押してしまったとか。





「今日の基地内視察はどうだった、アリス。」

時は夜になり、場所は城戸司令宅。
アリスは一足先に帰り、晩御飯の支度を下ごしらえをしていた。
そこへ家の主である城戸 正宗が帰宅したところだった。

「おかえりなさい、正宗さん。
今日の視察ですか?
そうですねぇ、これと言っては…。
あ、鬼怒田さんが研究施設の増設をしたいって仰ってましたよ。」

「またか。
鬼怒田は研究熱心なのはいいが、偶に制御が効かなくなるのが難点だな。」

「そうですね。」

アリスは小さく笑うと、城戸の背広を受け取り綺麗に洋服ダンスにしまう。

「あ、そういえば。
今日はお昼を米屋君達と食べたんですが、私達が結婚しているのを知らなかったらしくてすごく驚いていましたよ。」

「そうか。まあ内緒にはしていないが、公表もしていないしな。」

「ええ。
私が忍田本部長と付き合ってるかと思ったーだなんて言っていて。
それには私もかなり驚いてしまいました。」

「それは困るな。
明日早速アナウンスで公表を…。」

「しなくていいです!」

「冗談だ。」

誰が知っているだろう。
ボーダー最高司令官、城戸 正宗が冗談を言うことを。

誰が知っているだろう。
ボーダー最高司令官、城戸 正宗がこんなにも優しく笑うことを。

アリスはもう、と困ったように笑うと食事の準備を再開しようとエプロンに手をかけた。
だがそれは城戸の手によって阻まれる。

「正宗さん?」

「今日は私が食事を作ろう。
君も一日基地内を歩き回って疲れただろう。」

「でも…。」

「いいから、君はソファでくつろいでいなさい。」

そう言って城戸はアリスの額にそっと口付けた。
アリスは少し頬を染め、嬉しそうに笑うとではお言葉に甘えますと言って、城戸の頬にお返しのキスをした。

城戸に言われたようにアリスはソファに腰かけてテレビをつける。
その時に台所に立つ城戸の後ろ姿を見て幸せそうに笑う。
ワイシャツの腕をまくり、自分のエプロンをつけそこに立つ姿はきっとボーダーの隊員達には想像もつかないだろう。
こんな城戸の一面を知るのが自分だけだと思うと、幸せすぎて思わず頬が緩んでしまうのだ。

程なくして部屋中に食欲をそそるいい香りが立ち込める。
食事ができたかと思い立ち上がれば、ちょうど城戸がテーブルにサーブしているところだった。

「アリス、食事の準備ができたぞ。」

「はい、ありがとうございます。正宗さん。」

声をかけられ手を洗い席に着く。
向かいの席に城戸が着席したところで両手を合わせていただきますをする。

「正宗さん、料理上手ですね。
もう毎日作ってもらいたいぐらいです。」

そう言ってアリスが笑えば、城戸も優しく笑う。

「そうか?
だが私はアリスの手料理が好きだから、それが食べられなくなるのは困るな。」

「ふふ、ありがとうございます。」

楽しい食事が終わり、それぞれ風呂に入り寝る前に少しお茶をしながら今日あった出来事を話す。
そして同じベッドに入り眠りにつく。

こうして城戸家の幸せな一日が終わり、そしてまたもっと幸せな朝が来るのであった。










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2015.7.7
繭様からリクエスト、"城戸さんで本部勤めの奥様、ほのぼの"でした。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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