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どうしてこんなことになってしまったのか





遠ざかる、その距離





夕べは眠れなかった。

突然降ってきたアリスとのデートと言うイベントに、俺はいろんなことを考えすぎて眠れなかった。
そうして映画に行くことになった経緯を思い返してる途中で、俺は昨日アリスに告白するために話しかけたことを思い出した。
道理であの後半崎が機嫌悪かったわけだ。
アリスに流されて何も言えなかった俺を不甲斐ないとおもったのだろう。
LINEも既読スルーされたし、返事が返ってきたかと思えばなんとも言えない表情をしたスタンプだった。

半崎、俺も男だ。
しかもお前らを引いて立つ隊長だぞ。
今日こそ俺はこの恋心に決着をつける!

って送ったのに、もうホントに冷めた目でこっちを見てくるスタンプだった。
半崎をこれ以上怒らせるのはまずい。
それがなくても確かに俺はもう前に進まなくてはいけない。

俺は今日、アリスに告白する。

「荒船くーん、お待たせー!!」

来たぞ、アリスだ。

俺は声のする方に視線を向けて、一瞬固まりまた視線をばっと元に戻した。
な、何だ今の。

「ちょっと!今完全に気づいてたでしょ!」

アリスが怒った顔で目の前までやってくる。

か、か、

「そりゃ似合ってないかもだけど、ちょっとあからさまじゃない?」

可愛いすぎるだろーー!!!

何だ、これ!地上に舞い降りた天使か!?
それとも女神の生まれ変わりか?!

「あ、いや悪い悪い。」

私服を見るのは初めてではない。
休日基地で会う時は大体私服だ。
でも、でも!こんな格好見たことない!
大体基地に来る時はラフな格好が多い。
だからスカートとか制服以外に見たことない。

「似合ってるぞ、可愛いじゃんか。」

俺はこの内心の動揺を1ミリも感じさせないように、アリスを褒める。
似合ってるも、可愛いも本心だ。

「ありがとう、嬉しいよ、荒船くん!」

褒められたことが嬉しいのか、アリスは少し頬を紅潮させて笑った。
普段の笑顔とはまた何か違う感じがして、俺は自然と笑い返した。

「さ、行こう、映画!席まだ空いてるかな?」

「安心しろ、ネットでチケットとって座席指定も済ませてある。」

「さっすが、荒船くん!すごい!」

アリスと2人ゆっくりと、俺達は目的地に向かった。





映画を見終わり、ショッピングモールを見て回った。
ここでもアリスのまた普段見られない一面が見ることができて俺は大満足だ。
戦場の前線でドカドカ闘うアリスだが、やはり女の子らしい一面もある。
いや、むしろこっちの方が本当のアリスなのかもしれない。
雑貨を見ていちいち可愛いと言い、似たような服を持ってきてどっちが似合うかなどと聞いてくる。
どっちも似合うからいいと思うが、そういうのは女子に対して良くない答えだと昔何かで読んだ。
でもどっちも似合うのは本当なので答えは自然と俺の好みになる。
こっちの青緑のトップスの方がアリスには似合うと思うと答えると、アリスはまた満足そうに頬を緩めて笑った。

デートっぽい。

これだけで俺は大満足だ。
このままあと晩飯でも食べてアリスを送って帰ろう。
そう思っていた時。

ブブ ブブ

俺のスマフォが何かを受信して震えた。
穂刈からのメッセージが1件。
開けてみると中身はこうだった。

『隊長あぶなーい(;・д・)ノ半崎が隊室の映画のブルーレイ全部捨てそうな勢い((((゚Д゚))))』

俺は当初の目的を思い出した。
そうだ、俺は今日こそアリスに告白するんだった!
というか、半崎怒りすぎだろ!
俺が休憩時間に見るように作戦室に置いてあるブルーレイ捨てるとか、ホントやめて!

俺は穂刈にメッセージを返す。

『安心しろ、作戦はすでに始まっている。
だからホントに捨てるのは勘弁してくれ。』

よし、そう、そう、告白する。告白するんだ。
いつしよう、これから飯食ってだから、その時?
いや、無理無理。人多いしムードとかなくないか?
やっぱりここは帰り道だな。
うん、そうしよう、よし、そうする。

「お待たせー、荒船くん!」

アリスが会計を済ませ俺の元へ戻ってきた。
駆け寄ってきて、笑顔見せて。
俺はこの時安心しきっていた。
何処かでアリスの中の一番は自分だと錯覚していたんだ。

「晩飯でも食べて帰るか。」

「いいねー!あたしね、ハンバーグ食べたい!」

「はいはい。」

そう言って歩き出した時だった。

「あ、待って、荒船くん!」

アリスは人混みに誰かを見つけたようで立ち止まった。

「諏訪さんだ!」

アリスはそのまま人混みの中に見つけた諏訪さんの方へ駆けて行った。

「諏訪さん!」

「お?アリスじゃねーか。何だよ、偶然だなー。」

駆け寄って、笑顔見せて。
それはアリスが俺にしてくれる態度と全く同じだった。
俺は腹の中にもやっとしたものが巻き起こる感覚がした。

「諏訪さん、お買い物ですか?っていうかまさか1人!」

「うっせ!お前こそ…って荒船が一緒か。」

「…お疲れ様です、諏訪さん。」

気がついた俺も側に行かないと失礼かと思って渋々と近づいた。

「何だよ、お前らはデートかよ!いいなぁ、おい!」

「や、やめて、諏訪さん!頭ボサボサになる!!」

そう言ってアリスの頭をわしわしと撫で回る諏訪さん。

諏訪さんはアリスが入隊した時に世話になった先輩で、隊は違うけど何かと目に掛けてもらって面倒を見てもらったらしい。
お兄ちゃんみたいなものかな、と昔アリスが言っていた。

でも俺にはそんな風には見えない。

あれは俺にはない距離感だ。
俺は自惚れていたのかもしれない。
他の誰かと喋っていても俺の元へ駆け寄って来てくれる。
でも諏訪さんと喋ってる時だけは違ったじゃないか。
そんなのアリスの中での優先順位なんて一目瞭然だ。

「アリス、行こうぜ。」

「え、あ、荒船くん!待って!じゃあ諏訪さんまた!」

「おー、じゃあなー。」

俺は諏訪さんに何も言わずに踵を返した。
一応頭だけは下げたけど。

「ねえ、待って、荒船くん!どしたの、急に。」

諏訪さんとだいぶ離れるまで俺はアリスを省みないで歩みを進めた。
さすがに様子がおかしいと気づき、アリスが心配そうに後ろから声をかけた。
俺はその声に反応して立ち止まる。

ああ、ダメだ。
今はダメな気がする。

「…アリスって諏訪さんのことが好きなのか?」

「え?!まさか!そんなわけないじゃん。何で…。」

「じゃあ、何であんな顔で笑うんだよ。」

馬鹿か、俺は。何言ってるんだ。

「え…?」

「…っ、あんな風に笑うアリス、見たくなかった!」

俺はつい声を荒げてしまった。
後ろでアリスが戸惑うのがわかる。
俺ははっと自分のしたことに気がついたが、振り向くこともできずそのまま歩みを進めるしかなかった。

「悪い、俺帰るわ。」

「あ、待って荒船くん!」

振り返ることなんて、できるわけがない。
最後俺を呼び止めるアリスの声が震えていたのがわかっていたとしても。

休日をともに過ごすすごく仲の良い友達から、ぐっと遠ざかる距離。
出会ってから距離が遠ざかったのは初めてのことだった。










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2015.5.26
まさかのシリアス展開。
このあと一体どんな展開になるのかわからんぬ。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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