ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


ああ、どうしてこんなことになっちまったんだ





しなくてはいけないこと





「で、あの状態ってことですか?」

「失敗どころじゃないな、作戦は。」

アリスとのデートの翌日、俺は普通に基地に来た。
今日は夕方から防衛任務だ。
むしろ来ないわけにはいかない。

俺は作戦室に来るや否やソファの上に膝を抱えて座り込む。
不思議に思った穂刈につんと押され、ソファにそのままの体制でコロンと横になったのはもう30分も前の話だ。
その間にポツリポツリと昨日の出来事を穂刈に話し、ちょうど半崎がやってきた。
だが俺に昨日の話を2回もするような気力はなく、半崎への説明は穂刈がしてくれた。

俺は昨日のことを思い返す。後悔だらけだ。
アリス、どんな気持ちだっただろう。
どんな顔をしていただろう。
振り返らなかった俺には決してわからない。

ああ、アリス、ごめん。悪かった、と。
頭の中では何回でも言えるのに、本人に会いに行く勇気が出ない。
諏訪さんに見せたあの笑顔もチラついて離れない。

俺は自分のことを勘違いしていた。
今のままで十分幸せだとか、嘘ばっかりだ。

確かに真矢が他の男と仲良くしているのは辛い。
こんなに辛いだなんて思わなかった。

独り占めしたい、離したくない、そんな願望がある。
願望なんかじゃない、欲望だ、こんなの。

今の関係を壊してでもそれが欲しいのか?
今なら迷わずああと頷ける。

でも何もかももう遅かった。
出会ったあの日に憧れて、追いかけて、仲良くなって。
それなのに俺はちっぽけな嫉妬に駆られて全部放り出しちまったんだ。

アリス、ごめん。何度でも謝る。
だから俺を嫌いにならないでくれ、頼むから。

そうやって目を閉じて、俺は意識を手放した。





「おーい、荒船。起・き・ろ!」

「?!」

俺は自分を呼ぶ声に驚かされて、慌てて飛び起きた。
寝てしまっていたらしい。

「やっと起きやがったな。」

「諏訪さん…。」

俺が今あまり会いたくない人No.2の諏訪さんが目の前に立っていた。

「あ、諏訪さん、昨日はその、態度悪くてすみませんでした。」

とりあえず逃げ場もないので昨日のことを謝った。
先輩の諏訪さんにも態度が悪かったなと帰って反省していたからだ。

俺が謝ると諏訪さんは驚いたような表情を見せた。

「何だよ、いつもの荒船じゃねぇか。」

諏訪さんは帽子の上から俺の頭をグリグリと撫で回した。
まるで昨日アリスにしたみたいに。
なんだ、これ。この人なりのコミュニケーションなのか?

「っ、諏訪さん、やめてくださいよ。と言うかどうしてここに?ってか今何時?」

「ポカリ達ならもう任務行ったぞ?」

「はっ!?」

俺は慌てて時計を見る。
任務の時間はとうに過ぎていた。
何で起こしてくれなかったんだよ!!

「安心しろ、お前の代わりに堤が行ってるから。」

「はっ!?えっ?!」

「お前は他にしないといけないことがあるだろ?」

全く状況が理解できてない俺に諏訪さんが静かに言った。
部屋に二人だけしかいないからか、その言葉はやけによく聞こえた。

しないといけないことはわかってるつもりだ。
だがそれをする勇気がなくてグダグダしていたのに、今からそれを実行するなんて無理だ。

「ったく、お前いつもの勢いはどうしたよ。」

何とも言えない表情の俺に諏訪さんは大きくため息をついた。

「だいたいなぁ、お前がそんなだからアリスが自分からデートに誘わないといけなかったんだぞ?わかってんのか、ヘタレ。」

「え?」

「お前もアリスもアクション映画の見過ぎなんだよ。もうちょっとラブロマンスも取り入れろ。だーかーらお互いデートにも誘えず高3の冬になっちまうんだよ!」

再び状況がわからなくなった俺に諏訪さんは言った。
お互いデートにも誘えずってつまり…。

「お前、アリスに俺のことが好きなのかって聞いたらしいな?」

「っ!」

諏訪さんの一言をきっかけに昨日のあのシーンが蘇る。
アリスに怒鳴ってしまった、振り返らずにその場を去ってしまった昨日。

「アリスが俺のこと好きだったら、お前をデートに誘うにはどうしたらいいかなんて聞いてこねぇよ。」

「え?」

「はー、折角いい感じだったのに、アリス泣かせてなにやってんだよ、お前。」

さっきから諏訪さんの言う言葉。
それは整理するとつまり。

アリスも俺と同じ気持ちだってことか?

「慎重なお前のことだから今の距離感壊したくないとかウダウダ思ってたんだろ?でもな、それはアリスだって同じなんだよ。もうわかるだろ?」

突然教えられた真実に俺が動けずにいると、痺れを切らした諏訪さんはこう言う。

「そんな様子じゃアリスもらっちまうぞ?」

「駄目です!!」

そう言って踵を返して部屋を出ていこうとする諏訪さんを呼び止める。

「アリス、俺のなんで。」

「…だったらさっさと行けよ。」

諏訪さんはやれやれとした顔をして、手で扉を指した。
俺は小さくありがとうございますと呟くと部屋を飛び出した。

ぐっと遠ざかった距離。
このままになんてできない。

俺はアリスの元へと駆け出した。










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2015.5.28
諏訪さん良い人すぎ。
一生ついていきます。
diaryにてちょっとネタ


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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