ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


ああ、素晴らしき青春の日々はあっという間に過ぎ去り





縮まらない、その距離





「というわけで、今高校三年生の冬だ。」

「待ってください、何も進展してなさすぎじゃないですか、それ。」

「言ってやれ、半崎。」

今は高校三年生の冬。
アリスとの高校生活が始まって3年が経とうとしていた。
時の流れは早いだのなんだのとはよく言うが、全くその通りだと思う。
俺達はあっという間に高校三年生になっていた。
しかも冬。大学受験で忙しくなる頃だ。

この頃にはもう俺がアリスのことが好きだということを穂刈と半崎は知っていて、何かと相談に乗ってもらったりとかしていたわけだが、あまりにも何もなさすぎじゃないかということに至り、これまでの経緯を話した。

で、冒頭の半崎の手厳しい一言である。

「楽しかったからつい、な。」

「そんなこと言ってもダメです。
いい加減じれったいです。」

本当に半崎厳しい。

確かに雰囲気はいい。
だがそれが心地よすぎて、そしてこの関係になって長い時間が経ってしまったため、今さら恋人という上位の関係性に進むことにビビっているんだと思う。
これで例えば告白してだぞ。

『荒船くんとはいい友達でいたいんだよね。』

なんてこと言われてみろ。
それこそもう立ち直れないだろ!

確かにアリスが他の男と仲良くしているのは辛い。
独り占めしたい、離したくない、そんな願望が当然ながら俺にもある。
でも今の関係を壊してでもそれが欲しいのか?と聞かれると俺は正直返事に困る。

今でもアリスは他の人と話していても俺を見かければ駆け寄って来てくれる。
近づいてきたと思ったら、特に用事はないんだけどね!と笑ってくれる。
あー、もう可愛すぎるだろ。
今のままで良くないか?ホントに。

「どうするんですか、アリス先輩って結構人気あるんですよ?」

だが俺のそんな思いは半崎の一言で崩れ去る。

「何…だと…?」

ショックを受ける俺に更に半崎は畳み掛ける。

「というか、ファンクラブとかあるの知ってます?
取られちゃっても知らないスからね!」

「言ってやれ、半崎。」

ファンクラブ、だと?
そんなハリウッドスターでもあるまいし、そんなことになっていただなんて。
半崎に続き、穂刈も容赦がない。

「それは困る!」

「じゃあどうしないといけないんですか?」

「わかった、俺、アリスに告白する!」

俺は机をバンと叩いて立ち上がり拳を作る。
それを見てよく決心したと穂刈が拍手してくれた。

だが半崎は依然として厳しいままだった。

「じゃあ今から行きましょう、こういうのは早い方がいいです。」

「ぅえ?!今から?!」

さすがにその申し出には心の準備ができていなかった。
さっきの決心で今からなんて本当に何の準備もできていない。

「熱いうちに打て、鉄は。」

「穂刈先輩の言う通りです。」

いや、そうかもしれないが。
俺は2人を見た。
早く早くと目が言っている。

確かに2人にはいろいろ相談乗ってもらったし、2人からするとそれはもうじれったかったのかもしれない。
ここは2人への恩返しも込めて、俺はアリスに告白をせねばいけないんじゃないだろうか。

「よ、よし、今から行くぞ!アリスを探しに行く!」

俺は立ち上がり颯爽と歩き出した。
焦りすぎて扉が開く前に突っ込んでぶつかってしまい、コブを作ってしまったのは内緒の話だ。





「あれ、荒船くん、奇遇だね。…そのおでこどしたの?」

「何でもない。」

ラウンジに行くと一人でアリスがベンチに座りジュースを飲んでいた。
大体アリスはこの時間ここにいることが多い。
俺はアリスがここにいることを知っててここへやってきたのだ。

そう、アリスに告白するために。

部屋を出る時に作ってしまったおでこのたんこぶが少しダサい。
隠すように帽子を深くかぶってみたがそれもすぐばれ、深くかぶった分帽子とすれて自分が痛かっただけだった。

「アリス、話があるんだ。」

俺は深呼吸してアリスに向かう。
アリスは俺が何を言うのかと首を傾げて俺を見上げた。

待て、無理だ。可愛すぎるだろ。

「あ、あたし荒船くんの用事わかるよ!」

「?!」

急に思い出したように言うアリスに、俺は動揺を隠しきれなかった。
俺がアリスのところに来た用事がわかるだと?!
え、告白しにきたのがばれたってことか?
というか俺はそんなにバレバレなのか?!

「こーれ!」

アリスはカバンからチラシを1枚取り出して俺の目の前に突き出した。

「今週末から公開の"メイズ・ランナー"!
これ見に行こうって誘いに来てくれたんでしょ?」

そう言ってチラシの後ろから顔を覗かせるアリス。
そのチラシは公開が楽しみだと昨日の昼に話した映画だった。

俺は実はアリスを映画に誘ったことはない。
毎回公開の話題作で話は盛り上がるが俺から一緒に行こうと言えず、毎回それぞれ2人が別々に見に行き、後日感想で盛り上がると言うパターンだった。

「ね、明日非番なんでしょ?」

「あ、お、おう。」

これはまさかデートの誘い!?
しかもアリスから誘ってもらえるなんて俺は幸せか!!

「ついでに買い物付き合ってよ。
三門ショッピングモールに新しくてきたお店に行きたいんだよね!」

「まあ、予定ないし。いいぞ。」

何で俺こんな上からなんだよ!

「じゃあ、明日10時に駅で待ち合わせね!」

「了解。」

ああ、嬉しい!
遂に休日に2人で会うまでの仲になれたってことが!
同じクラスの隣の席の仲の良い友達から、休日をともに過ごすすごく仲の良い友達へとぐぐっと距離を縮めた、そんな日だ。





…あれ?俺何しにここに来たんだっけ?





「…。」

「なあ、半崎。」

「言わないでください、穂刈先輩。」

「幸せそうだな、荒船。
忘れてるけど、告白するの。」

「だから言わないでくださいってば。」










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2015.5.23
この荒船さんヘタレっぷりハンパねぇ…。
荒船隊はなんだかんだ半崎がしっかりしてればいいと思う。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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