ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


何度だって言う。だから…。





映画のようにはいかないけれど





「アリス!」

俺は諏訪さんに煽られて作戦室を出た後、真っ直ぐに基地の屋上へと向かった。
アリスは落ち込んだり、何か嫌なことがあると基地の屋上から1人街を見下ろす癖がある。
この日もその癖通り屋上にいますようにと願いながら、俺は階段を駆け上がる。
途中で穂刈と半崎からメッセージが来たみたいだがこんなの未読スルーだ。
俺は今それどころじゃない。



バン!



と扉を開けて勢い良く屋上に飛び込む。
だが、そこには誰もいなかった。
俺は探すように屋上の、よくアリスが座っていた場所まで行く。
だが近づいたところでいないものはいない。

そもそも今日は休みだ。
任務がなければ基地にも来ていないだろう。
くそ、アリスの隊の防衛任務は…。

「あ、荒船くん!?」

俺が端末でアリスの隊のスケジュールを確認しようとした時、後ろから俺を呼ぶ声がした。
今探していた人物、今一番聞きたい声だった。

「アリス!」

「っ!」

「あ、おい、待て!」

俺が近づこうとした瞬間、アリスは回れ右をして駆け出した。
俺は慌てて走りだし、後を追う。
幸いにもアリスが一瞬戸惑ってくれたようで、俺はギリギリ逃がすことなくアリスに手が届いた。
手を掴み、アリスを引き止める。

「ま、待て。逃げるなよ、アリス。」

「離してよ、荒船くん!あたし今荒船くんに合わせる顔ないんだから!」

こんなにはっきりと拒絶をされたのは初めてで。
俺は気を失いそうなぐらいショックだったが、何とか踏みとどまりアリスの手を握る手に力を込めた。

「…アリス。だったらそのままでもいいから。だから逃げるなよ、逃げないでくれ。」

自分でも聞いたことのないような情けない声だった。
アリスもそう思ったのか、一瞬こちらを振り返りそうになったが踏みとどまった様子だった。

『お前は他にしないといけないことがあるだろ?』

そうだ、俺はしないといけないことがあるんだ。
アリスに謝って、仲直りしたい。

「アリス、昨日は悪かった。いきなり怒鳴ったりして。」

「……。」

「怒るのは当然だと思う。いきなりだったし意味わからんって感じだっただろ。」

「…。」

「でもホントに悪かったって思ってる。ごめん、アリス。」

いくら言葉を綴っても何も返してくれないアリス。
こちらを振り返る素振りもない。
完全に嫌われたのだろうか。

でもそんなのは耐えられない。

「アリス、お願いだから。…俺を嫌いにならないでくれ。」

最後には泣きそうな声になっていた。
ああ、好きな子の前でこんなのかっこ悪い。
こういう時はどうしたらいいんだよ。
諏訪さんの言うとおりもう少しちゃんとラブロマンス系の映画もみておけばよかった。
そうすれば気の利いた言葉の一つや二つ出てきただろうに。

「荒船くん、ズルイよ。その言い方。」

アリスはそう言ってやっと俺を振り返った。
その顔を見て俺はギョッとする。
まつ毛の長い大きな目は涙に滲んで揺れていた。
目元には今できたのではなさそうな涙の後。

俺はああ、何てことしたんだと改めて後悔した。
こんなにアリスを傷つけるだけ傷つけといて許してくれなんて虫がいい話だ。

「肝心なこと言ってない、ズルイよ。」

アリスはそう言ってうつむいたまま俺に近づいた。

「…どうして、あんなに怒ったの。」

「どうしてって…。」

俺はそこまで口にして気がつく。
謝ることに気を取られて、アリスの示すとおり肝心なことを伝えていない。

俺のしないといけないこと。
アリスに謝って、仲直りして。

それだけじゃないだろ?

「俺がアリスのことを好きだからだよ。」

アリスへ思いを伝えること。
それが俺が一番やらないといけないことだ。

「俺がアリスのことがすごく好きだから。諏訪さんに嫉妬して勝手に怒ったんだ。」

俺はアリスの頬に触れ、そっと顔を上げさせる。
その顔は見たこともないくらい真っ赤で、目に溜まっていた涙は零れ落ちていた。

「だから、ごめん。謝る。だから俺を嫌いにならないでくれ。」

俺はアリスの涙をそっと拭った。
そしてアリスへようやくふっと笑って言う。

「違うよ、荒船くん。"嫌いにならないでくれ"じゃないでしょ?」

アリスは何か言葉を待っているようだった。
俺はアリスの意図することがわかりふっと笑みを零す。

「ああ、そうだな。アリス、ごめん。謝る。だから…。」

俺の本当の願い。

「俺を好きになってくれないか?」

本当に俺のものにしたいと思ったたった1人の女の子。
嫌われたくない、じゃない。

好きになってほしい。それが俺の願いだ。

「うん、喜んで。」

ようやく笑ってくれたアリスを、俺は引き寄せ抱きしめる。

「アリス、好きだ。待たせて悪かった。」

「ううん、あたしこそごめんね。あたしも好きだよ、荒船くん。」

照れてもそう言ってくれるアリスがどうしようもなく愛しくて。
俺はアリスの唇に自分のものを寄せた。





もう俺とアリスの間に距離なんてない。
気がつけばいつもすぐ隣に。
いつだって近くに感じられるぐらい、すぐそばにいるんだから。










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2015.6.2
これにて縮めていこう、その距離を終了です。
diaryにてあとがき
的なもの書いてます。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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