ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


週に何日か会えるだけ。でもそれがとんでもなく楽しみで嬉しかった





会えないのはやっぱり辛くて





「すごいな、荒船。満点だ。」

入隊の時に出会った穂刈 篤。
喋り方が何だか変なやつだが、面白いやつだった。
話していく内に俺達は意気投合して、B級になったら必ず一緒にチームを組もうと約束した。

と、そこへ突然アリスがやってきた。
何とアリスと穂刈は親戚らしく、アリスがボーダーで活動しているのに興味を持って入隊したのだとか。

その流れで俺も入隊理由を聞かれたが、答えにくいったらない。
無難に街を守りたかったんだと答えたら、穂刈が目を輝かせてすごいな、荒船。と褒めてくれた。
俺はその真っ直ぐな視線が見れずすぐに逸らした。
すまん、穂刈。俺はそんなにイイやつじゃない。

それを見てアリスは笑う。

「よく言うねー、荒船くん。」

俺が映画好きなことや、警戒区域へ侵入したこと、それにその理由など。
いろいろと知っているアリスからすると、俺の答えは実に滑稽だっただろう。

でもそうじゃない、本当はそうじゃないんだと叫びたい。
銃持ったり、剣持ったり、そんな映画みたいなことできるっていうのは確かに動機の大部分を占めている。
でももっともっと大部分を占めているのはアリス自身にあるんだ。
あの日助けてくれたアリス。
そのかっこよさに強烈に憧れ、その笑顔をどうしようもなく好きになってしまった。

「篤には内緒にしておくね!」

そう言えたらいいが、まだまだそんな雰囲気ではない。
折角同じ組織に所属して、前よりも会う機会が増えたんだ。
焦ったってそんなに距離が急に縮まるわけでもないし。
穂刈っていう共通の知り合いもできた。
じっくり詰めていけばいい。

「じゃあ荒船くん、また明日ね!」

でも欲を言えば毎日会いたい。
そんな風に思った。





「荒船くん、刀似合うね。」

「ホントか?!飛天御剣流できそうか?!」

「うん、できそうできそう!
というかそこはキルビルとかじゃないんだね。びっくりしたよ。」

俺はトリガーの選択で孤月を選んだ。
本当はアリスみたいに銃にしようと思ったが、日本刀の誘惑には勝てなかった。
更にはアリスに似合うと言われ、気分は上々だ。

「篤はスナイパーにしたんだね。」

「面白そうだった、一番。」

穂刈はスナイパーを選んだ。
狙撃銃、これも捨てがたかったが仕方ない。
何だかんだ3人ともバラバラのポジションに落ち着いた。
アリスが今チームに所属してなければ絶対誘ったんだが、今の隊を結構気に入ってるらしく入り込む隙はなさそうだ。

「早くB級にあがりなよ、2人とも。
そしたらもっと楽しいよ、絶対に!」

アリスの所属する隊はB級上位。
次のランク戦でトップを取ってA級に挑戦するんだと意気込んでいる。
俺と穂刈はまだ2,500点辺り。
アリスのいるB級はまだ少しだけ先になりそうだ。

「追い抜くさ、すぐに。2人で、荒船と。」

そう言って穂刈が俺を見た。
俺は当然だという風に首を縦に振った。

「楽しみにしてるよ、2人とも!」

そうやって笑うアリスに俺はまた惹かれるのだった。





年が明けてからというもの、冬の間俺達はなかなか会うこともできず、やがて春になった。
中学3年生の冬、俺達は高校受験生だ。
訓練には出たが、その後遅くまで残って3人でいることは少なくなり、俺は久しくアリスに会っていなかった。
何を惚けてたのか、連絡先を聞くのも忘れていて、そのまま会う時間が減ってしまったのだ。
穂刈は訓練で少しは会っていたが、アリスとはタイミングも合わず、気がつけば2ヶ月が経過していた。

馬鹿か、俺は。

アリスは今どうしてるだろうか。
気になって穂刈に尋ねれば、元気だぞ、とても。という返事しか返ってこない。
違うんだ、俺が知りたいのはもう少し詳細な情報なんだ。
そう言ってもう一度問いかけると、穂刈は少し考えて、とっても元気だぞ、本当に。と返してきた。
俺はそれ以上の追求をやめた。

(アリス、今何してる?)

と気軽に連絡できる間柄でも多分受験生であることを気遣って俺はきっと連絡をしなかっただろう。
どこの学校を受験するんだろう。
それぐらい聞けばよかった。

そんな風に思いながら、登校する高校生活第一日目。
桜の花びらが雨のように降り注ぐ並木道を1人歩く。
穂刈はボーダー提携の普通校に行った。
合格できてよかったとすごく喜んでいたところを見ると勉強が相当苦手らしいことがわかった。

(アリス、今どうしてる?)

ほんの少し思考がずれてもすぐにアリスのことを考えてしまう。
それくらいにはもうアリスに心を占拠されていた。

学校に到着すると入り口部分に巨大な立て看板と人集り。
お待ちかねのクラスの発表にいろいろな声が飛び交う。
俺は後ろの方から自分の名前を探した。
苗字が荒船だから各クラスの頭の方だけ見ればすぐに名前は見つかる。
俺のクラスはCだ。

(…あれ?)

ここはボーダー提携の進学校だから同じ中学のやつは確かあまりいなかった。
それでも駄目元で知り合いはいないかとCクラスの面々の名前を確認して行くと見知った名前が。
いや、まさか…ホントに?

「あれ?荒船くん?」

俺が驚いて突っ立ってると後ろから聞きたかった声が。

「アリス?」

そう、Cクラスの名簿の中に桐島 アリスという名前。
同姓同名かと一瞬思ったが、本人に声をかけられそれはないことがわかる。

「荒船くんも進学校だったんだね!良かったー!
知り合いいないんじゃないかと思ってドキドキしてたんだよね!」

神様ってのは粋なことをしてくれる。

「しかも同じクラス!
改めまして、よろしく映画オタクくん♪」

これが俺と桐島 アリスとの高校生活の始まり。

同じ組織に所属する人から、同じ高校の同じクラスの友達へとぐっと距離を縮めた、そんな日だ。










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2015.5.13
はい、第2話で穂刈さんも登場です。
穂刈はなんとなく頭が悪いんじゃないかと思ってます。
あの喋り方が影響で。


※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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