ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


いつの間にか雨は止んでいた。






崩れ去る日常





「あ、あれ?!鋼、どうしたの?今日は休んでよかったんだよ?」

本部に行くと、案の定来馬先輩に驚かれた。
それはそうだ、本当なら今日俺は休みだった。

「しかもそんなに泥だらけで。」

「特に問題ありません。」

丘の墓から本部までは順調に行けば歩きでも30分程度のはずだった。
だが俺達が本部に到着したのは出発してから1時間経っており、30分なんて30分前に過ぎてしまっていた。
やたらと獣道を行く誰かさんのせいで汚れるし疲れるしで最悪だ。

「それにあの子は?」

来馬先輩がそろりと視線を向けるその先には。

「すっごー!これがボーダー本部!
かっこいいー!でかいー!広いー!!」

エントランスではしゃぎ回っている桐島がいた。
その騒ぎようったらなく、周りの隊員達をざわつかせるには十分だった。

「憧れの本部勤め!テンションあが…ぐぇ。」

俺は見兼ねて桐島の首根っこを掴み、来馬先輩のところに引きずり連れて来た。

「ちょ、ちょっと、鋼!!痛いんですけど!!

「お前がうるさいのが悪い。おとなしくしとけ。」

そうして桐島が静かになったところで、俺は桐島の配属命令書を来馬先輩に渡した。

「…あ、そっか!今日だったのか!!ご、ごめん。合同訓練の予定が変わったのに気を取られて連絡するの忘れてた。」

どうやら桐島の命令書や来訪に心当たりがあったのか、来馬先輩は桐島に頭を下げた。

「鈴鳴第一の来馬 辰也です。桐島 アリスさんだよね。ごめんね、予定が変更になったのを連絡するの忘れてて。」

「あ、いいですいいです!平気です!」

桐島は気にするな、気にするなと言うように手をブンブン振った。
何だ、俺の時より大分おとなしいな。

「あたしこそすみません!ホントはもっと早くつく予定だったんですけど、鋼が迷子になっちゃって遅くなっちゃいました!」

しかもこんなことを言ってのける。
どの口がそんなこと言えるんだ。

「俺は迷子になってない。
お前がいろいろ見て回りたいとか適当な道に入るから遠回りになっただけだ。」

「鋼、人のせいにするのはよくないと思う。」

「どっちがだ!」

あまりに悪びれない態度にイラっとしてつい大声を出してしまった。
目の前の来馬先輩の驚いた表情ったらない。

「あ、すみませ…。」

謝ろうとした瞬間、何故か来馬先輩はにっこり笑って俺の頭を撫でた。

「先輩?」

突然の行動に不思議そうに俺が先輩を見ると、来馬先輩がこう言った。

「いや、鋼のそんな楽しそうな顔、久しぶりに見たから嬉しくってね。」

嬉しそうな顔?
俺はつい自分の頬に手をやり確認した。
笑ってた?ってことはないと思うけど、俺今楽しそうにしてたのか?

「えー、来馬先輩!この仏頂面の何処が楽しそうなんですか!」

「そのうちわかるよ。」

来馬先輩はそう言ってまた笑った。
それが何だか照れ臭くて、確かに久しぶりな感じがした。





「改めまして、今日から鈴鳴支部でお世話になる桐島 アリスです!」

合同訓練が終わった後、ラウンジの一角に陣取って桐島のプチ歓迎会が行われた。
今と太一ともすぐに馴染んで、今後の人間関係は問題なさそうだ。

俺を除いて。

正確には俺から桐島への感情が、だが。
正直苦手かもしれない。
図々しいし、うるさいし、図々しいし。

あれ、俺今2回同じこと言った?

ともかく、俺は桐島が苦手かもしれない。
そう思ったんだ。

「今ちゃんも同い年なんだね!何か安心したー。」

「鋼も同い年だから3人仲良くね。」

「はーい!」

同い年と言うだけで一括りにされてしまう。
仕方がないが一緒にしてほしくない。

「えーっと、アリスちゃんの経歴は。」

来馬先輩が書類をめくりながら桐島の経歴を話し出す。

桐島は三門出身ではなく、他県から所謂スカウトでボーダーに入ったエリート組(エリート?)
他県には三門みたいに支部とかがあるわけでもないらしいので、訓練が主だった活動だったらしい。
実力がB級に達したので三門に転居、ボーダー本部に勤める予定だったが、
たまたま鈴鳴支部方面に居を構えたため家から近いを理由に鈴鳴への転属を希望(何て理由だ…。)
ちなみにB級に上がりたてなのでチームは組んでいない。

「しばらくは鈴鳴第一の皆さんについて勉強するように言われてます。」

使用トリガーは孤月(俺と一緒かよ)
レイガストと併用することも多々(これも俺と一緒かよ)

「じゃあ鋼さんと同じですね!
鋼さんにいろいろ教わるといいんじゃないですか?」

おい、こら、太一。
余計なことを言うんじゃない!

「へえー、鋼も同じトリガー使ってるんだ。」

「そうですよ、しかも鋼さんはアタッカー個人ランク4位なんです!」

こらこらこらこら、太一。
余計なことを言うんじゃ…。

「何だよ、桐島。その顔。」

俺がちらりと桐島の顔を見やると、桐島は形容し難い表情をしていた。
だがその表情の指し示すところは何となくわかった。

「いやいや、それは嘘でしょ、太一クン。」

そう、つまるところこう言うことだ。

「アタッカー個人ランク4位とか、すごいじゃん!
鋼がそんなすごい人なわけない。」

そんなこと信じられませんの一点張りの桐島に何故か太一がムキになる。

「そんなことないですよ!
鋼さんはすっごいサイドエフェクトまで持ってるんですから!」

太一のその言葉に、桐島の顔は更に歪む。

「イヤイヤ、太一クン。ソンナ ワケ ナイジャナイ?」

さも信じられませんなんて態度が全面に出てていっそ清々しい。

「だって鋼全然強そうじゃないじゃん!!」

最後にはこんなこと言う始末。
俺はもう何か言うのに疲れてその場を立ち上がる。

「あ、待って!鋼ちょっと証拠見せて!模擬戦しようよ!」

「断る。」

「あ、待っててば〜!!」

俺の静かな日常が壊れた瞬間だった。





「来馬先輩、嬉しそうですね。」

「そう?今ちゃんも嬉しそうだよ。」

「ええ、私は嬉しいですから。」

「僕もだよ。」

俺の静かな日常が壊れていくのとは裏腹に今と来馬先輩は嬉しそうに笑っていた。










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2015.6.5
村上くん、ヒロインのこと名前で呼んであげてよ。
呼んでるの来馬先輩じゃん!

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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