ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


これは懐かしい幼い頃の記憶。





勇気をくれたのは





『おーい、遊びに来たぞー。』

『あら、鋼くん。いらっしゃい。』

『いつも来てくれてありがとう。あの子なら部屋にいるよ?』

『ありがとう、おじさん!おばさん!』

幼馴染がいた。
俺が4歳の時に近所に引越しして来た家族。
俺と同い年の女の子が1人、その家にはいた。

『鋼くん、また来てくれたの!』

病弱であまり外に出られないその子に会いに、俺はしょっちゅうその子の家に遊びに行った。
おじさんやおばさんもいい人で遊びにいく度に笑って迎えてくれた。

『今日は俺あやとり覚えて来たぞ。』

『あやとり?何それ、教えて!』

ベッドの上で座ったままのその子に、俺はいつも父親と母親から教えてもらった家での遊びをそのまま教えた。
家族の話や、幼稚園での話。
俺が話す外の世界での話を、その子は笑顔で聞いてくれた。

小学校・中学校・高校と俺達は同じ学校に通った。
体が弱いので無理はできないその子が放っておけず、俺はその子と必ず登下校を共にした。

『鋼くんはやりたいことないの?部活とか。』

そんなことを言われたことがある。

『特にないかな。俺と一緒にいるの、飽きた?』

『そ、そんなことないけど!』

その当時の俺は本当に特にやりたいことなどがなく、ただこの子を守って行きたい、それだけしか考えていなかった。
付き合ってるのかとからかわれたこともあった。
でも俺にはそんなことどうでも良かった。

今思い返せば好きだったのかもしれない。
ずっとそばにいて、守って、一緒に生きていたかった。

そう思っていたのに。

『ごめんね、鋼くん。助けに来てくれてありがとう。』

別れは突然やって来たんだ。





「いやー、この坂キツイっすね。」

「太一、だらしないわよ。」

「いや、今ちゃん、僕もこの坂結構キツかったよ。」

桐島の提案通り掃除を終わらせて鈴鳴支部の5人でお墓へやってきた。
支部に戻って、お墓参り行きましょう!って言い出した桐島に一瞬3人は騒然としたが、天気いいですし行きましょう、みんなで。と俺が控えめに付け足すとぱぁと笑顔になった。
特に来馬先輩は泣きそうな、でもとても嬉しそうな顔で笑っていた。
そのあとは今までのスピードが何だったのかと思えるぐらいの勢いで掃除が終わっていった。
時間にしたら多分いつもの掃除より時間が短いが、いつもの倍以上に綺麗になっていた。

墓に行く前に花屋に寄ったりお菓子屋に寄ったりしてお供え物を買う。
お供え物を買うはずなのに、太一と桐島は試食品ばかり食べてばかりだ。
今に怒られてるところを見てざまあみろと思ったのは言うまでもない。

「結構散らかっちゃってるね。」

「ここのところ雨続いてましたしね。」

落ち葉などで周りが散らかっているのを掃除する。
今日はよく掃除する日だ。
5人でお墓をピカピカにして、買ってきた花やお菓子を備えて線香をあげる。

「ほら、鋼!あたしのこと紹介してよ!」

「は?!」

「そのために来たんでしょ!」

こいつホントにここで紹介をさせる気だ。
俺は助けを求めて後ろに立つ来馬先輩を見たが、先輩はニコニコして嬉しそうだったため何も言えずこの子に桐島を紹介するしかなかった。

「…よう、久しぶり。今日はみんなで来たぞ。」

簡単な挨拶に始まり桐島の紹介に移る。
隣にしゃがみ込む桐島を見ると早く早くと期待の眼差しで見上げてくる。
俺は観念した。

「こいつは桐島 アリス。今度鈴鳴に来た新人だ。一応B級。がさつで礼儀知らずで煩いのが特徴だ。」

「ちょっと!」

桐島は抗議の声をあげたが俺は構わず続けた。

「俺達と同い年で、しかも孤月とレイガストの二刀流使い。まあそこそこ強いけど俺からしたらまだまだ弱いし、がさつで礼儀知らずで煩いし。」

「ちょっと!何で2回も言うのよ!」

「まあでも…。」

桐島がまた抗議で殴りかかって来そうな勢いだったので俺はその突撃を片手で止めながら最後に一言。

「結構良いやつだよ。」

その言葉に桐島はピタリと動きを止めて笑った。

「わかってるじゃん!」

「まあな。」

「鋼が笑ったー!!!」

そんな会話をしていると後ろから来馬先輩が悲鳴をあげた。
また俺は笑っていたらしく、来馬先輩はそれが嬉しくて泣き出してしまった。
それを今と太一が慰めている。
ああ、こんなに心配かけてたんだなと改めて再認識する。

日も暮れてきてそろそろ帰るかと、みんなで坂道を下る。
行きがキツかった分、帰りは楽だ。
風も少しあって涼しくて気持ちがいい。

俺は前を歩く桐島の背中を見た。
認めたくはないが多分こうやってみんなで会いに来る勇気をくれたのは彼女だ。

「おい、桐島。」

「何?」

俺の呼び声に顔だけ振り返る。

「…いや。ありがとな、アリス。」

そうやって俺が言うと、アリスは一瞬驚いた顔をしてそしてまた笑った。

「どういたしまして、鋼!」

夕暮れで鮮やかに染まる空の下。
俺はほんの少しだけ先に進めた気がした。










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2015.6.10
やっと名前で呼びましたね、ヒロインを。
ここまで長かった。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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