ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


これはまだ彼女にも言っていない俺だけの秘密。





さよなら、片思いの日々





初めて彼女を、アリスを見たのは半年前。
秋の三門市体育大会のバレー大会の日だった。
この日も俺は妹の佐補に応援に来るなと言われながらも、こっそりと会場に足を運んだ。

佐補は第三中学バレー部で、1年生。
だけどその日の試合はスタメンに選ばれたと喜んでいたから、兄という存在の俺としてはどうしても見に行きたかった。

トーナメントの三回戦。
これに勝てば準決勝だというところ。
相手は第二中学だった。
かなりの接戦で、この時の大会は正直決勝戦よりもこっちの方が盛り上がってた気がする。

俺のものすごい応援の甲斐もあって(?)、第三中学は準決勝へと駒を進めて優勝した。
全部終わって、体育館のロビーに行くと何やら佐補の声。

「佐補ちゃん!次はあたし絶対に負けないんだからね!!」

「あたしだって、絶対に次も負けないし!!」

佐補にしては珍しく、妙に熱くなってる。
俺は階段の影からその様子を見ていた。
相手は第二中学のジャージを来た女の子。
試合でやたら佐補と当たっていた子だ。

「佐ー補!優勝おめでとう!」

「げっ!兄ちゃん!」

いつも通りのちょっと冷たい反応にも慣れて来た。
それに嫌そうな声を出すが、何だかんだ嬉しそうな顔を一瞬見せてくれるのがいいところだ。

「さっきの子は?友達?」

「あ、うん。あたしのライバル!かな?桐島っていうの。」

そう言って2人でさっきの子に視線を移す。
その時俺は初めてアリスを見た。

泣いている女の子を包み込むように優しく抱きしめる仕草。
背は自分の方が小さいから背伸びをして、それでも一生懸命抱きしめる。
慰める時の笑った顔がとても優しくて印象的だった。

「なあ、佐補。あの子と一緒にいるのは?」

「ん?誰だろ?あ、姉ちゃんがいるって言ってたからそれじゃないかな?」

お姉さん、か。桐島さんっていうのか。
下の名前は何て言うんだろう。
まだ高校生かな、どこの高校だろ?

俺はこの時、彼女に恋をした。

些細なことが気になって、どうにか何かわからないかと思い、とりあえず佐補の部活の練習試合で第二中学も参加のものがあれば見に行った。
すると彼女も現れることが多く、次第に情報が集まっていった。

名前はアリス。桐島 アリス。
次の春で17歳、高校2年生。
父、母、妹、犬の家族構成。
たったこれだけの情報だが集めるのには結構苦労した。
佐補に妹に聞いてもらうのが一番早いが、そんなの頼んだらからかわれるだろうし、向こうに伝わってしまうかもしれない。
なのでこれだけの情報だが、集まった頃には半年が過ぎようとしていた。

俺は犬を飼っているということに着目した。
彼女は朝の散歩をするのが日課らしい。
ということは、だ。
俺は夕方犬の散歩担当だと会えない。
じゃあどうすればいいかって、そんなのは簡単だ。
朝の散歩も俺がやればいい。

俺は彼女に会えないかと、毎朝時間を変えたり、コースを変えたりして散歩をした。
コタローは散歩コースが変わっても怒ったりしない。
むしろなんとなく協力的で行ったことない道に勝手に進んでくれる。
なんて賢いんだ、コタロー。

そうしてある日、運命の日がやって来る。



『すみません、その子私の犬で、首輪が外れて、探してて。な、何かご迷惑を…。』

『ああ、いいよ、いいよ!そっかぁ、君の犬か。とてもかわいいな!』



遂に出会うことができた。
俺は正直あの日の朝舞い上がってしまっていた。
多分変なことは言ってないと思うが、世間話をしすぎてうっかり連絡先を聞くのを忘れてしまい、最後に苦し紛れに言った言葉は。

『俺、明日も同じ時間にここにいるから!』

言い終わってから、"いるから!"じゃないだろ!と1人心の中で地団駄を踏んでみる。虚しい。

でも。

『私もまた同じ時間に来ます!』

そう言って彼女は笑って手を振りかえしてくれた。
ああ、顔が赤くなってるのばれなかっただろうか。

そうして俺はまた彼女に恋をした。

それからはいろいろあった。

連絡先を交換して、2人でデートもして、バレーの会場で偶然(を装って)会ったりして、勉強会もして、コタローのことも相談して。
いい雰囲気だったと思う。
未遂だけど、ほら。キスもしようとしたし…。

でも俺には告白する勇気がなかった。

というのも彼女が結構学校でモテるという噂を情報収集の段階で聞いていたからだ。
彼氏を作らないのは何か理由があるんじゃないかとか思ったりして、そうすると最後の一歩が踏み出せない。

そうこうしている内に第二の運命の日がやって来た。

『嵐山さん、お姉ちゃんが!お姉ちゃんを助けて、お願い!!』

ゲートが市街地に発生して、現場に駆けつけた時に妹ちゃんが目を腫らして俺にすがり寄って来た時、俺は目の前が真っ暗になった。
臆病になって、現状に甘んじて、そんな自分が嫌になって死ぬほど後悔した。

これが一度目の後悔。

『こ、怖かったよぉっ…。』

泣き出したアリスを見た時に俺はすぐに二度目の後悔をした。
こんな風に泣かせたくなかった。
泣き顔は見たくなかった。

本当に自分を許せなかった。

『生きててよかった、ホントに。』

抱きしめて、体温を感じた時に本当に安心した。
そしてきちんと言わなきゃと決心した。

『ずっと好きだった。アリス。俺のものになってくれ。』

すごく緊張した。
返事がノーだったらどうしよう、俺死ぬかも。とかなんとかとネガティブな思考ばかりがぐるぐると回る。
だからアリスが泣き出した時はどうしようかと思ったが、それが嬉し涙と知って、俺が調子に乗ってしまっとのは言うまでもない。





アリスはこう言ってくれた。

『好きです、嵐山さん。初めて会った時からずっと。』

初めて会った時からずっと。
でもアリス、それは俺も同じだよ。
むしろ俺の方がずっと前から好きでしたっていう状態だ。
俺はこの日やっと君に思いを告げることができたんだ。

そうやって君に伝えたら、君はどんな顔をする?

驚いて、顔を赤くして、俯いて。
恥ずかしそうに可愛く、ズルイ、と言って、最後には嬉しそうに笑ってくれるだろうか。

アリス、好きだよ。ずっと前から。

これからもずっとずっと大事にするよ。










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2015.5.10
これにて散歩道にて終了です。
diaryにてあとがき
的なもの書いてます。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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