ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


何で俺こんなにイライラしてるんだ。





仲直り





「鋼、お前桐島と喧嘩でもしたのか?」

その日俺は本部に来ていた。
ランク戦のラウンジでジュースを飲みながら他の隊員の試合を見ているとそこへ荒船がやってきて上のようなことを突然言われた。

「してない。」

してないはずだ。喧嘩なんて。
確かにあいつはうるさくて何かと少し言い合いになるが大体俺が折れて終わりだ。

「のわりには機嫌悪そうだけどな。」

荒船はそう言ってストローをくわえる。
俺の機嫌の良し悪しを見分けられるのは荒船ぐらいだ。
俺は結構表情動かない方だからなかなか人に機嫌が伝わらないんだけど。

「最近桐島と一緒に本部に来ることもないしな。何かあったのかと思ってよ。」

そういう荒船。
アリスにてっちゃんと呼ばれるのが気に入らなくて荒船こそいつもアリスに怒ってばかりなのによく見てることだ。

「してないと思う。」

「何だよ、心当たりあるんじゃねーか。」

だんだん自信のなくなってくる俺。
というより、喧嘩ではないがこうなってしまった心当たりは確かにある。
多分先日の保健室での一件だ。
あの日帰り道に思い切って本人に確認しようとしたのが間違いだったらしい。
その翌日から何となくアリスは俺を避けるようになった。

そうなってから気がついたが、最近の俺の生活には何だかんだあいつがいつもそばにいた。
クラスは違うが学校は同じ、所属部署も配属隊も同じ。
当然任務から帰り道までいつも一緒。
考えてみればおかしなぐらい四六時中一緒だった。

「寂しいんだろ?何で喧嘩したか知らないけどさっさと仲直りしろよ。」

「寂しくないし、喧嘩してない。」

「はいはい、じゃあ頑張れよ。」

「あ、ちょ、荒船!」

荒船は任務があると言って、一方的に俺に言いたいこと言って去っていった。





「どうしろってんだよ。」

俺は支部への帰り道途中で、いつかアリスと2人で飯を食った河原に座り込んで、あの日と同じ景色を見ていた。
そういえば最近一緒に昼食ってないな。
ノートも借りにこないし、一緒に帰ってないし。
って何でこんなにあいつのこと考えなきゃいけないんだ。

『な、何もなかったし!じゃあね!』

あんなに意識されるとは思っていなかった。
でも俺はあの時夢かと思ってたわけだし、悪くないと言うか、何と言うか。

(ん?夢かと思って?)

この理由は何かおかしくないか?
夢ならいいかと思って俺はアリスの手を握ったのか?

何で?

(いや、いやいやいや…。)

俺は顔が熱くなるのを感じた。
これじゃまるで俺が普段アリスと手を繋ぎたいと思ってたみたいじゃないか。
ない、ないだろ、それは。
だってアリスだぞ?
考えれば考えるほど顔が熱くなる。

俺はアリスに絡めた手をもう一度見た。
あの日からあの温もりが離れない。
安心させられる、そんな感じの温度。
それを思って眠りにつけば不思議とあの夢は見なかった。
アリスのおかげだと思うと癪だが、でもそれは事実だった。

(ともかくアリスと一回ちゃんと話そう。このままじゃ来馬先輩にも心配される。)

俺はそう思い立ち、支部へと歩みを進めた。





支部には珍しく誰もいなかった。
それもそのはず、今日は鈴鳴第一は任務もなく、訓練もなく休みだ。
むしろ休みの日まで来てしまう俺はなんなのかと、そういう感じだ。
俺は誰もいないことをいいことに、ソファに横になった。
アリスと話すって何をどう話せばいいだろうか。
手を繋いで悪かった、寝ぼけてたから許してくれ?
いや、これは何か俺は悪くないみたいな言い方だな。
そんなことを考えている内に、俺はいつの間にか意識を手放した。

何の夢も見なかった。
ただ真っ暗で、少し寒くて。
そう思った瞬間、何かが俺を包み込む感覚がした。

「「あ。」」

眠りが浅かったのか、俺が目を開けると目の前にアリスがいた。
思わず2人して声を上げる。
アリスの手は毛布を持っており、どうやらかけた瞬間俺が起きてしまったようだ。

「起こしてごめん!」

そう言って慌ててアリスが逃げようとしたので俺も慌ててアリスの手首を捕まえた。

「待て、アリス。」

「待たない!はーなーしーて!」

ものすごい力で引っ張って逃げようとするアリス。
そんなに全力で逃げなくてもいいだろうと、俺は半ばショックを受けながらアリスを引き寄せた。

「待てってば、話がある。」

「…。」

アリスは観念したのか、床に座り込んだ。
俺は上半身だけ起こしてアリスに向かい合う。
いつもより近い視線が新鮮で、それでいてそこはかとない緊張を生む。

「この間の保健室でのこと怒ってるのか?」

「…やっぱり覚えてたんだ。」

「いや、夢かと思ってたんだけどお前の態度があからさますぎて。」

そう言えばアリスは少し頬を赤くしてふいと顔を逸らした。
どうやらやっぱり保健室で手を握ったことを意識しているようだ。

「あ、あたし男の子にあんな風に手握られたことないし、鋼寝ぼけてるってわかってたんだけど、何か、ちょっと、その、慣れないというか。」

聞こえるか聞こえないかぐらいの声でアリスはボソボソと呟いた。
こんなに女の子っぽい面は始めて見たかもしれない。
何だよ、結構可愛いこと言うじゃんか。

「…。」

俺はアリスの手首から手を離した。

「!鋼!?」

そしてあの日と同じように自分の手をアリスの手に絡めて再びソファに横になった。

「だったら慣れろよ。お前に避けられると何か調子狂うから。」

「いや、避けてたとかじゃ…。」

「嘘つくな、堂々と避けてただろ。荒船にも心配されたし。」

「え、てっちゃんが?!」

「そ。てっちゃんが。」

温かい。
手からじわじわと安らぎが伝わる。
ああ、どうしてだろう。
やっぱりなんだか安心してしまう。

「アリスの手、温かいな。」

俺はそう言って目を閉じた。

「よく眠れる。」

意識が徐々に薄れていく。

「…仕方ないなぁ、鋼は。」

ふっとアリスが笑ったような気がした。










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2015.6.24
ちょっと短いですが、攻め系村上くんです。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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