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「悪いな、今日は用事があるんだ。」





おしのび





今日も今日とて荒船さんが、穂刈さんをかわして足早に帰っていく。
最近荒船さんは付き合いが悪いと、よく穂刈さんが寂しそうな顔をしている。

「半崎。何か知ってるか、お前。」

「知らねっすよ。」

作戦室で穂刈さんがこれまた寂しそうに聞いてくる。
穂刈さんと荒船さんは仲が良い。
その穂刈さんが知らないのに俺なんかが知ってるはずもない。

最近の荒船さんは訓練や任務が終わるとそそくさと帰っていく。
前はわりとランク戦やったり、自己鍛錬したり、ご飯行ったりとそれなりにみんなで過ごしていた。
お祭り好きの穂刈さんはそれが急になくなったから多分じゃなくても、すごく寂しいみたいだ。

「彼女ができた、とかだったりして。」

冗談のつもりで言った。
そう、冗談のつもりだった。

ガタリ、と音を立てて立ち上がった穂刈さんは大層驚いた顔をしていた。
俺はその瞬間、何かダルい展開になりそうだと直感した。

「尾けるぞ、後を。荒船の!」

ほら。

「付き合え、半崎!」

これはダルい展開だ。
先輩らといるのは好きだけど、この展開はダルすぎるだろ。
口は災いの元ってこのことだ。

穂刈さんに半ば引っ張られる形で俺は作戦室を後にした。





ちょっと楽しい。
俺は荒船さんの後を尾けながらすぐに思った。

今まで荒船さんが早く帰る日があっても特に何も考えてなかった。
でもいざこうやって後を尾けるとなかなか楽しい。
何でかってあの熱血とクールの中間みたいな荒船さんがすごく挙動不審に帰り道を急いでいるからだ。

「警戒してるな、荒船。」

「逆に怪しいですけどね。」

基地を出るまではまだ普通だったけど、基地を出てからのキョロキョロっぷりがすごい。
誰かに見つかるのを明らかに警戒している。
あんなに警戒してたら逆に怪しいと、普段の荒船さんなら気づきそうなものだけど。

ちらりと穂刈さんを見上げると、穂刈さんも少し楽しそうだ。
そういえばこうやって基地の外で一緒にいるのは久しぶりだ。

「入ったぞ、店に。」

穂刈さんに言われて荒船さんの方を見ると、喫茶店に荒船さんが入って行った。
オシャレな喫茶店だ。
へえー、こんなとこに荒船さん、一人で来るんだ。

荒船さんはお店のテラス席に座った。
都合の良いことに身を隠せそうな垣根がそばに。
ということで俺と穂刈さんはそっと近づいてしゃがみ込む。
店員が早速近づいて来て注文を取る。

「コーヒー、ブラックで。」

ギリギリ声が聞こえる。
っていうかブラックとか荒船さんかっこいいな。

「かっこいいな、ブラック。」

穂刈さんも同じことを思ったらしく、考えることは同じかと思わず笑う。

「あ、誰か来たっす!」

荒船さんが頼んだコーヒーを早速持ってきたウエイトレス。
その人を見た瞬間、荒船さんの顔がパッと変わった。

「哲次くん、また来てくれたんだ!ありがとう!」

「アリスさんがいる日は絶対来るって決めてるんだ。」

「ホントに?嬉しいな、ありがとう。」

…俺と穂刈さんは絶句した。
あんな優しく荒船さんが笑うところ見たことない。

「え、マジで彼女さん?っすかね。」

「知らない、あんな荒船。」

今の時間、客入りが少ないのかアリスさんて人は荒船さんとそのまま喋ってる。
店長っぽい人が見ているが、咎める素振りがない。
え?公認ってこと?マジで?

「アリスさん、仕事は何時に終わるんだ?ご飯でも行かないか?」

「いいよ!もうすぐ終わるから一緒に行こう。」

荒船さんにご飯に誘われるアリスさん、すごく嬉しそうだ。

「?!穂刈さん、どうしたんスか!」

隣を見れば穂刈さんの落ち込み具合が半端なかった。
見たことない友達の姿を見て寂しさが一層増してしまったんだろう。
かく言う俺もなんとなくショックだったりするわけで。

「え、今日も同じ隊の子の誘い断って来たの?」

「ん?まあ、うん。そうなるな。」

穂刈さんに気を取られて前後の会話を聞き逃したけど、いつの間にか俺たちの話になっていた。
荒船さんは何となくその話をされたくないのか、コーヒーに視線を落とす。

「その子達寂しがってるんじゃない?」

「そんなことは…。」

ありますって!荒船さん!
今の穂刈さん見てくださいよ!

「哲次くんに会えるのはすごく嬉しいけど、友達のこともちゃんと大切にしてあげてほしいな。」

ふわりと笑うアリスさん。
何となくだけど荒船さんがアリスさんのこと好きになった理由を肌で感じる。
穂刈さんとか見てよ。泣きそうなんだけど、この人。

「…わかった。今度連れてくる。大事な友達と後輩だから。」







「俺もだ、荒ふ「待って待って!抑えて!穂刈さん!」

感極まって飛び出しそうになる穂刈さんを何とか抑えこむ。
何とか落ち着かせて2人で膝を抱えて耳を澄ます。

「自慢のチームだからな。アリスさんに今度紹介するよ。」

「うん、ありがとう。哲次くん。楽しみだよ!」

この空間だけやけにキラキラしている感じがする。
ラブラブっていうのはこういうのを言うんだよな、多分。
佐鳥とかはなんか滅びろ!とか言いそうだけど、俺はあんま嫌じゃないかも。
荒船さんが幸せそうだし、大事な後輩、なんて言われたら何も言えない。

「帰るぞ。半崎。」

「はいっす。」

これ以上は無粋かと(尾ける時点で無粋だけど)、穂刈さんと足早にその場を立ち去る。
でもやっぱり心なしか寂しそうな穂刈さん。

「穂刈さん、俺腹減りました。オムライス食べたいっす。」

「いいぞ。」

行きつけのファミレスに今日は2人で向かう。
次は荒船さんと3人で。いや、アリスさんも含めて4人でがいいかな?









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2015.2.25
まさかの半崎くん視点。
荒船隊はみんなクールぶってるけど、実はものすごく仲がいい。という妄想。

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