ワールドトリガー 夢小説 | ナノ


「お姉ちゃん、今度の大会見に来てくれるんでしょ?」

「もちろん。」





続々々々 散歩道にて





天気の良い日曜日。
あたしは妹との約束通り、朝少し早くに家を出て、三門市民体育館へと向かった。
今日は寂しいけどお散歩はお休みでお母さんに任せてある。
嵐山さんとは会えないけど、それは昨日のうちに伝えた。

今日はかわいい妹の部活動の大会。
絶対に応援に来てね!なんて言われたら姉としては行くしかない。
年がそんなに離れているというわけではないけど、あたしはこの妹という存在をとても可愛がっていた。
この年頃の、と言えばわりと喧嘩をする年代らしいが、そういう意味でいくとあたしの家は変わっているのかもしれない。

あたしの妹は三門第二中学でバレーをやってる今日は市内の大きな大会。
もちろん優勝狙ってるとのことで気合が入っており、ライバルの第三中には絶対に勝つ、とのこと。
普段穏やかな妹だが、ことバレーに関しては熱血漫画の主人公のような意気込みを見せる。

「えーっと。トーナメント表…。」

妹の試合の時間と場所を確認しようと、到着後すぐに入口に張り出されたトーナメント表を見に行く。
開始前ということもあって人混みがすごい。
あたしが背が低いながらも、背伸びをして確認をしていると。

「わっ。」

「あ、すみません。」

突然前にいた人が後ずさり激突。
爪先立ちをしていたあたしはバランスを崩してフラッとよろける。

「っと。大丈夫ですか?」

よろけてしまったが、後ろにいる人に支えられて助けられたので、こけることはなかったが少し恥ずかしい。
それにしても何だか聞いたことのある声だ。

「あ、すみません。ありがとう…。」

そうして後ろを振り返るとそこには見知った顔。

「…ございま…す。」

「あれ?アリスちゃん?」

そうそこに立っていたのは嵐山さんだった。

「あ、嵐山さん!?何で?!」

というか、近い!
そう思い、バッと思わず距離をとってしまった。
嵐山さんも驚いた様子であたしを見た。

「奇遇だね。いや、俺は妹がバレーやっててさ。試合を応援しにきたんだ。」

まあ、来るなって言われたけど。
そう言ってキマリが悪そうに頬を掻く嵐山さん。
なんと嵐山さんの妹もバレーをしていたなんて何たる偶然。

「アリスちゃんは?バレー好きなの?」

「あ、えっと。あたしの妹もバレーしてて応援に…。」

「そっか!そうなんだな。すっごい偶然!」

今日は嵐山さんのこの笑顔見れないと思ってただけに、いつにも増してドキドキする。
ああ、もう、かっこいい。

「妹さんは何中?」

「あ、第二中学です。」

「お、佐補のライバル校だな。うちの妹は第三中学なんだ。」

そんなことを言いながら改めて2人でトーナメント表を確認する。
結構な数の学校が出場しているらしいが、第二中学と第三中学は別ブロックで決勝であたるようになっていた。
これはなかなか運命的だ。

「佐補が…あ、佐補っていうのは妹なんだけど。絶対に第二中学には勝ちたいって言っててさ。」

「あ、うちの妹は絶対に第三中学には勝つって言ってました。」

嵐山さんとトーナメントを確認すると、あたし達の妹は隣同士のコートで試合をすることが多いようで、だったらということで一緒に試合を見ることになった。
お互いの妹同士がぶつかるのは決勝なので、第二中学も第三中学も応援し放題だ。
それにこんなシチュエーションならもういっそ決勝戦であたってほしい。

「いや、すごいな、第二中学女バレ。」

「いやいや、第三中学もすごいですよ。」

なんて言ってる間に試合はずいずい進み、決勝戦。
願った通りの展開となり、決勝は第二中学と第三中学だ。

「悪いけど、決勝は佐補がもらうよ、アリスちゃん。」

「いいえ、こればかりは譲れません!ここはあたしの妹が勝ちます!」

そうして試合開始のホイッスルが体育館に響いた。





「あー、佐補。惜しかったなー。」

「ふふん、どうですか。あたしの妹ってすごいんです。」

決勝が終わり、会場から出る人の波に乗ってあたしと嵐山さんは体育館のロビーに出た。
ロビーでは各校が集まって顧問の先生からの話を聞いていたり、早いところは解散をしていた。
日も沈みかけで辺りは夕暮れ。
保護者はこの最後のMTGが終わったら子供と一緒に家へ帰る。
大体それが流れだ。

