ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


あー、もー!どこ行ったのよ、あのバカ犬ー!





散歩道にて





朝、犬の散歩をしていた。
名前はシェリー、ゴールデンレトリバー。
子犬のころからいつも一緒のはずなのに、何故かあたしの言うことを聞かない。
今日はとうとう散歩中ちょっと油断した隙にどこかへ走り去ってしまった。
あのコあたしをバカにしてる感じがする。ものすごく。

(どこ行ったのよー!)

多分いつもの散歩道周辺にいるだろうと思い走りだす。
でも走っても走っても見つからないシェリー。
もうすぐ散歩コースも終わりだ。

逃げ出したことは腹立ったけど、正直心配の方が上だったりする。
事故とかにあったりしてないだろうか。
そうこうしている内にいつもの散歩コースが終わってしまい、
見つからなかったという事実が不安を掻き立てる。

(そういえば…。)

シェリーはいつもとある曲がり角になると私が進む方向と逆に進みたがっていた。
家に戻るのに遠回りになるのでそっちに行ってあげたことはないけど、もしかしてと思いあたしは走り出す。

(あ、いた!)

案の定、シェリーは河原にいた。
シェリーは小さい頃から水が好きで、どばーっと入って川に行ったりはしないんだけど水辺で遊ぶのが好きな子だった。

(誰か一緒にいる?)

シェリーは河原で走り回っていたが、ふっと体を反転させて誰かに向かって走って行った。
その人も犬の散歩中だったらしい。
小型犬がそばにいた。
シェリーが何かしては大変だと慌てて河原に降りる。

「あ、あの、すみません!」

あたしの声に反応して、シェリーはご満悦そうな顔であたしを振り返る。
その人にわしわしと撫でられてずいぶんと嬉しそうだ。
あっ、みたいな顔してこの子絶対わざとでしょ!

「すみません、その子私の犬で、首輪が外れて、探してて。な、何かご迷惑を…。」

かけませんでしたか?と続けるつもりがそうはいかなかった。
ずっと探し回って走っていたから私は肩で息をするぐらいにはなっており、
言葉も切れ切れにそこにいる人に謝る。

「ああ、いいよ、いいよ!そっかぁ、君の犬か。とてもかわいいな!」

怒られるかもと一瞬覚悟していたが、そんなことはなく元気よくハキハキとした返事がした。
あれ?この声どっかで聞いたことが?

「?!嵐山隊の嵐山さん?!」

私はその人の顔を見て思わずぎょっとした。
聞いたことがあると思えば三門では知らない人の方が少ない、ボーダーの嵐山 准さんだった。

「ん?俺のこと知ってるのか?」

「し、知ってます!」

知ってるも何も本当に有名な人だ。
ボーダーの広報担当だかで、テレビにもしょっちゅう出ている。
ヤバイ、テレビで見るよりずっと爽やかでかっこいい!

「この子なんて言う名前?」

「あ、え、シェリーです。」

有名人を目の前にして私はうまく声が出なかった。

「そっかぁ、シェリーかぁ!シェリーって感じするなぁ!」

そう言って嵐山さんはシェリーのもふもふした毛をこねくり回すように撫で回した。
すると嵐山さんが連れていた小さな犬が私の足にすり寄って来た。

「お!コタローは人見知りなのに!」

「コタローって言うんですね。」

名は体を表すとはいうが、その通りである。
コロッとしていて、キリッとした感じの日本っぽい顔立ち。
うん、コタローという名前に納得。

「俺は嵐山 准。君は?」

「あ、桐島 アリスです!」

「桐島さんか。これも何かの縁だ、よろしく!」

「あ、はい、宜しくお願いします!」

私は勢いよく頭を下げた。
うひゃー、有名人と知り合いになっちゃったよ、どうしよう。

「ワンワン!」

「あ、シェリー!もう帰らなきゃ!学校に遅刻するじゃん!」

「高校生?学校あるのに朝犬の散歩だなんて偉いな!」

「もう日課なので。」

そうシェリーとはもう3、4年ぐらい朝の三門を散歩している。
だというのに嵐山さんと会うのは今日が初めてだ。

「俺は今日たまたま早起きしたからいつもより早く散歩に来たんだ。」

「そうなんですね!」

帰らなきゃ学校に遅刻するのはわかっている。
のはわかっているけど嵐山さんとさよならするのがもったいない。
有名人だから色々話をしてみたい、というのももちろんあるんだけど、
何よりもこの屈託のなさに惹かれる。かっこいいし。

「遅刻するよ?」

「ああ、そうだ!早く!シェリー!!」

嫌がるシェリーをぐいぐい引っ張る。
今日はやけに強情だ。

「じゃあな、シェリー。」

嵐山さんがそう言って頭を撫でるとシェリーは素直に踵を返した。
何よ!あたしの言うことは聞かないのに!
ぐぬぬと思いながらリードを引いて家へと急ぐ。

もったいない。連絡先とか聞けばよかった。
そう思ってると後ろから呼び止められる。

「桐島さん!」

呼ばれると思ってなかったので歩みを止めて振り返る。

「俺、明日も同じ時間にここにいるから!」

「!」

それはつまりまた会えるよと言うことで。

「私もまた同じ時間に来ます!」

手を振る嵐山さんに同じように手を振る。
思いがけずしてしまったあしたの約束。
私は嬉しくてスキップして家まで帰った。









Next
*******************************
2015.2.24
爽やかイケメン。馬鹿っぽそうなところも含めて好きな嵐山さん。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


back WT | back main | back top










×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -