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嘘は言わない、絶対に。





男女に二言はございません!





「なあ。」

「うん?」

「あれ、そろそろ何とかしねえ?」

本部のランク戦ラウンジ。
その一角でとある二人に呆れた視線を送っているのは、ボーダー高校3年生組の当真、村上、穂苅だった。
いつもの光景ではあるが、そろそろ何とかなってほしい二人を見て、上のようなこと言い出したのは当真だ。

「はあ、あたしがあんたより弱いとかないし!どの口が言ってんのよ!荒船!」

「言いやがったな、アリス、てめぇ。ポイントの差見てから言いやがれ!」

視線の先にいるのはこれまたボーダー高校3年生組の荒船とアリスだった。
この二人は顔をつき合わす度に喧嘩をしている。
犬猿の仲とはこのことだ。二人を突き合わせてはいけない。
と思っているのはここにいる三人以外のボーダー隊員達。

「確かにいい加減にしてほしいな。」

「だろ?このままじゃいかないと思うわけよ、俺は。」

「いい事言うな、当真。」

荒船とアリスは見ての通り仲が悪い。
だが真実は決してそうではなかった。

「毎回毎回喧嘩の後に別々に俺たちのところ来るもんな。」

「素直じゃない、二人共。」

「そうそう、俺らの身にもなってほしいってんだよなぁ。」

荒船とアリスはいつもああして喧嘩をした後、別々に他の三人のところへやってくる。
やってきて何を言うかというと…。

『ね、ねえ、荒船。怒ってるかな?あたし言い過ぎたかな?嫌われちゃったかな?』

『おい、さっきのは俺が悪いと思う。やっぱりアリスに謝ったほうがいいと思うか?っていうかもしかして嫌われたとか?どしたらいいと思う?』

お互いの様子を探りに来る。
さんざっぱら喧嘩をするくせに、その後相手にどう思われているかをやたらと気にする。
そう荒船はアリスが好きで、アリスは荒船が好きなのだ。
喧嘩をするほどなんとやらとはよく言うが、かなりの剣幕で喧嘩をするので周りにそう思われていないだけなのだ。
当真達3人からすればそれはもう見ててわかりやすいぐらいに好き合ってるというのに、お互いが素直になれず重度のツンデレなのでこういう状態になっている。
三人からしたらさすがにそろそろくっつけよ、という状況だったのだ。

「! 俺、いいこと思いついた!」

「何だ、教えろ。」

「おい、耳貸せ。」

「何々?」

三人は頭を寄せ合いゴニョゴニョと一頻り会話をした。

「いいと思うぞ、それ。」

「うまくいきそうだ。」

「だろだろ!」

そう言って三人は立ち上がった。





「何よ!」

「何だよ!」

「まあまあお二人さん。待てよ。」

荒船とアリスが睨み合ってる間に当真が割り込んで入っていった。
周りの隊員はほっとした様子で、それを見ていいた。
こうやって当真、穂苅、村上の誰かが止めるまで喧嘩は続く。
かといって他の隊員では入れないので、毎回早く来てくれと祈るばかりだったのだ。

「な、どっちが強いかでモメてんだろ?罰ゲームでもつけてよ、白黒つけようぜ。な?」

「何で罰ゲーム。」

「勝負だけだったら今までと同じだからな。」

「優越感、すごいぞ、きっと。」

当真達の提案に、荒船とアリスは一瞬顔を見合わせる。
確かに勝負なんて日々している。それでもこんなに喧嘩をしてしまうのだ。
だったら確かに当真達の言うとおり、何かドギツい罰ゲームで相手を屈服させられれば気分もいいし、白黒つきそうだ。

「いいだろ、やろうぜ。」

「面白そうじゃない、乗ったわ。」

「よし、罰ゲームは俺が決める。」

「はあ!?何でよ!あたしが決める!」

だがそれは新たな火種を生み、また喧嘩が始まりそうになった。
だがそれはこちらはお見通しだよ言うように当真は続けた。

「まあ待て待て。お前らどうせ罰ゲーム決めるのに喧嘩すると思ってよ。俺らで内容考えてやったぜ!」

「準備いいな、内容はなんだ。」

「ドギツいやつなんでしょうね?」

「おう、任せろ!」

当真は一呼吸をおいて言う。

「ずばり!負けた方は好きな人に愛の告白、だ!!」

一瞬ラウンジがシーンとなった。
周りで聞いていた者達は確かにドギツい内容だがそんな内容二人が納得しないのでは、と思い見守る。
だが荒船とアリスはその場にいる者達の予想を裏切る反応を見せた。

当真の言葉に一瞬驚いたような表情を見せ、顔を見合わせる。
二人は顔を見合わせたままみるみる顔を赤くした。

「ば、馬鹿か!そんな内容罰ゲームにならねぇだろ!」

「そうよ!乙女としてそんな大事なイベント罰ゲームでできるわけないでしょ!」

(((何で今の態度でお前ら気が付かないんだよー。)))

先ほどの二人の様子は、明らかにお互いを意識してのものだった。
当真の作戦ではあわよくばここで二人がお互いの気持ちに気が付き、勝負しなくても万事うまくいくはずだった。
だが二人は重度のツンデレであり、また重度の鈍感でもあったのだ。
さすがに見ている周りのものも気が付き、何だただの仲良しだったのかとその場を離れていった。

だが当真はめげない。作戦は続行だ。

「おやー、その態度からして好きな人はいるみたいだなー?お前ら。」

当真はにやりと笑う。演技派だなぁと穂苅と村上は関して見守った。

「ぐっ!」

「それは!」

荒船とアリスはまたお互い顔を見合わせる。

(クソ、アリスに告白とかできるか!っていうかこいつ好きなやついるのかよ!どこのどいつだよ!!)

(荒船に告白とか無為無理無理無理!!っていうか好きな人いるの!?誰!?)

「と、ともかく、別の罰ゲームを…。」

「そ、そうよ。もっとマシなものを…。」

罰ゲームを断固拒否する姿勢の二人に当真は追い打ちをかける。

「はーん?お前ら負けるの怖いわけ?さっきまであんなに息巻いてたのによ〜。ようは勝ちゃいいんだぞ?勝ちゃ。」

その言葉に二人はぴくりと反応を示す。
さすが同い年で付き合いが長いだけはある。
うまく二人の闘争心に火をつけることに成功した。

「そこまで言うならやってやろうじゃねーか!」

「そうよ、どうせあたしが勝つんだし何でも来なさいよ!」

「よーく、言った。忘れんなよ、その言葉。」

当真の確認の言葉に荒船が言う。

「おう。男に二言はねぇからな。」

そう言って荒船はアリスを見た。
アリスもそれに続く。

「いいわ。女にも二言はないわよ!」

「よし、じゃあブースに入れー。」

ブースに向かう二人の背後で三人はハイタッチをする。
作戦は大成功。二人は何だかんだ真面目だ
から負けた方はきちんと罰ゲームを遂行する。
しかも自分に嘘をつけないタイプだから適当な代役をたてることも絶対ないだろう。

「やったな、当真。」

「すごいな、お前。」

「まあな!」

そうして三人はラウンジで勝負の行方を見守った。




後日相変わらず二人の喧嘩は絶えなかった。
だが周りからの視線には戦々恐々な雰囲気はなく、ああ今日も仲がいいなぁと素直でない二人を見守る温かい視線に変わっていた。










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2018.09.19
短編荒船さんです。
荒船さんは素直じゃないかんじもカワイイですよね!


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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