「悔しいー!次はあたしが勝つんだから!」

「ざんねーん。次もあたしが勝つよー!」

第二中学と第三中学は終礼もそこそこに解散しており、友達同士話したり、帰って行ったりする人達で溢れていた。

そこに聞こえて来たのは上のような会話。
片方は間違えるはずもない、妹の声だ。

「あれ、佐補の声だ。」

階段をおりきってロビーに立つと、第三中と第二中のジャージに身を包んだ女の子達がギャーギャーと喚いていた。

「あ、お姉ちゃん!」

「げ、兄ちゃん!」

「げ、ってなんだ!げ、って!兄ちゃん悲しいぞ!」

その2人が同時にこちらを振り返り全く違う様子を示した。
片方はあたしの妹、もう片方はなんと嵐山さんの妹の佐補ちゃんだった。

「ねえ、お姉ちゃん!見てた?!最後のスパイク!」

「うん、もちろん!一番よく見える席で見てたよ!」

「わー、嬉しいー!」

そう言って妹はあたしに抱きつく。
バレーをやってるだけあって、姉のあたしより妹は遥かに背が高い。
正直たまにどっちが姉なのか自分でもわからなくなる。

「半年前のリベンジできたねー。」

「うん!」

半年前もこういったバレーの試合があった。
でもその時は惜しくも第二中学は準決勝で第三中学に敗れたのだ。

「佐補ー。惜しかったなー。」

「ふん、兄ちゃんの応援が足りなかったからだし。」

「え?!俺のせいなのか?!」

嵐山さんは嵐山さんで佐補ちゃんを慰めているがうまくいっていない様子だった。
妹と戯れる嵐山さん、何だか少しかわいい。

「にしてもお姉ちゃん、佐補ちゃんのお兄ちゃんと知り合いだったんだね。」

「え、あ、うん。」

妹と嵐山さんは目が合ったようで、ぺこりと小さくお辞儀した。
その様子を見てお互いをなんとなく見てしまったあたしと佐補ちゃんも同じように頭を下げた。

「どうも兄がお世話になってます。桐島お姉ちゃん。」

「と、とんでもない!こちらこそ佐補ちゃん、いつも妹がお世話になってます。」

お互いまるで子を持つ主婦のような会話をして、そのまま立ち話をしていると、体育館の閉館のアナウンスがなった。

「あ、もう帰らなきゃ。」

「ホントだな。佐補、帰るぞー。」

あたしと嵐山さんがそれぞれ妹達に向き直ると、妹達は妹達で顔を見合わせた。

そしてこんなことを言う。

「ねえ、お姉ちゃんお願いがあるんだけど。」

「何?」

「あたしちょーっとバレーの練習きていきたいんだよね!」

そう言って妹は佐補ちゃんを見た。
佐補ちゃんも大きく頷いて言う。

「こんな時ぐらいしか一緒に練習できないんです!」

妹と佐補ちゃんは同じ小学校だった。
なーんてことはなく、小学校も中学校もバラバラ。
別にバレーのクラブに通ってるわけでもないが、この仲良しようである。
ライバルでもあるが、こうやって試合の後一緒に練習したりするのが好きみたい。

「いいよ。隣の公園?」

「ありがとう!お姉ちゃん!」

「よし、佐補!俺も一緒に…「兄ちゃんは桐島姉ちゃんと散歩でもして待ってて!」

一緒に練習をしようと申し出たが敢えなく撃沈する嵐山さん。
普段は元気で凛としてるが、妹さんにはめっぽう弱い様子が面白い。





「暗くなるの遅くなったとは言え、1時間ぐらいだけだよ。」

「うん!ありがとう!」

そう言ってバレーボール片手に妹達は公園の広場へかけていった。
あたしは佐補ちゃんの言う通り、嵐山さんと散歩をすることに。
この公園はさすがに前の自然公園ほどではないが、わりと広い。
だらっと歩いてベンチでのんびりしてれば時間なんてあっという間だ。

「風もだいぶ暖かくなってきましたね。」

「ホントだなー。」

ふわりと春の風が鼻をくすぐる。
いい天気だ、本当に。
眠くなってしまいそうだ。

「ふわぁぁ。」

なんて思ってると、隣で嵐山さんが大きくあくびをした。
見たところかなり眠そうだ。

「あ、ごめんごめん。実は結構遅くまで大学のレポートやっててさ。」

「そうなんですね。少し寝ますか?」

軽い気持ちでそう言ったつもりだった。
それがまさか。

「…じゃあちょっと膝借りていい?」

「え?」

まさか、膝枕をすることになるなんて。

「あ、嵐山さん!?」

ごろりとベンチに寝転がり、あたしの膝に頭を預ける嵐山さん。
あたしは大パニックだ。

「あ、ぅ、えっと。」

「ちょっとだけ寝かせて。」

そう言って嵐山さんは笑った。
嵐山さんは背が高いからいつも見上げるばかりだったのに、この体制では当然嵐山さんから見上げられる形になる。

「何だか新鮮だね。アリスちゃんを下から見上げるとか。」

「そ、そうですね。何だか変な感じです。」

優しく笑う嵐山さんの髪を風がそよそよと揺らす。
ホントに変な感じだ。一言で言えば心臓に悪い。

「佐補達が来たら起こしてくれる?」

「あ、はい。」

そう言って嵐山さんはすっと目を閉じるとすぐに寝息を立て始めた。
よほど疲れていたのだろう。

(かっこいいなぁ、寝てても。)

しばらく観察をしていたが、あたしは思わず嵐山さんの髪の毛にそっと触れてみた。
柔らかい、シャンプー何使ってんの、これ!

あたしはもっと嵐山さんに触れていたくて、頭を撫でる。

「それ、気持ちいい。」

すると起こしてしまったようでパっと手を引く。
だがその手は逃げられず嵐山さんの大きな手に捕まってしまった。

「もうちょっとしてくれない?」

あたしの手を自分の頭に誘い、終いには優しい声でリクエストだ。
あたしは嵐山さんに言われるがままに頭をそっと撫でた。
撫でる度に気持ち良さそうな顔をするので、何だか犬を撫でてるみたいだ。
なんてのは内緒にしておこう。

「俺、これ好きだなぁ。」

「っ!!」

寝言のようにつぶやいて嵐山さんはまた眠りについた。
最後の言葉が何だか甘く、あたしの耳にいつまでも残った。










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2015.4.29
この後は当然妹2人に冷やかされたにちがいない。

※お返事不要の方はお申し出お願いします。


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